第四十一話 様々な思惑
私は泣きながら謝り続ける幸恵を抱きかかえながら、彼女を家まで送り届けた。
急激に私の周りで物語は加速し始めた。
幸恵があんな事になっていたなんて・・・。
祐二は一体何を考えているんだろう。
過去に何かあったんだろうか。
人には人に言えない過去のひとつやふたつ、持っているけれど・・・。
それは私達の前からいなくならなければならない程の事なのだろうか。
たしかに私にもあまり掘り返したくない過去はある。
それを祐二は井沢という男に掘り返されてしまった。
しかも・・・それは私達の前から失踪という形になって表れている。
明日・・・幸恵が言っていた場所に祐二はいるのだろうけど・・・。
正直私が問い詰めてもどこまで話してくれるかわからない。
もしかしたら煙たがられるかもしれない。
それはそうだろうな。
私や修二君を煙たいと思ってるからこそ姿をくらましているわけなのだし・・・。
深夜に響きわたるコオロギの合唱・・・今もどこかで祐二はこの合唱を聞いているのだろうか。
今日の事、修二君には話すべきなのだろうか。
でも長谷川さんと修二君は仲がいいという事らしいし、長谷川さんから何か伝えるだろう。
それにしても渡辺君も死んだのはどういう事なんだろう。
先ほどの幸恵の話からすると、渡辺君は他の人物に殺されたという事になる。
いや、首を吊ったとしか言ってなかった。
自殺・・・?
それもよくわからない話だ。
・・・人が死んでいる。
私の周囲で井沢という男と渡辺君が死んでいる。
私はその事を深く考えると少し身の毛もよだつ思いがした。
これは、人殺しがいるという事だ。
幸恵は話からすると井沢という男を殺したわけじゃなさそうだった。
じゃあ何者かが井沢という男を殺し、そしてまた渡辺君をも殺した・・・?
まさか・・・祐二が?
そんなわけない・・・でも。
殺人という非道徳的な事を起こしてしまった祐二は私達に合わせる顔がなく、失踪したとも考えられる・・・。
様々な思惑が交差する。
唐突に告げられた事柄を必死に整理しようとする私がいる。
・・・今夜は寝られそうもない。