期待した? 残念!
「このアパートには変人しか住んでないの?」
珍妙過ぎる住民に挨拶したのち、丘夏達はまた部屋へと集まっていた。
一部屋挨拶しに行っただけでこの疲労感だ。全員に挨拶しに行ったらどうなってしまうのだろうか。
「確かにゆあん達や大家はちょっと変わってるかもしれないけど、私は違う」
「初対面の人物の性別の分からない子が、どの口で言ってるの?」
「……初対面の女の子の胸を揉んだ丘夏にも言えないと思う、それ」
「うっ……」
その事を出されると痛い。
あれは若さゆえの過ちだった……。
「それよりどうするの? 次の部屋に行く?」
「いや、今日はちょっともう……」
正直、今日一日で色々ありすぎていっぱいいっぱいなのだ。
その上、またゆあん達に負けず劣らずの変人達の相手なんてしたら過労死してしまうかもしれない。
「ならちょっと付き合ってほしい」
「ん? どこか行くの?」
「私の部屋」
「へ……?」
聞き違いだろうか。
突然、乙女に自分の部屋に来てほしいと言われた気がする。
これは童貞だけが聞こえる妖精の幻聴というやつだろうか。
きっとそうだ。そうに違いない。
「聞こえなかった? 私の部屋に、来て」
「な、なんで……⁉︎」
聞き間違いではなかったらしい。
まさかの引っ越し初日にして女の子からお誘い。
女性経験がほとんどない丘夏にしてみればこの乙女の発言はかなり衝撃的だった。
「なんでってしたいから」
「したい⁉︎ したいって何を⁉︎ というか、それってそんな気軽にするものなの⁉︎」
「? うん」
「い、田舎ではそうなの……? いやいや! 絶対におかしい!」
「何が?」
「気軽じゃないよ! こういうのは相手を選んでからよく考えてするものだよ!」
「丘夏なら大丈夫だと思った」
「乙女ちゃん、本当によく考えてる⁉︎」
「考えてる。私、丘夏としたい」
乙女が上目遣いでお願いしてくる。
これを断れる童貞が一体、何人いるのだろうか。
ここで逃したらそういう機会がいつあるか分からない。そもそも本人がいいと言っているのだ。ここで断るのは乙女に恥をかかしてしまうのではないだろうか。
深く、深く、悩みに悩んで丘夏は決心をする。
「……よし、いいよ。乙女ちゃん、僕としよう」
「決心、出来たの?」
「うん。僕も男だからね」
「そう……」
言った通り、丘夏は既に覚悟を決めていた。
それが意味する事はつまり、童貞の卒業である。
お母さん、産んでくれてありがとう……!
そう丘夏は自分を産んでくれた親に感謝し、乙女と一緒に部屋へと入り……
……乙女からコントローラーを受け取った。
「じゃあしよう。……ゲームを」
「そんな事だと思ったよ畜生ーーッ‼︎」
丘夏は血の涙を流して絶叫した。




