願う
「何を言ってるの……?」
裏切られた、という表情をする乙女に対して丘夏はただ申し訳ないとそう思った。
「ごめん。勝手な事を言ってるのは分かってる。でも、これはどうしても乙女ちゃんにしか頼めない事なんだ」
「私に……あの人に、烏山と関われって丘夏はそう言ってるの?」
「うん、そうだよ」
「──っ」
嘘や誤魔化しはここでは通用しない。
だからこそ真正面から率直に、正直に丘夏は乙女と向き合った。
「私はもう……烏山と関わりたくないっ」
「それは痛い程分かってるよ」
「分かってないっ。丘夏は分かってないっ。私は、あんな思いはもうしたくない……」
「でも、このままじゃ何も変わらない。乙女ちゃんは本当の事を……知りたくないの?」
「本当の……事?」
「乙女ちゃんのお父さんがどうして乙女ちゃんを拒絶するのか……その事を」
「!」
丘夏は乙女の父親が乙女を拒絶するには何か理由があるとそう思っていた。
そうでなければ実の娘を拒絶する何てこと起こりうるわけがない。起こりうるわけがないのだ。
「理由について乙女ちゃんは知りたくないの? お父さんについて何か知りたくないの?」
「それは……」
「知りたいと思ってるんなら僕に協力してほしい。乙女ちゃんは乙女ちゃんのお父さんには会えない。けど僕なら会える。そうしたらその事について何か知れるかもしれない」
「……」
顔を俯かせた乙女は昨夜と同じように涙をこぼして見せた。
「あ……」と呟き、乙女は涙を拭き取る。
「思い出した……あの少女は私……昔の私だった」
「え?」
「夢で出てきた少女。あの夢に出てきたのは私だった……」
乙女は告白するように言葉をこぼす。
「ねぇ丘夏。……お父さんは私の事をまだ好いてるのかな?」
「乙女ちゃん……」
「だから手を伸ばした……私は愛して欲しかった。お父さんに愛して欲しかっただけ」
ポロポロと涙をこぼした乙女は丘夏の胸元に飛び込んできた。
そしてえんえんと泣きじゃぐる。
「それだけ……っ、それだけだったのに……っ、どうしてこうなっちゃったの……?」
「……」
丘夏は黙って乙女の頭を撫でた。
愛されたいとただ願う少女の頭を。




