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没1  作者: 零眼のメルト
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世界中心機関とケーター団

僕は運転を自動運転に切り替えてリラックスしていた。しかし、ここはいつ襲われてもおかしくない場所だから天水兄妹と後ろを向いて話すことは出来ない。僕は立てかけてある携帯に気になっていた。Dさんのあのメールの件……。はっきりしたことは言えないが、何か嫌な予感はする。でも、若しかしたらそんな事は杞憂なのかもしれない。僕は悩んだ末に結局返信をせずに、まだ未読であるフリをしていた。でもやはりとても気になる。本人に直接聞くというのもまたリスクのあることだ。いや、今考えてみれば彼女は僕に直接聞いてきたのだから、こちらも聞いていいのではないか?僕の頭の中で考えがぐるぐると渦を巻き、収拾がつかなくなっている。


…………


今はセイレナのことを考えよう。今僕達がこうして世界中心機関に向かっているのもセイレナを迎えにいくため。Dさんのことは帰った後でいくらでも考えられる。彼女は僕達の仲間になると言っていたし、いつでも真意を聞くことができるはずだ。突然何かが僕の肩に乗った。僕は驚いたせいで変な声が出た。レイラが大声で笑い始め、ワタルはニヤニヤしていた。

「おまっ、ワタルやったな?」

「兄ちゃん何考え事してて固まってたからね。」

「ラクターン兄ちゃん、やっぱりセイレナの事好きなんでしょ?」

「年が結構離れとるだろうが。8歳も年の差だぞ。」

「兄ちゃんもまだまだ子供ですな〜。そんな年の差カップルなんてしょっちゅうでしょ。」

僕は顔が赤くなっていくのを感じた。サツがいなくて良かった。割とマジの方で。突然車が衝撃に襲われた。前方の方に何かがぶつかったようだ。何事かと見ると棘付き鉄球が当たっていた。車の前には大男と変な格好した輩がいた。

「おいおい、何キョトンとしてんだよ。まだ状況が掴めてないってか?」

「とりあえず、俺らに捕まったって事は持ってるもん全部置いてけって話だ。」

「おおお!?そこにちっちゃい嬢ちゃんいるじゃん。ここは俺らのコーヒー屋さんに連れてかないとな。」

「ミルク多めでお願いしますってか?」

人間のクズと呼ぶにふさわしい奴らが汚い笑い声をあげている。レイラの方を見ると顔を真っ赤にしてプルプル震えてる。マジギレだ。ワタルの方も目がマジになっている。

「ラクターン兄ちゃん?」

僕はため息を付いた。

「いいよ。」

そういった途端土砂降りが降り始めた。

「うわぁぁぁ!?急に降ってきやがったぁ!さっさと済ますぞぉ!」

ゴロツキ達が騒ぎ始めた時、次は一気に晴れた。ゴロツキ達はキョドキョドし始めた。すると地面から水柱が立ち始めた。次々と人が巻き込まれていき吹き飛ばされている。僕はハンドガンを取り出し、水柱で右往左往している奴らを撃っていった。

「野郎調子に乗りやがってこんちくしょうがぁぁぁぁぁ!!!!!!」

1人が鈍器を持って襲いかかってきた。車が殴られ、窓ガラスが割れた。レイラは悲鳴をあげ、そいつを睨んだ。びしょ濡れになったゴロツキの服はパキパキと音をたてて凍り始めた。

「うわ、なんだ!冷てぇ!おおお!?」

そのゴロツキは凍りついて動きが止まった。僕は持っていたハンドガンで肩あたりを撃ち抜いた。

「レイラ!周りの水柱消えちゃってるよ!」

ワタルが叫ぶとレイラがハットしたようにキョロキョロした。びしょ濡れになり、血が水で薄れたような色を滲ませたゴロツキ達が怒りの表情でこちらを見ていた。まずい、囲まれた。今にもゴロツキ達がこちらに向かって一斉射撃せんとしていた。銃撃の音がして、僕は目を瞑った。………まだ死んでいない。死ぬ前に確か時が遅く感じるとか言われてたけど正しく今の状況なのか?恐る恐る目を開けた。しかし、僕の目に飛び込んできた光景は、予想とは遥かに違う光景だった。ゴロツキ達が血を吹き出し、倒れ込んだり、全身が凍りつき、身動きが一切取れなくなっていたりした。その背後にたくさんの兵士と白髪の男性がいた。白髪の若い男性はこちらに駆け寄った。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫です。助かりました。」

その人はほっとしたように溜息をつき、良かったと呟いた。

「ありがとうございます。」

「いえいえ、これが私たち『世界中心機関軍』の役目です。当然のことをした迄です。」

僕達3人は殆ど鉄屑になった車から降りた。ワタルが前に出て、白髪の男性を見た。

「お兄さん、世界中心機関軍の方でしたよね?」

「はい、あ、すみません。申し遅れました。世界中心機関軍第二番隊隊長のビンセント=ラグです。」

「僕はラクターン=キライアです。」

「私は天水レイラでこっちがお兄ちゃんの天水ワタル。」

「宜しくお願いします。で、ビンセントさんに頼みたいことがあるんですが?」

「はい。」


───────────────────


僕達3人は軍の運送車に乗っていた。いや、凄く申し訳ない。ワタルには感謝しているのだが……。

「ビンセントさん、本当にありがとうございます。任務中に送り迎えをさせてしまって…。」

「いやいや、これも含めての我々の仕事ですから。」

ワタルとレイラが楽しそうに窓の外を見ながら話してる。その時、ワタルが少し暑いな、と呟いた。

「やっぱり暑いですよね?」

僕は少し首を振った。送り迎えしてもらうだけでなくエアコンまで付けてもらうなんて。

「大丈夫です。お安い御用ですよ。」

そう言うとビンセントさんの周りに氷の結晶がチラチラと待った。車の中が涼しくなった。

「私の黒血能力は『冷気』なんです。不便なことに抑えてないとすぐ冷気が漏れ出てしまって。なのでこれが脱力状態なので、心配なさらずとも大丈夫です。」

黒血能力はメリットも多いが、デメリットも存在する。彼の冷気もそうだが、僕の能力もそうなのだ。いや、仕事柄のせいでのデメリットなのかもしれない。能力を行使し過ぎて能力のオンオフのオフですら意識しないと切り替わらないのだ。うん、彼とは違って自業自得なんだ。

「そう言えば、ラクターンさん達は何処の方ですか?」

ビンセントさんの周りの結晶が多くなった気がした。

「僕はケーター団の者ですが。」

ビンセントさんの顔がより明るくなった。

「治安維持のためにやって下さってるあのケーター団ですか?」

「ええ、そうです。」

「いつもお世話になってます。あなた方には感謝してもしきれません。」

「いえいえ、そんな事はございませんよ。」

僕達はその後他愛も無い話をしていた。ラインハルトさんの事も話題に出た。ケーター団はとても有名になっているんだな、と感じた。

「あ、そろそろ見えてきましたね。お疲れ様でした。」

「こちらこそ、わざわざありがとうございます。」

セイレナ……君はここにいるのか?

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