ついムシャクシャして……
「断る」
開口一番に聖はそう言った。
「まだ僕何も言ってないんだけど……」
「テメェがここに来た理由なんざ言わなくても分かんだよ。どうせ『烏山の社長』に会いたいとか無茶言うんだろ? んなもの無理に決まってんだろ」
「いやいや違うよ聖」
「あん? じゃあ、何だ?」
「僕は烏山の社長と聖を殴らせてって頼みに来たんだ」
「随分と突き抜けた頼みだなオイ⁉︎ つか、何でそこにオレが含まれてんだ!」
「ついムシャクシャして……」
「犯行後の容疑者か! どちらにせよ無理だっつーの!」
「むぅ……」
丘夏は乙女の父に会うにはこの方法が最も早いと思ったのだが。
早々上手くはいかないようだ。
「頼む聖! 僕、どうしても乙女ちゃんのお父さんに会いたいんだ!」
「……会いたい理由は何となく分かるし、協力したい事も山々だがな。それでも無理なもんは無理だ。確かに大金家は烏山家と繋がりはあるがよ、オレの呼び出しに応じるほど向こうも暇じゃねぇ」
「……それなら呼び出しに応じるための何かがあれば呼び出せるって事?」
「ああん? んなもんテメェは持ってんのか?」
「いや、ないけど」
「話にならねぇな」
話は終わりだ、と言うように聖はそう吐き捨てる。
「確かに僕じゃ乙女ちゃんのお父さんを呼び出せない。けど、呼び出せる可能性がある人物を僕は聖以外に知ってるんだよね」
「可能性がある人物……まさかと思うが」
「うん──乙女ちゃんだよ」
僕が知ってる中で乙女の父親を呼び出せるのは乙女が一番可能性が高い。
「……だがテメェも知ってんだろ? 烏山の社長は那須野の事をずっと拒絶してるってよ。それで那須野が烏山の社長を呼び出しても向こうは応じねぇんじゃねぇか?」
「かもね。でも、可能性はゼロじゃないし、聖も協力してくれれば可能性は高くなる」
「ふぅん……何か考えがあんのか?」
「ぼんやりとは。とにかくまずは……乙女ちゃんに協力を求めないと。一緒に説得してくれない聖?」
「OK。そういう無計画な感じは嫌いじゃねぇよ。やってやんよ」
「ありがとう、聖」




