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第三話 9/5その3

「まぁーったく・・・朝っぱらからなんだってこんなんなってんだよ・・これ。」


一人の男がぼやく。

それもそのはずだ。こんなもの、普通の人間が見たら間違いなく驚きおののく。


「佐藤さん、これを・・・。」


一人の警官が何かを持って走ってきた。


「これ、なんですかね?」

「こりゃー・・・指輪・・・か?」


それはぐにゃぐにゃになってはいるが、明らかに何かの指輪のようであった。


「これをどこで?」

「ガイシャの口の中に入ってた物です。」

「あー・・・それとホトケさんの身元割り出しは?」

「現在調査中です。」

「それにしても被害者はなんだってこんな死に方してるんですかね?」

「さぁなぁ。それがすぐわかりゃ刑事はいらねーって話だわな。」

「そ、そうですね。」


被害者は体中を鋭利な刃物でめった刺しにされた挙句、高所から突き飛ばされて死亡していた。

また両腕はロープのようなもので背中に縛られており、殺される前から自由を奪われていたと思われる。


「まぁ、この指輪を隠しておきたかったが両腕の自由を奪われていたから仕方なく口に含んで・・・やられちゃったんだろうなぁ」

「なるほど。」


するとこの指輪目的の犯行か・・・


「佐藤さーん。」

「おう、どうしたぃ。」

「ガイシャの身元判明したっす。」

「ぉ!」

「ガイシャは井沢 忠彦44歳。この近辺をうろつく浮浪者で、特に職も着かずよくフラフラしているのを街中で幾度か目撃されてます。」

「おいおい、ルンペンだってのか。」

「はい。」

「ルンペンの身元をよくそんなすぐに割り出せたな。」

「ええ、街中では結構有名な浮浪者だったそうです。また、よくスポーツクラブに通ってたらしくてそこの常連さんがこの人と仲が良くて会員証から身元の割り出しに至りました。」

「はぁー・・・ルンペンでよくスポーツクラブの会員証とか作れたなぁ。」

「なんでも浮浪者になったのはつい最近でスポーツクラブに入る前は普通に家を持ってたそうですよ。」

「そうか・・・その常連の客とやらにもう少し詳しい話聞いてみっか。」

「それとお前は、ロープと指輪の指紋採取、入手ルートの洗い出しな。」

「っは!」


ったくついてないぜ。なんだってこんな日に殺人なんておきやがるんだか・・・。

俺はこの場を他の警官に任せると、そのスポーツクラブに向かって車を出した。














「では井沢さんがここの会員だってのは本当なんですねぇ?」

「はい、間違いないです・・・。私が毎日チェックしてましたし・・。」

「毎日?」

「はい。井沢さん、毎日必ずここで一汗流していましたので・・・。」

「ふむ、なるほどねぇ。で、その井沢さんと仲のいい常連さんがいるって聞いたんだけど。」

「あ、服部さんですね。今もあちらにいますが・・・井沢さんの件でだいぶショックを受けられていますので・・・。」

「ぁあぁあ、大丈夫。ちぃーっと話聞くだけだから。」

「はぁ。」


俺はその服部って男のところに近づく。明らかに顔面蒼白で驚いてる様を見る限り、ガイシャの事でショックを受けてるか、もしくは・・・・。


「ぇえーっと、初めまして。あんた井沢さんと仲がいいって聞いてきたんだけど」

「・・・あ、はい。」

「ちょーっとお話聞いてもいいかな?」

「・・・はい。」

「殺された、井沢 忠彦さん、知ってるよね。彼とはどういう関係だったのかな?」

「あの人とはここでよく話すくらいの関係でした。年も離れててよく話すっていうのはちょっと変わってるって思われてるかもしれませんが・・・。」

「そうだねぇ。あんたまだ20代でしょ?ガイシャの年齢差考慮すると親子くらい離れてるもんねぇ。」

「・・・俺の家、父がいなくて・・・・。それでふとした事からよく話す様になって・・・。なんか・・・親父みたいで・・・色々相談とか乗ってもらっちゃって・・。」

「あー・・・。落ち着いてな。そかそかぁ・・なるほどなぁ。」

「・・・それで井沢さんは・・・本当に・・・?」

「です・・・。ご冥福をお祈りしますわ・・・。」

「・・・そう・・・ですか。」

「ところでぇー・・・っと。」

「あ、服部 祐二です。」

「ああ、服部さん。こんな指輪、見たことないですかねぇ?」


俺はさっきガイシャの口の中から出てきた指輪の写真を彼に見せた。


「・・・さぁ。知らないです。これが何か?」

「いえねぇ、これがガイシャの持ち物から出てきたんですよねぇ。」

「そうなんですか・・・。」


そう言うとまた彼はうつむいて考え込んでしまった。


「まぁ、今日のところは服部さんもだいぶ参っていらっしゃるようですし、この辺にしときますわ。」

「はぁ・・・。」

「また、機会があったらお伺いになるかもしれませんけど、その時はよろしくたのんます。」

「・・・わかりました。」


今日は一旦署に帰って、詳しい情報を得たらまた話を聞くとしようか。

それに今日は約束があるんだったな。

雄三さん、俺が遅れるとうるせぇからな・・・。

それに雄三さんの知恵は確かに借りても悪くないしな。

たしか待ち合わせ時間は11時だったな・・・腹も減ったし後のことは部下に任せておくか。


「それじゃあ服部さん、お手間を取らせましたね。」

「いえ・・・。」

「ではまた。」


そういって俺はスポーツクラブを後にし、約束の場所へ向かう事にした。

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