表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
しもつけそう。  作者: 白菜
第一話 隣の住民はドジを拗らせている
1/61

困った時はそれで通ると思っている

 爽やかな朝。

 丘夏は少女と目があった。

 それはまったくの偶然だった。




「おはよう、丘夏おかなつ


 少女は大きな欠伸をしながら気だるげに言うと、再び大きな欠伸をした。

 そんな事をしていたら可愛い顔が台無しだな、と丘夏は半分思い。

 それはそれでアリだな、と丘夏は半分思った。

 結論。美少女は多分、何をしていても可愛い。


 203号室の住民。

 那須野なすの 乙女おとめ


 ゆるく三つ編みにした長い碧色の髪に、琥珀色に輝く瞳。すらりとした細い手足。

 何より目立つのは衣服がはち切れんばかりに存在を強調しているたわわなな胸部。

 那須野乙女は名前に恥じる事のない、可憐な容姿をしている。

 言ってしまえば美少女だ。

 すごくすごく美少女だ。

 丘夏好みの美少女だ。


「おはよう、乙女ちゃん」

「ん。丘夏も今から学校に行くの?」


 乙女は瞼をゴシゴシこすると、手に持った鞄を突き出してきた。

 同じように丘夏は鞄を突き出してみせた。


「そうだよ。なんなら一緒に行く?」

「……襲わない?」

「乙女ちゃんは僕の事を何だと思ってるの……?」

「丘夏」

「ならいいや。兎に角、一緒に行こうよ」

「わかった」


 ツッコミ所のある回答だったが、丘夏はそれをいつものようにスルーした。

 基本、乙女との会話はこんな感じになるのでスルーするか、流すのが一番いいのだ。

 乙女にも、乙女と会話する者にとっても。

 アパートの階段を降りてく途中、乙女がまた大きな欠伸をした。

 丘夏がジト目で睨んだ。


「乙女ちゃん、もしかしてまた夜更かししたの?」

「……してない」

「いや嘘でしょ。そんなに眠そうにしてたらバレバレだから」


 また朝までゲームをしていたのだろうか。

 肌に悪いし、不健康だから止めろと大家さんに小言を散々言われているというのに……。

 仕方ないなぁ、と丘夏は嘆息した。


「それに……頭」


 言いながら、ちょんちょんと頭を指差してやる。

 首を傾げて乙女が自分の頭に触れる。

 「あ」と声が漏れた。

 ようやく気付いたのだろう。

 乙女の頭。そこにはパジャマに着替えた際に被ったと思われるナイトキャップがあった。


「取り忘れるなんて、よほど寝ぼけてたんだね」

「……こ、これは違う」

「違う? 何が違うの?」


 説明してみろ、とニヤニヤと丘夏は笑う。

 動揺し、赤面する乙女はしばらくの沈黙の後、口を開いた。


「これは……」

「これは?」




「……最近のファッション」

「苦し過ぎるでしょ、その言い訳……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ