三十代イケメン(笑)
「それでどうして夜切さんが? お父さんは?」
「……その事についてだがな」
先程までセクハラがどうとか言っていた夜切は急に真面目なトーンになり、話し始める。
「主人が場所を変更して欲しいらしくてな……急で悪いんだがこのまま那須野グループの本社に連れて行っても構わないか?」
「本社に……? どうして?」
「さあな。だが、朝から会社が慌ただしかったからな。もしかすると何か緊急の仕事が入ったのかもしれないな」
「……移動するのは別に構わない。けど、それなら丘夏も連れて行くのが条件」
夜切がチラッと丘夏を一瞥する。
そうして言った。
「悪いが、その条件は飲めないな」
「……どうして? あの人に何か言われたの?」
「いいや、主人は関係ない。そこの男を連れて行けない理由は非常に簡単だ。俺の車にむさ苦しい男は乗せられないからだ」
「予想以上に勝手な理由!」
「……夜切さん。ふわさんに夜切さんが浮気してるって言いつけてもいいの?」
「仕方ない。今回は特別だ」
「身代わりも早い⁉︎」
丘夏、ツッコミっぱなしである。
「というか浮気……ってまさかこの人結婚してるの?」
「うん、ふわさんって言って教師をやってる」
「えっと、この人僕より三、四歳年上にしか思えないんだけど……いくつ?」
「んと、屋敷にいた時は確か二十歳くらいだったから……三十くらい?」
「凄い年上だったーーッ⁉︎」
「別に俺は構わない。が、目上の者には最低限の礼儀は必要だと思うが?」
「はい……すいません」
もっともだった。
セクハラしてた三十代の男だけには言われたくない事だが。
「車は向こうに止めてある。行くぞ」
「……乙女ちゃんは女の子なんですからちゃんとエスコートしてくださいよ?」
「それは保護者であるお前の役目だろう?」
「ちょっと待って下さい。僕は乙女ちゃんの何だと思われてるんですか⁉︎」
「友達以上恋人未満」
「大正解ですよコンチクショウッ!」
「……? 丘夏は私のゲーム仲間じゃないの?」
「それも正解といえば正解だけどね乙女ちゃん……」
「……お前も苦労してるんだな」
「あ、分かってもらえます?」




