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しもつけそう。  作者: 白菜
第三話 丘夏君によるお料理教室
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ジェノサイド

 むせるような何かが焦げた臭いが鼻を刺激する。

 コポコポと溶解液のようなものが気泡を出し、緑色の煙を吹き出す。

 べちょりと、半液体状になった細く、赤黒い──腸が壁から床へと落ちる。

 壁にめり込んでいた複数の目玉が前触れもなくパンと破裂する。

 天井に染み付いた血が下に滴る。


 あまりの光景に丘夏は口元を押さえた。

 酷い。惨い。臭い。汚い……。

 強い吐き気と共に丘夏の頭に次々と浮かぶ文字の羅列。

 だが、その中にこの地獄とも呼べる状況に合う言葉は存在しなかった。


 一夜にして乙女の部屋には、幾つもの死屍累々の山が築き上げられていた。

 その山に囲まれた中心に乙女は座り、膝に顔を埋めていた。

 ……手に血で真っ赤に塗られた包丁を持って。

 それを意味する事は──。


「乙女ちゃんが……」


 この状況を乙女が。


「乙女ちゃんが……これをやったの……⁉︎」


 乙女が、この状況を作り出したという事に他ならない。


「……」


 丘夏の信じられない、という思いが籠った声に乙女は反応し、ゆっくりと顔を上げた。

 そこで丘夏は思わず息を飲んだ。

 何故なら乙女の頬には握られた包丁についているのと同じ液体がべっとりと付いていたから──ではない。

 乙女のその瞳が虚ろで何も映してなかった……つまり生気のない、死んだ目をしていたからだ。


「……そう。これは私がやった」


 その場で立ち上がり、乙女はぽつりとそう答える。

 手に握った包丁から液体が滴り落ちる。


「どうして……」


 震えた声が喉から出る。

 嘘だ。こんな事があるはずがない。

 丘夏は目の前の状況を未だに信じられないでいた。

 これは夢なのだと、現実逃避をしていた。

 けれど、いくら頬をつねっても痛いだけだった。


「どうして……どうして……!」


 そう、これは現実なのだ。

 丘夏はようやく状況を受け入れた。

 しかし受け入れて尚、信じられなかった。

 一体誰が信じられようか。

 これが、これが──。




「どうして料理をするだけでこうなるんだよおおおおぉぉぉぉっ⁉︎」




 ──料理をしただけで調理場キッチンを地獄へと作り変えた、などと。


 丘夏は全力で突っ込んだ。

 本当にどうしたらこんな事になるのだろうか。


「わ、私はただ料理をしていただけ」

「これは料理じゃない! 料理じゃないよ! 虐殺の間違いだよ!」

「バハムート、呼べる?」

「確かに召喚の儀式みたいだけど、呼べないよ! これでもし呼べたとしても出てくるのは悪魔とかそういうのだよ!」

「そんなに褒められても……困る」

「褒めてないよ!」


 どこぞのしんちゃんだ、照れるところじゃないとひとしきりツッコミを入れた後、丘夏は調理場じごくを指差す。


「そもそも乙女ちゃんが作ってたのはカレーだよね⁉︎ カレーの要素がどこにも見当たらないんだけど⁉︎」

「一応鍋に……」

「鍋に?」

「破裂した人参が……」

「よーし! 今から丘夏君によるお料理教室始めちゃうゾ!」




 丘夏君によるお料理教室、(急遽)開催☆

 四月から大学に通うため、引っ越しをしたのですが……。

 引っ越し先の部屋が『204号室』(丘夏と同じ部屋)だったのは本当に驚いた。

 ならば隣には乙女ちゃんのような美少女が……と期待して挨拶しに行ってみれば、優しいおっさんが笑顔で迎えてくれました畜生。

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