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しもつけそう。  作者: 白菜
第五話 出かけよう、そうしよう
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ドロンと消える

「ちょっと主人が待ってるって……どういう意味ですか夜切さん!」

「そのままの意味だ。主人がお前に会いたがっている」

「会いたがってるって……それなら乙女ちゃんは⁉︎」

「……」




 丘夏の質問に答えないまま、夜切は奥へと進んでいく。

 そして廊下の一番突き当たりの部屋に辿り着くと、夜切はそのドアを指差した。


「ここだ。さっさと入れ」


 丘夏はようやくそこで夜切の腕を払う事が出来た。


「説明してください! 乙女ちゃんをどうするつもりですか! それにどうして那須野家の社長が僕に会いたがってるんですか!」

「安心しろ、別にお嬢に危害をつもりはない」

「じゃあどうして……」

「その辺は会えば説明してくれるはずだ」

「夜切さんが説明してくだ……って、消えた⁉︎」


 正面にいた夜切が一瞬の内に姿を消したのだ。

 慌てて見渡すが、姿ところか気配もしない。


「忍者かあの人は……!」


 ツッコミを入れるが、廊下に丘夏の声が虚しく響くだけだった。

 しかしどうする。夜切さんがいなくなったなら乙女のところに向かうか……いや、まずは部屋に入るべきか。

 少し悩んだ後、丘夏は目の前のドアノブに手を触れた。

 ……入ろう。夜切の言う通りなら中にいる人物、那須野家の社長が説明をしてくれるはずだ。

 固唾を飲み込んで、ドアノブを捻る。

 ドアを開けた先には──


「よく来ましたね、鴻野山丘夏君」


 花屋で会った時の中年男性がそこに立っていた。

 ほんの少し、丘夏は動揺した。


「まさかとは思いましたけど、やっぱりあなたが……」

「おや、その言い方だと私に気がついていたのですか?」

「偶然、あなたが落とした名刺を見つけましてね。何の確証もありませんでしたけど」


 拾った名刺には『烏山』と明記されていた。

 今言った通りに偶然同じ名字、というのも考えられたが……にしては『烏山』という名字は珍しすぎる。

 つまり──


「ええ、そうですよ。君の予想は当たってます。私が──那須野グループの社長、烏山政です」


 この男が乙女の父親、というわけだ。


「それで、僕に何の用があってここに呼び出したんですか? ……いや、それより乙女ちゃんをどうするつもりですか?」


 ぴくり、と政の眉がつりあがる。

 が、すぐに表情が元に戻る。




「……別に乙女をどうこうするつもりはありません。私はただ君と話したいだけです」

「ならまず乙女ちゃんをあの部屋から出してください。そして──乙女ちゃんと会ってください」

「……それは出来ない」

「どうしてですか! 乙女ちゃんは覚悟を決めてここに来たんだ! その覚悟を父親であるあなたが蔑ろにするつもりですか!」

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