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師匠★無双〜俺がパワーレベリングされた訳〜  作者: 名明伸夫
第1部〜王都へ〜
9/18

episode07【おしえて! ロエル先生①】

「……んっ」


 薄く開けた瞼の隙間からぼんやりとした日の光が差し込む。

 俺はついいつもの癖で二度寝を決め込もうと、布団を引っ張り頭まで被った。


(……え、布団?!)


 俺は勢いよく飛び起きて、キョロキョロと辺りを見回した。

 ベッドやテーブルなど、まるで宿屋の一室の様な家具が一通り置かれているものの、モカの村の幻覚で見た部屋とは間取りや雰囲気が全て違っていた。


「……どこだよ、ここ」

 ベッドの上で呆然としていると、部屋のドアが開いた。


「おや、お目覚めですね」

 ロエルがカップと朝食が乗ったトレイを片手持ちながら、つかつかと部屋の中へと入って来るとベッドの脇にある椅子へ優雅に腰かけた。


「ロエル!……これ、一体どうなってんだよ」


「まぁまぁ、これから全てお話ししますから、これでも食べて落ち着きましょう」

 そう言ってロエルはトレイの上にあったサンドイッチをひとつ俺に手渡した。昨日の昼から何も食べていなかった事を思い出した俺は、ロエルの言葉に従い夢中でサンドイッチを頬張った。



  ✳︎  ✳︎  ✳︎



 結局、トレイの上にあった四つのサンドイッチ全てを食べ終えた後、一息ついてから再びロエルに質問した。


「……んで? 一体ここはどこなんだよ」


「ここですか? ここは、ロンデロン大陸東部に位置する“カナル”という街の宿屋です」


「東部? まさか……だって、モカの村も俺の居たリマの村もロンデロン大陸の“南部”だぜ?」


「えぇ、だからあなたが眠った後にここへやってきたのですよ。“転移魔法ルブーム”を使ってね」


「……は?」

 俺はロエルの衝撃的過ぎる言葉に耳を疑った。


「いや、ちょっと待ってくれよ。じゃあ、ロエルはその転移魔法ルブームだかって魔法が使えたにも関わらず、ずっと徒歩で移動してたのか?!」


「ええ、この魔法は私が過去に一度訪れた場所じゃないと使えませんからねぇ」

 ロエルはわざとらしく手をひらひらと動かしていたが、俺の頭の中はまたいつものようにチグハグになり始めていた。


「だから、ロエルはここに来たことがあるんだろ? なら最初から魔法でここに来れば良かったんじゃ」


「ふーむ、どうやらウィルは根本的に勘違いをしている様ですねぇ。私はあの時ここではなく“モカの村”を目指して歩いていたのですよ?」


「……は?(二回目)」

 話がますます見えなくなって来た俺を見て、ロエルは小さくため息を吐くと、子供を諭すような優しい口調でことの顛末を説明し始めた。


「そうですねぇ……。その話をする前に、まず説明しておかなくてはならないのが、私の持つ“固有スキル”についてです。この固有スキルは、ある一定の条件を満たすか、生まれつき持っているかのふた通りしかないのですが、基本的に他人と同じスキルを持つことはありません。ここまでは良いですか?」


「まぁ、それはわかるけど、それとさっきの話が何の関係が──


「結論を急いではなりませんよ、ウィル。私の固有スキルは“危機察知”というもので、私の近くに潜む危険の大きさと場所を知ることが出来るスキルなのです」


「……ってことは、つまりロエルは危険が潜んでいるとわかっていながら、モカの村へ足を運んだ……ってこと」


「その通り。なかなか物分かりがよろしいですね♪」

 ロエルは人差し指をぴんと立て、得意げな表情で俺を見た。


「いやいやいやいや、訳わかんねーって! 何でそんなわざわざ危険に飛び込んでいくような真似を……」

 俺はそこまで言うと、廃屋でのロエルの言葉を思い出し、全てを悟った。




(──何を言ってるのですか、ウィル。初めから助けたら“特訓”にならないでしょう?)




「まさか、俺の……特訓のため?」


「素晴らしい! 優秀な答えです♪ ついでに述べておくならば、今回の危険度は“レベル1”私にとっては取るに足らないものでしたね」


「それでも、俺にとっちゃ余るくらい取るに足りまくってるんですがぁあ!!」


「まぁまぁ、そう興奮しないで。私のおかげでウィルのレベルもちゃあんと上がったじゃないですか」

 ロエルは落ち着いた口調のまま、トレイの上のカップを口に運んだ。


「レベル……? あぁ、そうだ! そのことでも聞きたいことがあったんだ!」


 俺は慌ててステータス画面を開いた。




 ────────────────


 名前:ウィル

 クラス:なし

 性別:男

 レベル:4


 HP:26/26

 MP:2/2

 腕力:10

 魔力:7

 体力:7

 耐久力:7

 俊敏:9

 器用さ:8

 運:10


 所有スキル:なし

 固有スキル:なし



 ────────────────



「この腕力やら耐久力が……って、あれ? 元に戻ってる」

 俺はゴブリンとの戦いの時に確認した画面を思い出し、首を傾げた。


「あぁ、これのことですね」

 そう言うとロエルは、腰に下げていたあの長剣を俺に手渡した。


「これでもう一度確認してみてください」


「え、これでもう一度って、何が変わる……わっ?!」



 ────────────────


 名前:ウィル

 クラス:なし

 性別:男

 レベル:4


 HP:26/26

 MP:2/2

 腕力:110★

 魔力:7

 体力:7

 耐久力:107★

 俊敏:59★

 器用さ:8

 運:10


 所有スキル:一閃(武器固有)

 固有スキル:なし



 ────────────────



「どうですか? ウィルの能力が格段に上がっているでしょう。これは私の武器が“能力付与エンチャント”されているからです」


「え、エンチャン……ト?」


 どうやら俺はこの世界を生きる上で、まだまだ知らなければならない事があるらしい。



 《続く》

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