表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/62

第四十九話 記憶の螺旋

「君とは結婚できない。」


祐二のその言葉ばかりが頭の中を駆け巡る。



あの直後はその事ばかりでなにも考えられなかったが、今は少し落ち着いてる。

おじいちゃんに心配をかけないように家の中ではいつもどおりの態度。

自室に篭っては頭を悩ましていた。



幸恵が言ってた。

祐二は自分の過去に関する何かを見つけた。そのせいで祐二は失踪した。

祐二の過去・・・。


なんだろう。人に言えないような事?

それは私にも関係する何か?


祐二はきっと私の事を想って、あのような態度で接したんだと・・・思う。

ということはつまり、祐二の過去は私・・・もしくは私に関係する何かと関連づいてるという事なのだろうか。


たしかに人に言えない・・・言いたくない過去なんて誰にでもあると思う。


私だって・・・。










あの頃は嫌な叔父と叔母がいて・・・でもやさしい兄がいつも助けてくれて。

でもある日突然兄がいなくなって・・・そして叔父と叔母もいなくなって・・・?











あれ・・・・。





あれ・・・・・・?




どういう事?




私は橘家の人間。

橘 雄三、そう・・・おじいちゃんと二人暮らし。

私は物心がついた頃にはずっとおじいちゃんと暮らしていた。

おじいちゃんが言うには私の両親は私が生まれた直後に亡くなったと言ってた。


叔父と叔母にいじめられていて、それを兄が守ってくれてたのはいつの頃だっけ?



・・・・・・・・・・・・・わからない。わからない?


叔父と叔母はどうなった?

兄はどうして突然消えた?



あれ。
















私はいつも昔の事を思い出すとこの辺でよくわからなくなってた。

よくおじいちゃんに、

「ねぇ、お兄ちゃんはどこ?」

と聞くと、

「遠い親戚の家だよ。」

としか答えてくれなかった。


昔の話題になるといつもおじいちゃんは、口達者になっていた。

まるで話題にしたくないように他の話題でそれを埋め尽くす。


嫌な叔父と叔母の事は私は口に出さなかった。出したくなかったからだ。


よくよく考えるとおかしな話だ。

その頃の記憶は曖昧だったのに、なぜかそこの嫌な記憶の部分だけはっきりしてて・・・。


いつの頃からか、すっかりこの事も忘れていた。たまに夢を見たり、嫌な事があると思い出してしまっていたが・・・すぐ忘れるようにしていた。



こんな曖昧な記憶だからこそ、他人に話す必要もないし、ましてや自分からこんな話題など出したくもなかった。



祐二にも・・・そういう記憶があったという事?

曖昧だった過去の記憶。

それがあるきっかけ・・・井沢という男のメモやら写真やらのせいで記憶がフラッシュバックして・・・?


でもそれは今という平穏を壊してまで成し遂げなければならないほどの記憶だったという事?


わからない・・・。

わからない。


祐二はあんな感じじゃ決して私にも何も話そうとしないだろうし・・・。


はぁ・・・。








そういえばあんなに必死に祐二を探してた修二君はどうしてるんだろう?

まだ祐二を探しているんだろうか。

連絡してあげた方がいいのかもしれない・・・。


でも祐二は誰とも会いたくなさそうだった・・・。

修二君に連絡すればきっと修二君も祐二の所に向かうに決まってる。


黙って・・・おこう。






私は様々な思惑と疲れとが混合しあって、いつの間にか自室のベッドで意識を失った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ