第二十八話 空メール
正直、今回の件は深い理由が僕に関係する何かでありそうだ。
しかしわからない。なぜ服部 祐二は失踪している?
渡辺殺しの犯人が服部 祐二で彼はほとぼりが冷めるまで逃げ切るつもりなのか?
それとも・・・。
・・・だめだ。情報が少なすぎる。
ロープや彼らの因果関係もまださっぱりだしな。
憶測は口にしないに越したことはない。
修二君に言ったら怒られそうだしな。
だが・・・用心した方がよさそうだ。
僕たちが事件をかぎまわれば、いつか犯人のしっぽを掴む可能性もなくはない。
犯人にとってそれは好ましくない事だろう。
ヘタをすれば次に命を狙われるのは僕や修二君という事も十分にありえる。
・・・・ふむ。
明日、修二君には念を込めて身の安否を確かめるついでに注意を促しておこう。
そういえば僕に待ち合わせのメールを送ったのは一体誰だったんだ。
何の為に僕を呼び出す?
・・・これはつまりこういう事だ。
渡辺を殺したやつが渡辺の携帯電話を奪って僕に意味深なメールを送った。
という事は犯人は僕の事を知っている人物・・・?
・・・まさか次に狙われてるのは・・・・僕・・・か?
その時、ふいに軽快な音がなる。
・・・僕の携帯だ。
「・・・なんだ?」
それは死んだはずの渡辺君からのメールだった。
「・・・どういう・・・事だ?」
内容は・・・何も書かれてなかった。
ただの空メールが・・・死人から届いたのだ。
以前の時といい、今回といい・・・なんなんだこれは。
いやまて・・・そうか。
こんな手が思いつかなかった僕も何をやってたんだか。
僕はニヤっと笑いながらメガネを直す仕草をする。
だがこれは正直危険だ。
憶測の域を出ないし、相手にどこまで餌を撒くか・・・。
単独で何かあっても厳しいな。
今回の件で唯一の仲間だと思われる修二君と相談してみるか。
・・・くく。なんだか面白い事になってきた。
今までの人生でここまで気持ちが高鳴る事があっただろうか。
身の危険を感じて笑うなど少し僕はおかしいのかもしれないな。
だが・・・面白い。試す価値はある。
今日は疲れた。明日の夕方、仕事帰りにでも修二君と連絡を取って実行してみよう。