大人の条件
「ともあれ、隣の住民としてよろしく頼むぞ」
「僕は全くよろしくしたくないんだけど……」
「ツンデレってやつかー?」
「……本当、勘弁してよ」
最早、ツッコミを入れる気すら起きなかった。
ここまで来るまでに乙女や穂花に、既に体力をごっそりと奪われているのだ。
「そういえば他に何か聞きたい事はないのか? ゆあん達の事とか」
「ああ、それなら……少し気になってた事はあるんだけど」
「ゆあんの美貌の秘密についてか?」
「いや、二人はここに住んでるんだよね?」
「ん? ああ、そうだぞ」
「でも、どう見ても君って小学生くらいにしか見えないんだけど……」
失礼な質問だと丘夏も分かってはいた。
が、怒られるのを覚悟で聞きたいほどにはその事が気になっていたのだった。
案の定、ゆあんは顔を歪めた。
「……お前、少し失礼じゃないか?」
「ご、ごめん。でも気になってさ」
「まぁ、別にいいぞ。よくされる質問ではあるしなー。おっとーにも聞かれたし……」
「おっとー? 誰の事?」
「いや、そこにいるぞ?」
そう言ってゆあんは乙女を指差す。
なるほど。乙女だから『おっとー』というわけか。
その呼び方だったら丘夏は『おっかー』になるのだろうか。
どちらにせよ、妙な呼び方だ。
「ゆあんの見た目は確かに幼げに見えるかもしれないが、こう見えてもゆあんは立派な大人なのだ」
「そうなの? ……いや、そうなんですか?」
自身を大人だと言い張るゆあん。
そうだとしたら丘夏はずっと年上にタメ口をきいていたという事になる。
すぐに丘夏は口調を年上に接する時のそれに変える。
「だから十四歳のゆあんが兄ちゃんと一緒に住んでいてもおかしい事は何もないのだ」
「一瞬でも敬語を使ってしまった事を後悔してるよ畜生ッ!」
言い張ってるだけでゆあんは子供だったようだ。
そもそも普通にゆあんは丘夏よりも年下だった。
「? 何かおかしいかー?」
「いや十四歳は大人じゃないから……」
「何を言ってるのだ! 十四歳の時にコーヒーを飲めたらそれはもう大人なんだぞ⁉︎」
「それじゃあ中一の時から毎朝ブラックを飲んでる僕も大人になっちゃうよ」
「ちなみにブラックを好んで飲んでるのはおっさんらしいぞ?」
「遠回しに僕の事をおっさん呼ばわりしようとしてない⁉︎」
「……私は十四歳の時からいちご牛乳飲んでる」
「「子供だ‼︎」」
乙女の発言に丘夏とゆあんの台詞がハモった。




