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師匠★無双〜俺がパワーレベリングされた訳〜  作者: 名明伸夫
第1部〜王都へ〜
11/18

episode09【こんにちはお仕事〜Hello Work〜】

「ふむふむ……と言うことは……うーん……」


 俺とロエルは大通りから一本小道に入ったところにある小さなレストランへと入り、昼食を兼ねて今後の計画を立てていた。


 節約の為にと、質素なパンを二人で分け合って食べながら、ロエルは熱心に何かを書いていた。



「……これでよしっと。出来ましたよ♪」


「出来たって何が?」


「決まっているでしょう。王都リュクスヘイムまでの旅路で必要になる路銀ろぎんの計算ですよ」


 そう言ってロエルから手渡された紙には、これから必要になるであろうお金が、事細かに書かれていた。


「王都まで移動する馬を借りたり、道中での宿泊費や食費。更に今後のウィルの装備品や消耗品諸々考えて、安く見積もってもこの街で二万ガルドは稼いでおきたい所ですねぇ」


「にっ、二万ガルド?! そんな大金どうやって稼ぐんだよ!」


「なぁに、心配は要りませんよ。先ほど“酒場の掲示板”にこんなビラを見つけましたから♪」

 ロエルは懐から一枚の紙を取り出すとテーブルの上に置いた。



 ────────────────────



【急募】


 ・依頼主“カナル連合自治会”


 ・依頼内容“アークトロルの討伐”


 ・達成難度“B”


 ・報酬“賞金二万ガルド”



 サフィーネの酒場カナル支部


 ────────────────────



「賞金二万ガルド?! これ、何だよ?」


「これですか? これは街の酒場が街や個人からの依頼を受けて発行する、“依頼票リクエストシート”と呼ばれるものです」


「へぇ〜。ちなみに、この達成難度Bってのはどれくらい難しいんだ?」


「そうですねぇ……確かBランクの依頼は推奨レベルが“30〜40”程度だったと記憶しています」


「ふーん、レベル30〜40なのかぁ……って、30から40ぅ?!」

 俺は目を白黒させながらテーブルに身を乗り出し、ロエルを見た。


「大丈夫ですよ、ウィル。今度は私も一緒に戦いますから♪」


「いやいやいやいや、そういう問題じゃないっての! 俺のレベル4だぜ? いくら何でもそれは無茶だって!」

 全力で手と首を横に振るものの、ロエルの浮かべる笑顔は全く変わらなかった。


「──さてと。話も決まったことですし、早速“依頼リクエスト”を受けに酒場まで行きましょうか」


「俺の話を聞けぇぇえええ!!!」


 俺の必死の抵抗も虚しく、半ば引きずられるような形で俺たちは酒場へと足を運んだ。



 ✳︎  ✳︎  ✳︎



 程なくして到着した酒場は二階建てで、俺が思っているよりも大きく、一般的な民家の三倍程の広さがあった。

 扉を開けて中へ入ると、ムワッとした熱気と共にガヤガヤとした喧騒が酒場中に広がっていた。


「凄い人混みだなぁ……」


「酒場とは書いてありますが、実質一階部分は依頼受付がメインですからね。ちなみに奥に見える大きな掲示板が“依頼板リクエストボード”と呼ばれるもので、現時点で受けられる全ての依頼票が貼られています。その隣のカウンターが受付です」


 ロエルの指差す方向を見ると、確かに一際目立つ大きな板がそびえ立っており、その周辺の人口密度はここよりも増して更に悲惨な状態になっていた。


「まずは依頼板で受注用紙を取らなくてはならないので、あそこへ行きましょう♪」


「うへぇ……あの中に行くのかよ」


 気乗りしないまま人混みの中を縫うようにして進んで行くと、どうやらこの人混みは、依頼板の前で言い争いをしている三人を取り囲んでいるだけの野次馬らしかった。


 なんとか依頼板が見える所まで移動すると、その前には、ゴツい鎧を身にまとった巨躯の男と、額にバンダナを巻き杖を持った背の低い男。そしてその二人と対峙する様に、金髪で水着(?)のような服にローブだけをまとった女が居た。


「……ねぇ、あれ誰?」


 俺はすぐ隣に居た見ず知らずの男に話しかける。


「なんだ坊主。知らねえのか? あっちのデカいのとチビっこい二人組みは“テッド兄弟”って言って、この辺じゃ有名な賞金稼ぎだ。んでもって、こっちのグラマーな姉ちゃんは“メサイア”っていう最近この街の依頼を一人でバンバンこなしてる魔法使いさ」


「へぇ〜。ありがとう」


「いいってことよ」


 俺は男に軽く頭を下げると、他の野次馬よろしく三人の様子を伺った。




「だからよぉ! 俺達と一緒に来た方がいいに決まってるだろぉ!」

 鎧を来た男がガチャガチャと音を立てながら、女に詰め寄る様に前に出た。


「な〜んで、わたくしがあんた達みたいなむさ苦しい男と一緒に行かなくちゃならないの? 鏡でも見て出直してらっしゃい」

 魔法使いの女は、髪の毛をかき上げながら二人に冷たく言い放つ。


「だからアークトロルは一人じゃ危険だって、兄貴が言ってんだ! 俺達と行けば楽勝で倒せるぜ!」

 妙にかん高い声でそう話しかけるのは、背の低いバンダナ男だ。




「あいつらも、アークトロルの討伐に行くのかな?」


「そうみたいですねぇ……まぁ、私達には関係のない話です。行きましょうか」


「お、おい?!」


 ロエルは三人組のやり取りに気にも留める様子も無く、鎧の男と魔法使いの女の間を割って入るように歩いて行った。



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