趣味はプロレス
そして現在に至る。
有墨からスリーパーホールドをかけられる聖は憎しみの目で丘夏を捉えていた。
「裏切ったなこのクソ野郎ーーッ‼︎」
「だって女の子にはなりたくないし……」
「何を訳の分からねぇ事を言ってやがる! 例のアレをやるっつー男と男の約束はどうした!」
「その約束が性別が変わる事によって果たされそうにないから聖を売ったんじゃないか! というか、性転換とエロ本一つじゃ割に合わないんだよ!」
「だからお前は何を言ってんだ⁉︎ ──ぐえっ⁉︎」
「聖様。口を閉じておとなしくしてください。あまり抵抗すると窒息してしまいますよ」
言いながら有墨は首にかける腕の力を込めている。
堪らず聖は苦しそうに顔を歪めてタップする。
「そ、それ、テメェが首を締めなきゃいい話だろ……⁉︎」
「なるほど。聖様は三角締めがお望みという事ですね?」
「ちげーよッ! 放せって言ってんだよ! つかなんで全部プロレス技⁉︎」
「わたくしめの得意技であり、趣味です」
「初耳だ!」
「言いませんでしたからね」
「あ、有墨さん。卍固めを見せてもらってもいいかな? 一度、生で見たかったんだよ」
「よろしいですよ。では……」
「そしてテメェは当たり前のようにそっち側についていやがるんだ⁉︎ 助けろよ! 助けてくれよ⁉︎ このままじゃマジでやば肩がああああぁぁぁぁっ⁉︎」
「おおっ、生卍固め」
聖が苦痛の声を思い切りあげているから分かるように、相当痛いようだ。
丘夏は卍固めはテレビでしか見た事なかったが、今生で見れて感動ものである。
「て、テメェ、有墨……テメェまであのクソ親父の味方するのか……⁉︎」
「いいえ。わたくしめはいつでもどんな時でもどのような場所でもあなた様、聖様の味方ですよ」
「だったら今すぐ放して見逃せ! このままじゃオレはしたくもねぇ結婚を……」
「ですが、主人の命令は絶対です。主人がわたくしめに命令した以上はわたくしはそれに従い、果たさなければならない義務があります」
「その命令を果たす事でオレに不利益が出るとしてもか?」
「ええ。主人の命令は絶対ですので」
「クッソ……! テメェは本当にブレねぇな堅物が……!」
苛立ったように語彙を強める聖。
そんな聖に有墨は恭しくお辞儀をする。
「お褒めにあずかり光栄でございます」
「褒めてねぇよ! 少しは融通を利かせろって皮肉だ馬鹿!」
「生意気な口を叩く悪い子にはツームストンパイルドライバーを決めますがよろしいでしょうか?」
「よくねぇよそんな大技⁉︎ 殺す気か⁉︎」
「是非見せてください!」
「テメェは黙ってろ丘夏ぅっ!」




