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タクティカル☆魔法少女  作者: イズミ イクサ
魔法少女 爆☆誕
6/9

魔法少女 爆☆誕 ひとまず

  /5


 さて、と。

 濡れてしまった身体を引き摺りながら、私は人気のない電気街を歩いていた。


 依頼主が犯人で報酬はゼロ、パソコンも買ってしまったし、経済的には赤字となってしまう。

 思いもよらない出費に、私の財布は空っぽ同然だった。


 辛うじて使えるスマートフォンも、よく考えれば日本のキャリアに合わせた契約をしていなかった。

 手短に契約を結ばなければ、お金が飛んでしまう。


 しかし、次の依頼はいつ入ってくるのやら。

 私は明日の自分さえ分からない。もしかしたら野たれ死んでしまうかもしれない。


「まあ、これに懲りたら出どころ不明の依頼なんか受けねぇコトだな」


 HCARのほうといえば余裕といったところ。

 当然、お前のメシは私の魔力だ。私の血だ肉だ、栄養素を吸い取って生きている。


 お陰で私はどれだけ食べても太らないんだけど、どれだけ食べても満たされないのが実情だ。

 まあ、元々魔法使いなんて性質じゃない、ふつーの日本人だから、仕方ないんだけどね。


「ふん、そんな依頼しか入って来ないの、私は」

「そうかい、なら頑張りな」


 まるで他人事のような素振り。

 気が付けば私は息を詰まらせて、頬を膨らませてしまった。

 これじゃなんだか子供みたいじゃないか。


「子どもだろ、お前はさ」

「ふん……」


 そんな事を言うなら、どこか行ってしまえばいいのに。

 でもHCARは私の傍にいる。


「ねえ、あれ……ほんとう?」


 ふとHCARの言葉を思い出した。


「あれって、ああ……あれ?」

「女の子が長物を持つな、ってさ」

「ああ、だってそうだろ? お前が今こうして俺を扱うっていうのは、そういう事だ」

「ええ? だって先代だって女の人だったじゃん……」


 と、息を呑んでしまう。


「そっか、師匠……死んじゃったもんね」


 師匠、私にHCARを託した陰陽師である。

 煙草を吸いながら、指貫グローブに漆黒の外套。

 何処からともなく取り出したBARを使い、目に付く全てを木っ端みじんにしてしまうタクティカルな魔女。

 それが師匠だ。


 師匠は私を守って死んでしまった。魔術師の弾丸に敗れたのだ。

 私の家族は、これで全て魔術師に殺されている事になる。

 だから私は戦っている、魔術師としてPMCとして。

 

 でも師匠が魔女なら、私はなんだろう。

 遠く及ばない未熟者だ。今もこうして明日の飯にさえ在りつけない。

 夜明け前の秋葉原、ゆっくりと日差しが昇っていく。


 平和で温和な日常、世界一平和な国、日本。

 その少ない闇を祓うように、東の空が時間をかけて茜に染まっていく。


 一つのポスターが照らしあげられた。

 アニメのポスターだ。ピンクのドレスを纏い、ステッキを振るう小さな女の子。


「ああ、そうか……」


 たしかそう、魔界から来た魔物を浄化させるために、彼女は戦うのだ。

 命を懸けて、誰からも理解されない飽くなき戦いへと身を投じる少女たち。

 延々と恨みもしない相手と戦うことは、どれだけの苦しみを伴うのだろう?

 彼女たちは、どんな気持ちで魔物と向き合うのだろう。


 夢と希望を守る少女たち。

 そんな彼女たちを人々は魔法少女と呼ぶらしい。


「そうか、私は――――」


 どうした事だろう、偶然かもしれない。

 ステッキなら私も持っていた。


 それに魔法ならお手の物だ、キラキラしてないけど。

 でも、まあ同じようなものだろう。


 だから私は――――。


「魔法少女、タクティカル魔法少女クロノ」


 ケタケタとチャンバーが鳴っている。

 HCARが本当に笑った。

ひとまず。

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