私の女子力は53000です
「作るっていっても一体何を作るのだ?」
ゆあんの最もな質問。
うんうん、と頷いてから丘夏はそれにあらかじめ用意していた答えを返した。
「今日は乙女ちゃんが作りたい料理を作ろうと思ってるよ。自分が作りたいと思った料理ならやる気も出るだろうしね」
「じゃあ、カップラーメン」
「乙女ちゃん。右か左、どっちか選んでくれる?」
「やめて。悪かったから頬をつねるのはやめて」
わずかな抵抗の後、丘夏に両方の頬をつねられながら乙女は顎に手を当てた。
暫しの後、
「……ホットケーキがいい」
そう恥ずかしそうに、か細い声で言った。
「ホットケーキか! ゆあんも好きだぞ!」
「ホットケーキ……うん、簡単だしいいと思うよ」
用意する材料は市販の粉と卵、牛乳くらいだ。
作り方もただ混ぜて焼くだけだし、いくら乙女がドジだろうと失敗する事はないだろう。
「でも何でホットケーキ? 乙女ちゃん、ホットケーキ好きなんだっけ?」
「……何となく、作りたかった」
「……」
今、かすかに乙女の表情が沈んでいたように見えたのは気のせいではないのだろう。
乙女はたまに今のような顔をする事がある。
その裏で乙女は一体何を思っているのだろうか。知りたくないと言えば嘘になる。
だが、それは乙女にとって触れられたくない事なのかもしれない。
それなら乙女が自分から話す時まで待つ、と丘夏はそう考えていた。
「ホットケーキの粉はどうするんだぞ? 今から買ってくるのか?」
「ああ、それなら大丈夫。ホットケーキミックスならあるよ」
調理場の引き出しを開け、奥にある粉を取り出す。
取り出したそれを丘夏は乙女の手に置いてやった。
「……ちょっと待つんだぞおっかー。今、普通にそれを取り出したけどなんであるのだ?」
「なんでって……買ってたからだよ。ホットケーキならたまに作るし」
「おっかーが⁉︎」
「うん。……え? 何かおかしな事言った?」
「おっかーが⁉︎」
「どうして二回言ったの? いや、そんなに僕がホットケーキを作るのがおかしいかな?」
「だっておっかーは巨乳好きで女の子のパンツ大好きなセクハラ変態だぞ⁉︎ そんなおっかーがどうしてホットケーキなんて似合わないものを!」
「巨乳好きで女の子のパンツ大好きなセクハラ変態で悪かったな!」
あながち間違ってないので否定出来ないところが辛い。
「丘夏は他にもクッキーとかパウンドケーキとか作ってる。よくおすそ分けしてくれるし、しかも美味しい」
「そうなのか⁉︎ それならゆあん達にも分けてくれても……⁉︎」
「それが毎回乙女ちゃんが作ったお菓子の半分以上を食べていくもんだから中々機会が……」
「料理、家事も出来て、比較的真面目な性格……正直、嫁に来て欲しい」
「乙女ちゃん。僕は男だからね? 嫁にはいかないからね?
後、料理はそこまででもないから。お菓子作りはそこそこあるけど、料理自体はそこまではないから。
「お、おっかーって……女子なのか⁉︎」
「男だよ」
「嫁に来てください!」
「だから男だって⁉︎」
どうしてお菓子作りだけでこんな扱いを受けなければならないのだろうか。




