楽しい昼食時間
作中に出てくる中華そばは高山ラーメン仕様です
グラウンドから二年生と一緒に校舎に戻り、ランチルームに向かう俺とゆう。扉を開けると厨房からの美味しそうな匂いでランチルームが満たされ、空腹を告げる音が後ろから聞こえてきた。手洗い場でしっかりと手を洗ってから厨房のそばのホワイトボードに貼られた『昼食メニュー』を先に居た燐や戈炎たちと眺める
音流
「ちょいと乗るよ」(のし
和貴
「って、弥野先輩」
音流
「呼び捨てでエエけど。お、中華そばじゃん!」
ゆう
「僕はハンバーグ定食にしよう」
燐
「水ちゃん、グラタンあるよ」
水
「ほんとッスか!師匠は何にします?」
戈炎
「カレーだ」
帝
「私は何にしようか」
和貴
「俺はカツ丼定食で良いな」
ルゼ
「私はスクランブルエッグとサンドイッチとサラダとスープを頼む」
続々と調理員さんに注文をする戈炎達。ルゼはかなり細かい注文をしてるけど、調理員さんは「嫌いなものがあっても食べるのよ?」とルゼに笑みを見せた。朝食を食べてる時にサラダに入ってたトマトだけ残してたのを見てたけど、あいつトマト嫌いだったのか。調理員さんに言われてルゼは「むきゅー・・・」と縮こまってる
戈炎
「好き嫌いは良くないぞ、ルゼ」
戈炎に更に言われ、ルゼは「燐〜、戈炎がいじめりゅぅ〜」とふにゃふにゃと燐に泣きついた。ルゼはときどき大人っぽい仕草をしたりしてるけど、なんちゅーか、今はお子ちゃまだなぁ。言うと怒るから言わないけどな。燐に泣きついたルゼは燐と水に「よしよし」となでなでされてる。神施蝋先輩はご飯と玉子焼きと漬け物と味噌汁を頼んだけど、それはそれで少なくないか? 黒月さんは豚カツ定食という極めて普通の昼食を頼んでた
あらためて思うけど、この学校の自由度の高さは普通じゃないよな。朝昼晩の三食も結構品数あるし、校則もほとんど無い。まあ、この高校は『ある仕事』を請け負ってる分、一般の高校との差は当たり前か。入学希望者が少ないのも『ある仕事』から一般人に敬遠されてるのが原因だし、この高校に入学するのは『訳あり』の人たちだと聞いた覚えがある
仗美
「和貴くーん、出来たわよー」
和貴
「あ、はーい」
調理員さんに呼ばれて思考が現実に戻される。カウンターに向かって調理員さんからカツ丼定食を載せたお盆を受け取り、テーブルに戻る途中でゆうとすれ違う。先にテーブルに戻った俺は手を合わせ、ホカホカと湯気を立てているカツ丼に箸を入れて一口頬張った。分厚いカツにふんわり卵が絡み、タレが染みたご飯が美味い
和貴
「うま〜♪(*´ω`*)」
ゆう
「なんつー顔してんだよ」
和貴
「このカツ丼マジうめーよ。カツは分厚いし、タレが染みたご飯なんて最高だ!」
ゆう
「ちょっとくれ」
和貴
「ハンバーグと交換な」
ゆう
「全部か!?」
和貴
「んな訳あるか!」
主食を渡してどうしろってんだ、ご飯無しはキツいだろ。ゆうのご飯茶碗にカツ一切れと卵を入れ、代わりに一口ぐらいの大きさに切ったハンバーグを貰う。ご飯の上に載せて一緒に食べると、ハンバーグの肉汁がジュワーッと口一杯に広がっていく
和貴、ゆう
「「うっめー!」」
水
「トマト残したらダメッスよ」
ルゼ
「うっうぅー・・・( ┰_┰) 」
燐
「ほら、がんばって」
帝
「肉汁が溢れるこの瞬間!」
戈炎
「福神漬けの食感がたまらん」
昼食を堪能する一年生たちの様子に、調理員の仗美と那醉はクスッと笑っていた
おまけ
『高山ラーメンってなーに?』
高山ラーメン(たかやまラーメン)とは、主に岐阜県高山市で食べられているラーメンの一種。飛騨ラーメン(ひだラーメン)と呼ばれることもある
量はほかのラーメンと比べて少なめである
スープは、他の御当地ラーメンのような丼の上にたれを用意してそれをスープで溶く作り方ではない。スープとたれを一緒に混ぜて、寸胴で煮込む。スープは鶏がらを中心に、鰹節、野菜をベースにしたもの。たれは醤油、味醂などをあわせたものである
麺は平打ちで細く、縮れが強い。加水率は、28パーセント〜32パーセントと低い低加水麺である
ほとんどの店では、具に葱、叉焼、メンマなどを使う
「高山ラーメン」なる呼称は他地域のものであり、高山ラーメンの地元では「中華そば」と呼ばれます
『加水麺ってなーに?』
小麦粉に水を加えた麺のこと
通常の加水率(麺を作る際に小麦粉に混ぜる水の割合)は、一般的には35%程度である