episode08【おしえて! ロエル先生②】
「エンチャン……ト?」
「そうです。“能力付与”とはその名の通り、武器や防具といった装備品を魔術の力で強化したり、特殊な能力を付与することです。そして、エンチャントされたアイテムを装備した場合、補正された能力値の隣に“★”が付きますよ」
ロエルの言葉に俺は再度ステータス画面を見た。
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名前:ウィル
クラス:なし
性別:男
レベル:4
HP:26/26
MP:2/2
腕力:110★
魔力:7
体力:7
耐久力:107★
俊敏:59★
器用さ:8
運:10
所有スキル:一閃(武器固有)
固有スキル:なし
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「なるほどー。この★印ってのはそう言う意味なのか……」
「ちなみにこの“ロエルの剣”は腕力と耐久力に100、俊敏に50の補正がエンチャントされています」
(ロエルの剣て。剣に自分の名前付けてんのかよ……ダッサ〜)
ロエルのネーミングセンスの無さに呆れつつも、少しずつ話が飲み込めてきた俺は、まじまじと自分のステータスを眺めていた。
そして、そこである事に気がついた。
「……ん? ってことはよ。俺はこの補正された能力値でゴブリン達と戦ってたってこと?」
「もちろん。もし仮にあの時ウィルが私の剣を使わなければ、おそらくゴブリンの最初の一撃で昇天していますから♪」
………。
「……ハアァァァアア!? 今さらっと凄いこと言ったよね。ねえ、ねえ!」
笑顔で微笑みかけてくるロエルの肩を揺さぶり全力で抗議したが、もはや後の祭りでしか無かった。
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その後、宿屋を後にした俺とロエルは街へと出掛けた。カナルという街は思ったよりも大きな街で、大通りにはたくさんの店が立ち並び、多くの人で賑わいを見せていた。
「それで、これから王都までどうやって行くんだ? 転移魔法で近くまで一気に行けたりしないのか?」
「いや、私の移動できる範囲ではここが一番王都に近いですね。とは言え、ここから王都までは馬に乗っても十日前後は掛かるでしょうが」
「それじゃあ、早速旅の支度をして馬を借りに行こうぜ!」
初めての乗馬にワクワクしつつそう言うと、ロエルは困った様に眉をひそめた。
「……何だよ、行かないのか?」
「もちろん、私もそうしたいのは山々ですがね。……無いんですよねぇ」
「無いって、何が?」
「──お金です」
「へぇ〜。ロエルってしっかりしてるのかと思いきや、案外お金の管理ってテキトーなんだな」
少し小馬鹿にした様な態度で返すと、ロエルはわざとらしく身振りをつけながら
「本当ですよねぇ。あの時の雰囲気なら、リマの村長に渡したお金が半分だったとしても、ウィルを差し出してくれそうでしたものねぇ」
「あっ……」
とにかくこうして、俺とロエルは当面の金策のためもう少しこの街に留まる事になった。