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しもつけそう。  作者: 白菜
閑話2 お互い様
19/61

容疑者は出来心だったと供述している

「それで鴻野山君。……どうして出会ったばかりの女の子にセクハラなんてしたのかな?」

「すいませんでした」


 手足を縄で縛られ砂利の上で正座させられながら、呆れ顔の穂花の前で丘夏はそう答えた。

 あの後、土下座を続ける丘夏にそれを女の子が無言で見下ろすという傍から見れば異様な光景に、救急箱を持って来た穂花も唖然。すぐに事情も聞き出され、現在いまに至る。

 個人的な感想を言わせてもらうなら手足を縛ったのは非常に良い判断だと言わざる得ない。

 

「いや、わたしはどうして女の子の胸を揉んだかって聞いてるんだけど……」


 どうして胸を揉んだか。

 その問いに対して、丘夏はこう答える他ないだろう。


「おっぱいを揉みたかったんです!」

「……正直過ぎて、ここまでくると清々しいね」


 がっくりと肩を落とす穂花。

 その横にいる、無言を貫いていた女の子が穂花の袖をちょいちょいと引っぱって言う。


「私は気にしてない。丘夏を許してあげて」

「うーん……そうは言っても女の子にセクハラ働いてお咎めなしってわけには……」

「すいません! 何でもするので許して下さい!」


 擁護をしてくれた女の子に乗っかり、ここぞとばかりに頭を下げる。

 引っ越し一日目で警察のご厄介になるなんて洒落にならない……!


「本人もこう言ってる」

「周りの掃除しますし、靴だって磨きます! 何なら足だって舐めますよ!?」

「足は舐めなくてもいいよ、というか鴻野山君には尊厳プライドがないの……?」


 尊厳プライド? どうして穂花はここで豚の餌の話なんてしているのだろうか。

 分かってはいたけど、まったくおかしな人だ。


「ここまでなり振り構わずに謝られて許してあげないわけにもいかないよね……」

「本当ですか!?」

「ただし」


 付け加えるようにして、穂花は指を立てる。


「次はないからね? そこは重々承知するように」

「は、はい……」


 穂花に低い声とナイフで脅され、丘夏はおずおずと返事をした。

 ……次やったら何をさせられるのだろうか。


「それともう一度きちんと乙女ちゃんに謝る事」

「乙女ちゃん?」

「鴻野山君がセクハラしたその女の子の事だよ。……君は名前も知らない女の子にセクハラするような人間なのかい?」

「この状況じゃ否定出来ませんね……」


 ついに穂花に溜め息をつかれてしまった。

 初日から随分と痴態を晒してしまってる気がする……。

 これも全ては胸を揉んだ右手が悪いのだ。だが、あのおっぱいは予想通り柔らかくてふわふわとしていた……。重量があって揉み応えもばっちりで……。


 ……前言撤回する。ナイスだ右手。

 実にいい仕事をしてくれた。


 だが次は絶対しないようにしよう。多分、次は許してもらえそうにない。

 その証拠に、穂花が目の光彩の消して、切れ味の良さそうなナイフをぶんぶんと振り回して……。



「何か邪な事を考えなかったかい?」

「いえ、まったく」




 目の前で地面に刺さったそれを見ながら丘夏は真顔で首を振った。

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