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第三十話 警告

電話が鳴る。


俺はすばやくその電話を受け取った。

予想通りそれは長谷川さんからの連絡だった。


「もしもし。」

「あ、修二君かい。今日は学校に行ったのかい?」

「はい。・・・長谷川さんは何かわかりました?」

「会社じゃ特に変わった事はなかったよ。まぁ渡辺君が死んだ事はみな知っていたようだし、会社側からも連絡が来ていたけどね。」

「そうなんですか。」

「今日連絡したのはちょっと相談があるんだ。今からちょっと会えるかな。」

「はい、大丈夫です。えっとどこで?」

「そうだね、じゃあ三日月ってレストラン知ってるかな。」

「はい、わかります。」

「じゃあそこに今から一時間後に。」

「わかりました、では・・・。」


長谷川さんが相談・・・なんだろう。

何かヒントでも得たのかもしれない。

俺は一時間の猶予をどう過ごすか考えつつ、バイト先に休みの連絡を入れた。









昨日行けなかったスポーツクラブにでもちょっと行ってみようとそっちの方向に向かってあるいていると、そこには見覚えのある女性がいた。

相手も俺に気づいたのだろう、ハッしながらこっちに近づく。


「こんにちは。君はたしか渡辺君のお友達だったよね?」

「はい。えっと、あなたはたしか御堂さん・・・でしたっけ。」

「そうよ。よく覚えてたわね。おねーさんうれしいな。」


なんとも軽そうなノリの女性だ。


「改めて・・・俺は服部 修二って言います。」


女性は俺の名前を聞いた瞬間驚いた表情を見せた。

だがすぐに表情を落ち着かせた。


「そう・・・服部君ね。ところで君、長谷川さんと仲がいいようだけど・・・一体どういう関係なのかしら?」


言葉につまった。

和弘の件以来の知り合いとは説明しづらかった。


「んっと・・・長谷川さんは兄貴の友達なんですけど、趣味が合うのでたまに遊ぶ事があるんです。」


適当なウソをついておいた。

だがこのウソは失敗だった。

御堂という女性はすぐに眉をひそめ俺の思いもよらない答えを返す。


「・・・君、お兄さんがいるのね。まさかとは思うけど、服部 祐二って名前だったりしたりするのかしら。」


俺はぎょっとした。

なぜ長谷川さん、渡辺の会社の同僚であるこの女性が兄貴の事を知っているのか。

そういえばこの人、死んだはずの和弘をその後日に見たと証言したって長谷川さんが言っていたな。

怪しいかもしれない。


俺は相手を少しすごむ顔つきで睨んだ。


「あはは、大丈夫よ。別に変な関係じゃないわ。それよりあなた、やっぱり祐二さんの弟さんなのね。」

「・・・そうですけど、御堂さんこそ兄貴とどういう関係なんですか?」


ややきつめの口調で言う。


「うーん、私の会社仲間兼高校以来の親友がいるのね。その子の彼氏が服部 祐二さんなのよ。祐二さんとは何度かあったことがあるわ。弟がいるって聞いてたけどまさかあなただったとはね。」


そうだったのか。

それよりひっかかるのは・・・。


「御堂さん。その親友ってまさか橘 静香さんですか?」

「やっぱり弟さんね。知ってたか。」


くすくすと笑うと御堂という女性は手元に持っていたバッグを持ち直した。


「そりゃ兄貴とは長い付き合いみたいですし、俺も橘さんとは何度か会って話しとかしてますしね・・・。」

「そっか。・・・それじゃあますますひっかかるわね。」

「何がですか?」

「どうしてあなたが長谷川さんと仲がいいのか、よ。」


まずった。

この人がここまで俺たちに関わりのある人間だとは思いも寄らなかったので、ヘタなウソが綻んできたようだ。


「長谷川さんは静香と祐二さんが付き合ってたって事以前に祐二さんという存在自体知らなかったはずだわ。そんな彼があなたのお兄さんと仲がいいって言うのは・・・変よね?」


くすくすと笑いながら俺を見る御堂さんに、俺は見下された感じがした。


「・・・すみません。ちょっと説明が面倒だったので適当なウソを。」

「だろうと思ったわ。そうなるとますます気になるわね。あなたたちの関係。」


どうするか。

この人とは付き合いも短いし、どういう人間なのかいまいちわからない。

それに妙な発言が気になるし・・・どこまで言っていいのか。


「・・・渡辺君の事で知り合った。違う?」


俺は正直心臓が飛び出そうになった。

どうしてそこまで・・・!?


「ふふ、当たり・・・かなっ。」

「・・・・。」


俺は黙って目線を下げた。


「大丈夫よ。変に勘ぐらないで。今日私の会社で連絡事項が来てたのよ。渡辺君が亡くなったって・・・。それで二人に共通してるところは渡辺君くらいでしょう?」


ああ・・・そうか。そういえば長谷川さんも言ってたな。


「まぁあなたたちは結構前から渡辺君が亡くなった事を知っていたんでしょうけどね。」

「・・・はい。御堂さんの言う通りです。」


この人、あっけらかんとした口調とは裏腹に鋭い観察眼を持っていそうだ。


でもまぁ・・・特に怪しい事もないか。

これくらい、誰でも知り得る事のできる情報だしな。





だがこの後の彼女の口調は俺を疑心暗鬼に陥れるには容易い言葉だった。












「・・・あまり深く関わりすぎないほうがいいわ。」







「ぇ?」

「君もお兄さんがいなくなって大変だろうけど、お兄さんの事はしばらく忘れた方がいいわ。あなたの為にもなるし、静香の為にもなる。」


な、なんだ?

何を言ってるんだ、こいつは。

そもそも兄貴がいなくなったって事、なんで知ってるんだ!?

橘さんが言ったのか?

この女、怪しすぎる。


「それ、どういう意味ですか!?だいたいなんで兄貴がいなくなった事を・・・あなたは兄貴の居場所知ってるんですか!!?」


俺はついどなった。

知り合って数日もしない、しかもまるで無関係そうな女がいきなり事件の中心をつつくような発言をするからだ。


「落ち着いて。私は何も知らないわ。ただ・・・信じて?私は本当にあなたと静香の為に言ってるの。もちろん長谷川さんにも伝えておいてね。」

「え、ちょっとまっ・・」


それだけ言い残して御堂という女は足早に去って行った。



「・・・くそっ。なんだって言うんだよ!わけわっかんねぇ!!」


俺はやり場のない怒りが勝手に口から漏れた。







そうこうしているうちにいい時間になってきた。

俺はレストラン三日月に向かう事にする。


長谷川さんに会ったら少し御堂という女について詳しく聞いてみよう。

あの女、怪しすぎる。

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