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しもつけそう。  作者: 白菜
閑話1 ロクでもないアパート
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お巡りさん、コイツです

「これか……」


 見上げながら、呟く。

 『下野しもつけ荘』。

 それが鴻野山こうのやま 丘夏おかなつが入居する予定のアパートの名前で、目の前にあるのがまさしくそのアパートというわけだ。

 誰も名前も知らないような田舎町に存在する下野荘は築二十五年の二階建て木造アパートで、家賃四万、敷礼金無しの田舎ならではのリーズナブルなお値段となっている(ちなみに1DLK)。

 高校入学を機に自立をする事になったわけだが……まさか、こんなところに住む事になるとは。嫌というわけじゃないのだが、住み慣れた東京と比べると一抹の不安はある。

 アパートの周りから見えるのは、田んぼか畑ぐらいのものだ。皆、どうやって生活をしてるのやら。

 その時、アパートの離れにある管理室の扉が突然開かれた。

 扉から出てきたのはパーカーにジーンズといった、質素な服装をした極めて中性的な人物だった。

 彼女の名前は宝積寺ほうしゃくじ 穂花ほのか


「やぁ、よく来てくれたね。鴻野山君」

「これからお世話になります、宝積寺さん」


 穂花は丘夏を見るなり、にこやかに挨拶をしてきた。

 穂花は二十代前半という若さにして、この『下野荘』の大家兼、管理人だったりする。

 丘夏も初めて会った時はこの若さで? と疑問に思ったが、話によると両親が出張で任せられる人が誰もいないんだとか。


「あはは、固いなぁ。これから君はここに住む事になるんだし、気軽に『大家さん』って呼んでもいいんだよ?」

「じゃあ、お言葉に甘えてそうさせてもらいます」


 正直、宝積寺さんは呼びにくかったから助かる。

 本人がこう言ってるわけだ。これからは遠慮なく『大家さん』と呼ばせてもらおう。


「うんうん。そんな感じでやっていこう。それじゃあ、改めてよろしく鴻野山君」


 握手をしようというのか、穂花が手を差し伸ばす。

 それに受け答えないのは失礼だろうし、伸ばされた手を丘夏はしっかりと握った。


「こちらこそ、お世話になります」


 まぁ、何にしても穂花が気さくで良い人でよかった。これなら何かあった時に頼れそうだと、


「おっと」

「あっ」


 穂花の懐から何かが落ちた。

 反射的に丘夏は地面に落ちたそれを見た。

 ナイフだった。



「……」

「あっちゃー、落としちゃったよ……」



 やってしまった、という感じで額に手を当てる穂花。

 一方、丘夏は何も言えず、固まったようにナイフから視線を外せないでいた。



「あ、気にしないで鴻野山君。ただの護身用だから」




 この時、丘夏が穂花の認識を『人の良い人物』から『危険人物』へと改めた事は言うまでもない。


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