episode06【レベルアップップ】
【 ウィル は レベル が あがった! 】
視界の隅にウィンドウが表示されるが、今はそんなものを見ている余裕はない。
ゴブリンが振りかぶった斧に合わせて剣を合わせ、何とか攻撃をいなしたが、後方から来た短剣持ちゴブリンの追撃に対応し切れず、背中にまともに斬撃を喰らった。
「っ痛ぇぇー! せこい攻撃ばっかしやがって」
そう悪態をついてはみたものの、これまでのダメージの蓄積からか少しずつ身体が思う様に動かなくなってきていた。
俺は一度今のHPを確認するために、バックステップで二体から少し距離をとりステータス画面を開いた。
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名前:ウィル
クラス:なし
性別:男
レベル:4
HP:6/26(+5)
MP:0/2(+2)
腕力:110(+3)★
魔力:7(+1)
体力:7(+2)
耐久力:107(+3)★
俊敏:59(+3)★
器用さ:8(+3)
運:10(+2)
所有スキル:一閃(武器固有)new
固有スキル:なし
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──はっ!?!??!?
あまりの情報量と、ツッコミどころ満載の内容に思考が止まりそうになったが、まずはHPだけ素早く確認する。
(残り6か……あと一撃は耐えられる……のかこれ?)
数値が漠然とし過ぎていて、判断に困っていると、ふとステータス画面のスキル欄に目が留まった。
(一閃? 武器固有? なんだそれ……とりあえず何か技が使える様になったって事でいいのか? ヤバい全然わからねーぞ)
俺は必死にゴブリン達を目で牽制しながら、頭をフル回転させていたが──
「「グガァア!」」
奇声を上げゴブリン達が再び駆け出したのを見て、俺は覚悟を決めた。
「あぁもう、どうにでもなれ! 一閃っ!!」
俺がそう叫んだ瞬間、脳内に挙動のイメージが鮮明に浮かび上がり、自然と身体がそのイメージに沿って動き始めた。
大きく脚を開いて膝を曲げ、長剣を居合いの要領で腰元に構えると、ゴブリンの攻撃に合わせて身体が信じられない速さで反応し、二体のゴブリンの胴体を纏めて横薙ぎに捌いた。
「ガ……グゲッ……」
ゴブリン達は自分の身に何が起きたか理解出来ないと言った表情のまま、二体の上半身はそれぞれ下半身からズルリと音を立てて滑落していった。
俺は自分自身の動きと、その光景にしばし呆然としていたが、我に返ってロエルの方を見るとそこにゴブリンメイジの姿は無く、ただ燃え残った地面や天井がブスブスと黒い煙りを上げていた。
「どうやら、そちらも終わった様ですね」
「無茶振りばっかりしやがって……もうこれ以上動けねーぞ」
心なしか嬉しそうな表情で声をかけてくるロエルに、俺は剣で身体を支える様にガックリと膝をついた。
「おやおや、思ったよりダメージを受けていますね。これは回復の前に少し眠った方が良さそうです──“催眠呪文”♪」
「なんだ、それ……ちょっ──
──残念ながら、俺が旅の初日で覚えている記憶はここまでだった。
だがその翌日、俺は意外な場所で目を覚ました。
次回は26日(土)12:00投稿の予定です。