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第六話 9/5その6

今までどんな女性にも興味を抱いた事などなかった。


周りが騒げば騒ぐほど、僕はそれにどんどん興味を持てなくなった。


そして女性など僕には頭でも力でも勝てない下等な生き物だ。


男性にしろ僕を超える人間はそうはいないだろう。


そう思って生きてきた。


僕は・・・変なのだろう。


でもそれを表に出した事はないし、出そうとも思わない。


それを言えば周りから下等な生き物扱いで見られるのは僕だということがわかっていたからだ。









「うお、さすがに早いっすね。」


僕の後輩が後ろから見て何か言っている。


「・・・渡辺君か。」

「やーっぱ長谷川さんは何やらせてもすげーっすよねぇ・・・。」

「いや、仕事が簡単なだけだよ。」

「それ・・全然謙遜に聞こえないっすよ。」

「ははは。」


当たり前だ。僕にとってこの仕事など本当に簡単な物にすぎない。

しかし、社会の輪を乱してまで僕を確立するつもりもない。


「それは冗談だ。さて、そろそろ飯でも食いに行くか。渡辺君も来るか?おごるよ。」

「わーぉ、まじっすか!行きます行きます!」

「あー渡辺だけずりーぞ。長谷川さん俺も混ぜてくださいよー。」

「いいよいいよ、加藤君もおいで。」

「やった、ありがとーございまーす!」


信頼と実績、地位と名誉、敬われる事の気持ちよさ。

僕は今の地位を壊したいとも思わないし、ここで終わるつもりもなかった。

だから表では人当たりがいい人間を演じる。

演じる事に苦などはない。むしろ少し楽しいくらいだ。


「長谷川さんって完璧っすよねぇ・・。」

「なにがだ?」

「仕事ができて、お金持ちで、その上優しいし、飯おごってくれるし!」

「渡辺は飯おごってもらえば誰でも完璧なんだろ?」

「ち、違うってーの。長谷川さんは別格だっつってんの!」

「はは、そんなことないよ。誰だっていいところはあるし、悪いところもあるもんだって。加藤君にしろ、渡辺君にしろ、いいところが沢山あるだろう。」

「いやー・・そうっすかねぇ。」

「長谷川さんは悪いところ見つからないっすけどね。」

「僕にだってあるよ悪いところ。」


お前らとは違うって内心思ってるところとかね。


「なにがあるんすかぁ?」

「ふむ、そうだな。強いて言えば」

「「言えば?」」

「彼女がいない点かな。」

「なんすか、そりゃ!そんなの俺だっていないっすよ。」

「ごめ・・俺いるわ。」

「加藤・・・お前、今絶対長谷川さんに嫌われたな。」

「ええ!?ちょっと、まじっすか!?」

「はは、そんなことはないって。彼女がいるのはいいことだよ。」

(加藤じゃ下等な彼女だろうが・・・加藤だけにな。なんて言えないな

「それに僕の場合、特別彼女を欲してるわけでもないしね。」

「ぇええ!?まじっすかぁ!?彼女ほしくないんすか?」

「うーん、なかなかそう簡単に異性を好きにならないんだよ。」

「はー・・・そうなんすかぁ・・・なんかかっこいいっすね。」

「うんうん、俺みたいに妥協しちゃうとロクな彼女ができないってこった!」


こいつ、わかってるじゃないか。


「そんなこと、彼女に失礼だぞ。それは妥協じゃない。お互いが好き合ってるんだからすばらしい事だよ。」

「そーっすかねぇ・・・。」

「やーっぱ長谷川さんは考え方が違うよなぁ。」



そんな下世話な会話をしながらふと窓際を見ると彼女がいた。



どうやら友達と一緒になにやら楽しそうにじゃれあいながら食事をしている。


「あ、橘さんだ。」

僕は思わず加藤の声に反応した。


「そうだね。彼女がどうかしたか?」

「彼女、きれーっすよねぇ。美人だし、優しいし、気が利くし、頭もいいし・・・はぁあんな子が彼女だったらなぁ。」

「ばーっか、お前じゃ到底無理無理!俺だって橘さんが彼女になってくれるんだったらなんでも投げ出しちゃいますよ!」

「おいおい、渡辺君そりゃいいすぎだよ。」

「長谷川さんはどう思うんすか?橘さんの事。」


橘さん・・・・

容姿端麗、頭脳明晰、この上なく完璧に近い女性だ。


「うん、すごく仕事もできるし、美人だね。」

「やーっぱそーっすよねぇ!」

「長谷川さんも彼女の事、狙ってるんすか?」

「ははは、まさか。」


まさか。

いくら彼女が完璧でも僕が自ら異性に恋愛感情を抱く事などありえない。


「橘さんみたいな人はどんな男に興味があるんだろうなぁ。すっげー気になる!」

「そうだね・・・・。」

「あ、でも彼女、フィアンセがいるって言ってましたよ。」


・・・・・・何。

そんなのがいるのか。

まぁあれだけ美人ならフィアンセの一人や二人、いない方がおかしいか。


「そうなのか。残念だったね、二人とも。」

「長谷川さんこそ、残念だったんじゃないんすかぁ?ほ ん と う は!」

「ばかいえ、僕はそういうのは興味ないって言っただろう。」

「ははは、そーっすね。」


予鈴が鳴る。


「ありゃ、もー終わりじゃないっすか!俺戻ります。長谷川さん、加藤、またなー!」

「俺も戻ります。長谷川さんまたです。ごっそさんでした。」

「うん、しっかりな。」


僕は今日の仕事を午前中に片付けてしまったし、午後はフリーになった。

この会社のいいところは実力次第で時間にも余裕が作れる所だ。









会社を出て時間を見る。

まだ14時前・・・。

例のスポーツクラブにでも行って軽く汗でも流しに行こう。

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