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しもつけそう。  作者: 白菜
第二話 下野荘の怪物
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ねこちゃんパンツもあった

 それは休日、ゴミ出しに行ってきた日の事だった。

 丘夏は下野荘に住む、怪物モンスターに出会った。




「あれ? おっかーもゴミ出しに来たのか?」

「そうだよ。結構、ゴミが溜まっちゃっててさ」


 丘夏の頭上から聞こえる高く、幼い声。

 手に持ったゴミ袋を放り投げなげてから、丘夏は怪物に手を差し出す。


「はい、ゴミ袋ちょうだい」

「おおっサンキューだぞ、おっかー!」

「いつも言ってるけど、おっかーはやめてくれない?」

「あっはっは! 拒否するぞ!」


 差し出されたゴミ袋を受け取ると、丘夏はさっきと同じようにゴミ袋を放り投げた。

 勿論、その後ゴミ袋を網で覆うのは忘れずに。

 一息ついて、丘夏は怪物の方を見る。

 いや、見上げるという表現の方が正しいか。

 何故なら、怪物の大きさは二メートルを優に超えているのだから。


 205号室の住民。

 仁井田にいたかおる、ゆあん。


 見上げるような巨大な体躯に、固太りのかっちりとした肉付きの手足。

 貫禄のある顔つきだが、まだあまり髭は生えていない。

 どこかの武人か何かと思わせるような薫の雰囲気に丘夏は二ヶ月経った今でも慣れていなかった。

 というか、素で恐ろしい。

 そんな魔人とも呼べる薫の肩に乗っているのはその妹のゆあん。

 薫と対照的な小柄な体躯に、ぴょこぴょこと揺れるツインテール。

 幼く見えるが、全体的に蠱惑めいた雰囲気を感じさせる。


「仁井田さんも何か言って下さいよ」

「……」


 一応、言ってみたものの薫は案の定、うんともすんとも反応しない。

 薫は無口……というよりそれを通り越して一言も喋らないのだ。

 前にこれに対して丘夏がゆあんに訊ねてみたところ、兄ちゃんはゆあんの付属品みたいなものだから喋る事を必要してないんだよ、と酷い事を言っていた。


「むっ、この呼び方の何が気に入らないのだおっかー! 響きが良くていいと思わないのか!」

「寧ろダサい」

「兄ちゃん、チョップ!」

「痛ぁっ⁉︎」


 頭頂部に鈍痛が走り、痛みで思わずその場でしゃがみ込む。

 今のはかなり痛かった……!


「何するんだゆあんちゃん……じゃなくて仁井田さん!」


 いや、命令したのはゆあんなのだからゆあんを怒るべきか。

 ……どっちでもいいか。


「おっかーがゆあんのセンスにケチつけるのが悪いんだぞ!」

「だからって人を殴らないでよ!」

「殴ったんじゃなくてチョップだぞ! それにやったのはゆあんじゃなくて兄ちゃんだ!」

「屁理屈言うなよ! くまさんの下着なんてつけてると中身まで子供なるの⁉︎」

「なっ……! 何でそれを……!」

「この前、ベランダで見た」


 ゆあん達の部屋は丘夏のすぐ隣なのでたまに下着が見えてしまう事があるのだ。


「おっかー……!」


 羞恥のあまりか耳まで赤くしているゆあん。

 まずい。ゆあんがキレる。

 このままではゆあん(薫)による制裁を受けてしまう。

 何とかして宥めなければ、と考えた丘夏はゆあんを褒める事にした。

 褒めちぎれば、怒りも収まるだろう。

 そうしようと、丘夏は思いついた言葉を口に出す。




「えっと……パンツ、可愛かったよ!」




 ──何がいけなかったのだろう。

 顔に回し蹴りを喰らった丘夏は後にそう語った。

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