第九話 墓
コオロギの鳴き声がやたらと頭に響く。
この時間になるともうだいぶ涼しい。
風も多少強く吹いてるのも合って、なんだか夜の一人歩きは怖かった。
得体の知れない微弱な恐怖を拭い去ろうと、小走りに家を目指した。
「ただいまー。」
「おかえり、修二。遅かったわね。」
「ちょっと遊んでたから。」
「ああ、和弘君だったっけ。」
「そう。」
二階から物音が聞こえる。
「祐兄、今日はもういるんだ。」
「さっき帰ってきたばかりよ。なんだか元気がなかったけど・・・。」
「ふーん。」
俺はそれだけ言うとさっさと自分の部屋に向かった。
なにかやってるんだろうか、兄貴の部屋からやたらと物音がする。
俺の部屋は階段を上がって廊下の突き当たりだ。その通りに兄貴の部屋がある。
「祐兄うるさいよ。何やってんの!」
俺はちょっと大きめな声で言った。
返事はなく、それでも尚がさごそと何か物音を立てている。
「祐兄聞いてるんかよ。うるせーよ。」
「・・・・修二か。おかえり。」
今頃気づいたのだろうか。
もう疲れていたのもあって俺はこれ以上しゃべりかける事なく部屋に篭った。
兄貴のやつ何やってんだろ。
「修二。」
俺の部屋のドア越しに兄貴が語りかけてきた。
「なにー?」
「たまには部屋の整理ぐらいしろ。」
いきなり小言か。
「はぁ?なんでいきなり・・・。訳わかんねーってーの。」
「・・いや。俺も部屋の掃除をしてたからな。」
「そうなんだ?」
「・・・・。墓参り行ったか?」
あ・・・・すっかり忘れていた。
「い、行った行った!花は添えなかったけど、拝んできたよ!」
「・・・そうか。」
昨日からやたらと兄貴がうるさいので思わずそういっておいた。
明日・・・ちゃんと行こう。
「父さんの墓、何かあったか?」
「何か?いや、、、花が添えてあったくらいだけど・・・。」
俺はとっさに取って付けたようなうそを言ってみた。
兄貴と母が昨日墓参りに行ってるならば花くらい添えてあるはずだからだ。
「・・・そうか。」
それだけ言うと兄貴はまた部屋に篭った。
父さんの墓に何かあるんだろうか。
明日行ってちゃんと見てこよう。
今日はもう眠い。
母さんが兄貴元気がないって言ってたけど・・・。
父さんの墓が何か関係があるのかな・・・・・・。
まぁ・・・明日にでも・・・見てくればわかる・・・。