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しもつけそう。  作者: 白菜
第三話 丘夏君によるお料理教室
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乙女が何を言ってるのかわからない件

 薫とゆあんが不慮の事故で退場した後、がっくりと項垂れた乙女と何と言っていいのか分からずにいる丘夏がその場に残された。

 やはり、作ったホットケーキ(?)があんな事になってしまった事に少なからずショックを受けているのだろう。



「あー……その……」


 こういう時は何を言えばいいのだろうか。

 落ち込んでいる女子を上手く励ます方法など丘夏は知らないし、そもそも乙女の作ったホットケーキ(?)を真っ先に処分しようとしたのは他でもない丘夏なのだ。


「つ、次はもっと頑張ればいいんだよ。ほら、今度はレシピとか実際に作ってる動画とか見ながらやってみるとかさ」


 結局、無難な言葉しか口に出来ない。

 少しでも慰めになればいいと思うが、乙女は何の反応も示さない。


「卵とかも初めから僕が割っといてあげるから。そうしたら殻も入る事ないし……あ、苺は最後に乗せるだけとか」


 それでも、声をかけ続けた。

 乙女の沈んでいるところなど見たくないから。

 ふいに乙女が天井を見上げる。


「……どうしてこうなっちゃうんだろう」


 まるで何かを悟ってしまったような表情だった。


「いつもこう。やれば失敗ばかり。上手く、いかない」

「……力になれなくてごめん」

「ううん。丘夏は私のために頑張ってくれた」


 結果はこんな事になったけど、と乙女は付け足した。


「乙女ちゃん、一つ聞いていいかな?」

「何?」

「どうしてさ、いきなり料理をしようとしたの?」


 今回、乙女が料理をしようとしたのは丘夏や穂花に強いられたからではない。

 あくまで乙女は自分から料理を始めたのだ。

 数分の内にヘドロのようなものが出来たので、丘夏やゆあん達の手を借りる事になったが……タダで食べる飯は美味しい、とのたまう乙女がどうしてそんな事をしようと思ったのか、丘夏はそれが気になっていたのだ。


「……どうしてだと、思う?」

「え?」


 質問を質問で返され、丘夏はついキョトンとしてしまう。

 乙女はクスリと笑い、その場で立ち上がる。


「今度、教えてあげる」


 そのまま乙女は玄関の方へととてとてと歩いていく。


「どこに行くの?」

「自分の部屋。私、まだ頑張れる」

「頑張れるって……」

「鈍感な誰かのためなら、頑張れる」


 拳を握って乙女はいき込んでいる。

 乙女が何を言ってるのかよく分からない。分からないが……。




「頑張ってね」




 とりあえず激励の言葉を送っておいた。

 少なくても、頑張る事は悪い事じゃないのは知っている。

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