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each story  作者: 流雨
6/7

コンビニ

世の中には異性にモテるタイプとモテないタイプの二つがある。というか居る。モテるやつは顔もいいし、勉強も出来て何故か運動までできる奴が多い。それでさらに性格も良い。


モテない奴は顔が悪くて勉強もイマイチ、さらに運動神経も微妙というもう本当に微妙としか言いようがないくらいに微妙である。そしてこいつらは大体根暗というか。多分だけど、自分に自信がないんだろうな。


何か知らないけど両極端なんだよな。デキる奴はできる。デキないやつはできない。全部が普通、平均の真ん中ですー、みたいなのとか、これだけはずば抜けてるけど他のは全然だめー、みたいなやつは以外に居なかったりするもんだ。

本当に神様は不公平だと思う。


オレは正直言って、もうぶっちゃけて認めるけどモテないタイプだと思う。うん。オレのどこら辺がダメなのか上げてみようか?まず顔が微妙だろ、成績悪いだろ、運動も並程度だろ。そして何よりの欠点が友達と馬鹿やってる事だと思う。


オレがモテないのは、こんな馬鹿とつるんでるからだと思いたい。




「くっそ…」


日が暮れてあたりがすっかり暗くなり、電灯が点き始める頃。オレは悪態をつきながら、コンビニの入り口からスパイみたいに中を窺っていた。


時間が時間だから、表に面している道路を通り過ぎる車も少なく、もちろんこの大きくもないコンビニに寄って行く車も今のところ見当たらない。駐車場には灰色のワゴン一台しか停まってない。けどそのワゴンすらも、多分店員がバイトが誰かの車だろう。


そんな、もはや閑散としたって言っても間違いじゃないくらいの状況を作り出しているコンビニの入り口、正確にいえばその脇で、オレは中に入るのをめちゃくちゃ渋っていた。別に一人でコンビニに入るのが嫌だ、とかそんな女子みたいな理由じゃなくて。いや今時の女子が一人で入るのを嫌がるのなんてトイレぐらいじゃないのか?一人じゃ寂しいからとか言って。そんで断じてオレはそんな理由で嫌がってる訳じゃないからな……いや、似た様なもんかも知れない。


「早く入れよ」


あ、後ろでやたらとニヤニヤしながらオレを急かすのはオレの友達(仮)だ。仮っていうのは、オレが非常にコイツにイラついてるからだ。友達を辞めようかどうしようかって位にイラついてるからだ。…ちょっと言い過ぎたかもだけどまあいいや。


「っせーな今行くだろ」

オレは上目遣いに恨みを込めて睨んでやるが、

「って言ってからもう五分も経つんだけど?お前のもうちょっとって何分なの?」

そいつは全く気にした様子も無く言う。

「もうちょっと待て!」


くぷぷ、とかかなり腹の立つ笑い方をする。こいつ、自分はやらないからって楽しんでやがるな。しかもそこそこ整ってる顔で馬鹿にした様な、と言うか完全に馬鹿にしてる顔でオレを嘲笑ってくるのでもう本当に腹が立つ。



ネタバラシすると、学校からの帰り道(正確に言えば、学校から帰る途中でマクドで食ってきた帰り道)に、このコンビニをたまたま通りかかった時、いきなり二人で罰ゲームやろうって事になったんだ。ほんとうにいきなり。言い出したのは勿論悪友だ。こいつは悪巧みだけは得意だからな。


で、その罰ゲームの内容が「ジャンケン最初に五回連続で負けた方がコンビニに行って『ふう、ここまで来ればもう大丈夫だな…危なかったぜ』とどこかの主人公風に言わなければならない」ってやつだった。それもしかして呟くやつのネタ?って思ったけど口には出さなかった。


オレがその話に乗ったのは、ほらあれだよアレ。男子高校生のノリ?って言うか若気の至り?って言うか。聞くだけだったら「何だそんなの簡単じゃん!しかもこいつが負けたらオレはそれ観れるんだよな面白え!」ってなるじゃん。とにかくそんな感じで「おうやろうぜ!」ってなった。ジャンケンは完全に運だしね。


「おっしじゃあやるぞ!」

「最初はぐー」

「最初はぱー。っしゃ一勝!」

「おいお前それは無えだろ!」

「ただのジャンケンじゃ面白くないだろ?」

「それならそうと最初っから言っとけよ!」

「悪い悪い。冗談だって」

「はあー…じゃあ気を取り直して!最初はぐー!」

「「じゃんけんぽん!」」



で、負けた。互角だったんだけど負けた。五回連続負けたらって条件だったから何回やったかは覚えてないけど、多分互角くらいだったんじゃない?オレが四回連続で勝った時も

あったから。

まあそれはいいとして。そんな男子高校生ノリで、今オレは罰ゲームの実行場所であるコンビニの前で躊躇してる訳だ。


「あーあ…マジで?マジでやんの?」

「何ウジウジしてんだよ。男なら潔く行けよー」


まだ動こうとしないオレに悪友がけしかける。


「ここで行かなかったら男じゃないぞー」

そうかも知れないけどさ。確かに約束を守らないのは男として駄目だけどさ。

「でもここで行くのも男としてどうなんだよ?」


最初に罰ゲームを持ちかけられた時は「面白そうじゃん!」って思ったけど、負けていざ自分がやるとなると、いきなり恥ずかしくなるよな。ねえマジでやんの?夜のコンビニに駆け込んで「ふう…危なかったぜ…」って、そんな中二病全開の台詞吐かなきゃなんないの?


つーかそんな事したら、絶対中の店員さんに鼻で笑われて、それこそ男としてのプライドがズタズタにされると思う。


「まだ言うのかよ!さっさと行けよ女々しいぞ」

「そんな事言うんだったらお前が行ってこいよ!」

「俺は負けてないしー」


特に理由は無いけど小声で、お前がいやお前がと小突き合う。

「ちょっと入って言うだけだろー?」

「でもだな、でもだなあ!」


オレが渋る理由はもう一つあるんだ。

それはこのコンビニの店員が美人だっていう事。

オレは醜い小突き合いを一旦やめて、また煌々と灯りが漏れるコンビニの中を覗き見た。

殆ど無人、というか雑誌コーナーに灰色のスウェットを着たおじさんっぽいお兄さんがマンガを立ち読みしているの以外は客が居ない店内に、暇そうにレジで頬杖をついている、これは正真正銘のお姉さん。遠目だからあんまり見えないけど多分大学生くらいだ。


黒くて長い髪を後ろで一つに束ねてる。髪型的にはそんな気を使ってない、むしろ適当に括っただけに見えるのに、つまらなさそうな横顔はそのマイナス面をプラスに覆す程美人だ。っていうか普通にタイプなだけだ。オレ的には美人なだけで、別に絶世の美女でもないし、そこら辺の人気アイドルと勝負しても多分負けるだろう。でも可愛い。オレ的に。


そしてオレは、そんな好みのタイプの人の前で中二病ごっこをしなきゃならない。恥をかかなきゃならない。絶対嫌だ。


「店員が冴えないオッサンとかならまだしも…なんで美人さんなんだよ。美人さんに引かれたらもうオレ、この店行けねえよ」

「今まででもそんな行ってないだろ、お前」

「……たまに帰りに寄り道してるし」

「たまーにね。二ヶ月に一回くらいね」


こいつの言うとおり、今日はたまたま寄っただけで、このコンビニは学校の近所では無いし。何よりもっと近くにマクドと他のコンビニがあるからね。だから別に彼女の前で馬鹿やってドン引きされてこの店二度と利用出来なくなっても良いんだけど…いややっぱ良くない。


「なあ…罰ゲーム、明日に伸ばすとか無理?」

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