希望の欠片
いつぶりだろうか。こんなにも居心地の悪い目覚めは。罪の無い子供を無理やり手にかけさせられた様な心地だ。時計は6時半を指していた。部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「ラクターン兄ちゃーん!起きてるー!?」
「レイラぁ、もし寝てたら兄ちゃん怒るよ。」
僕は目をこすった。いつまでもめそめそしていてもダメだよね。僕は部屋の扉を開けた。
「おはよう。二人とも。」
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集会をし終わったあと、ラインハルトさんのもとへと向かった。昨日の夜言っていた話とは何なのだろうか。セイレナの話をしたあとだったから何か関係あるだろうか…不安と興味の入り交じる感情で彼の部屋に行った。
「失礼します。ラクターンです。」
「ああ、来たか。では、早速本題と移る。俺の気が変わらないうちにな。」
僕は唾を飲んだ。いったい何の話だろうか。
「この事はお前にとって希望となるかもしれないし、絶望となるかもしれない。聞く覚悟はあるか?」
「はい、あります。」
「…では、伝えよう。セイレナは生きているかもしれない。」
「え!?」
「実は世界中心機関の広報でキメダ村破壊事件で生き残った者の保護をしているのだが、その中に気になる人物を見つけた。『年齢は15歳ほどの女子。黒血であるが本人に記憶喪失の恐れがあり、名前不詳。』これが可能性のある。」
僕は一歩前に出た。
「今すぐ迎えに行かせてください。」
ラインハルトさんは息を吐き、目をつぶった。
「ラクターン、お前は本当に覚悟は出来ているか。もしもだ、その少女が全く別の少女であったとしたら、いや、もしセイレナだとしても記憶を本当に失ってしていたとしたら。」
沈黙が広がる。まるで時が凍りついてしまったようだ。
「本当にお前はそれを受け入れられるか?」
視線が突き刺さる。ただ一つの目線が僕を貫く。悪い予感が頭の中で渦巻く。汗が吹き出て頭が白くなっていく。もし、もしも、本当にその少女が『セイレナ』では無かったなら。目を瞑る。それは無意識に出た自然な行動だった。しかし、それは僕に勇気を与えた。目を瞑った時セイレナの姿が映った。諦める事、それは何よりも行けないことだ。
「覚悟はあります。」
沈黙がまた起こるが、それは先程の凍りつくような沈黙ではなく、何かが変わった時の変化に思えた。ラインハルトさんの口角が緩んだ。
「すまんな。どうしてもここまでしないと心配でな。セイレナは絶対に生きている。」
僕はうなづいた。
「天水兄妹を連れて行ってくるといい。必ずセイレナを連れて帰ってこい。殺し屋である事は隠し通してな。」
「はい!絶対に成功させます!」
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その後朝ごはんを食べた。天水兄妹の自慢話を聞いていた。天候を操る能力と水を操る能力をもつ彼らはとても良いコンビだ。彼らに先程の話をするとスグにうなづいてくれた。また4人で遊び、任務をこなし、笑い合うことを願っていた。




