はい、私が生徒会長ですが。
初投稿だったりします。駄文ですいません。
桜舞う4月…始まる、私の高校生活が。
淡い桜色の髪を春風に靡かせた彼女ーー池田鈴波は期待と不安の混じった瞳でまるで城壁のような校門を見上げる。
しばし逡巡した後、意を決したように一歩を踏み出す。
柔らかな日の光が、彼女を祝福しているようだったーーーーー。
(ーーーっ、ついに来た!私の学園!私の舞台!絶対、絶対手に入れてやる!待ってろ攻略対象ども!!)
池田鈴波は、とてつもなく興奮していた。
何故ならここは前世で彼女が愛していた乙女ゲーム、【FirstLOVE〜僕は君と恋をする〜】の舞台、私立篠宮学園高等部に酷似しているからだ。
FirstLOVE…通称初恋はそのまんま、美しい男子と恋をする恋愛シュミレーションゲームだ。
難易度は至ってイージー。話の大筋も使い古された手垢がつきまくった代物。
しかし、スチルの絵の美しさと、声優陣の豪華さ、そして全てのキャラクターを攻略した後に見ることが出来る【大団円モード】が非常に素晴らしい出来で、イージーだからこそ根強い人気を誇っていた。
池田鈴波は所謂前世の記憶と言うものがあり、ここが初恋の世界に酷似しており、なおかつ自分が主人公そっくりなことに気付いた時は狂喜乱舞したものだ。
(現実であんなイケメンに会えるなんて…夢みたい!絶対落として見せる!)
そんな彼女が前世で一番気に入っていたキャラクターがいる。
【千堂 要】黒い髪に赤みがかった目。一言で言ってしまうなら…俺様生徒会長というところだろうか。
イージーなこのゲームの中で、最も難しいだろうと言われている彼のルート。
攻略するためには、入学直後からこまめにイベントを起こし、好感度を上げる必要がある。
(こうしちゃいられない!確か入学式が始まる前に重要なイベントがあるのよね。たしか中庭だったかな…白い猫が主人公の前に飛び出して来て……)
「にゃあ。」
鈴波の目の前に、真っ白な猫が飛び出して来た。
(きたきた。これでついて行くを選択するとイベント発生だよね?)
「どうしたの?ねこちゃん?」
「んにゃっ!」
「あー!待ってー!どこ行くの?」
(よっし!待ってて!千堂様ーー!!)
そのころ、生徒会室前。
「会長ー!会長、どこですかぁ〜!」
「うるさいよ副会長。いったい何があったって言うのさ。いつにも増してオドオドしちゃって…」
「そ、それが会長がいないんですよぉ〜!もう入学式始まるって言うのに!」
「またか…あの放浪癖なんとかならないかな。そこ以外は有能だって言うのに本当残念な人だよね。」
「か、会計さん…なんか黒いもの漏れてますよ?背中に般若が見えます…。」
「…君も大概残念な頭だね…。一生喋れなくしてやろうか?」
「でっ、では僕会長探してきますね!」
「はぁ…どうせ君じゃ連れ戻せないから僕もいくよ。どうせ中庭で寝てるんだろう。」
校舎のちょうど死角になっている部分、中庭の木の下に彼はいた。
木の陰になってよく見えないが、どうやら横になっているようだ。
(ん?ゲームのスチルにそんなのあったっけ?)
少し疑問に思いながらも、これはイベントだ。クリアしなければならない。
「んにゃっ!」
腕に抱いていた猫が会長目掛けて走っていく。
(よし、ここで「あっ!ねこちゃん!」)
「あ「あっ、ねこちゃん!
それに会長も〜!やっと見つけました!」
しかし、彼女が言うはずだったセリフは別の誰かに横どられた。
(くっそ、誰だよ一体!もう入学式始まるっていうのにまだいるなんて!こんなのイベントに無かったわ!)
苛立ちを抑えて侵入者を睨む。一体どんな奴かと顔を確認すると
「……!?生徒会長!?」
彼女のセリフを横取りしたのは彼女の推しキャラ、千堂要だった。
(しかも、後ろにいるのって副会長!?な、何このイベント!こんなの無かった!聞いてない!)
「ひっ!ご、ごめんなさい!ぼぼぼ僕は生徒会長じゃないです!副会長です!」
「…は?」
目の前の男はどこからどう見ても千堂要なのに自分は生徒会長では無いという。
しかも、一人称は僕…確かゲームでは俺だったはずだ。
それにこんなにオドオドしていなかった。鈴波に睨まれただけで軽く涙目になっている。
(え、じゃあ千堂要が生徒会長じゃないなら、誰が…)
「千堂、百瀬、一体何のようですか?」
凛とした声が背後からかかる。
「あ、会長ー!入学式始まっちゃいますよ!」
「せっかく探しに来てあげたのに…その言い草はなに。」
(え、会長?千堂でも百瀬でもないなら、一体誰が…)
彼女は背後の人物を確認するため、急いで振り向く。
(嘘でしょ、もしかして…あの声は)
「おや、それは失礼しました。つい寝過ごしてしまったようです。」
振り向いた先にいたのは、
「あなた…生徒会長…?」
「はい、私が生徒会長ですが。」
主人公のライバルキャラの一ノ瀬理沙だった。
【一ノ瀬理沙】とは…ライバルキャラ。紺色の髪に黒い目。ザお嬢様。千堂の許嫁で主人公を疎ましく思い、いじめる。
(嘘だ…こんなの認めない…)
遠くなる意識の中で、彼女の凛とした声が私をよんだ気がした。
読んでくれてありがとうございました。
誤字脱字の指摘、感想などどしどしお待ちしております。
おまけ
【池田鈴波】桜色の髪に、ピンクブラウンの瞳。逆ハー目指してるが、嫌な子ではない。ツッコミ気質。
【百瀬涼介】蜂蜜色の髪に、ブラウンの瞳。本来なら生徒会副会長。腹黒。
リクエスト等あれば続き書くかもです。勢いで書いたので細かい設定はないです。