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第二十七話 ピエロ

「「あ・・・。」」


夜は更け、ここで出会うのはまるで必然だったように出会う。


「橘さんこんばんは・・・。やっぱり兄貴の事・・・ですか?」

「・・・うん。修二君もこんな時間まで・・・?」


俺たちは互いが何をしていたのかまるで語り合ったかのように把握しあった。


俺たちは家の前の玄関で座り込みしばらく黙ってうつむいていた。

まるで喧嘩の後の恋人同士のように。


口火を切ったのは橘さんだった。


「修二君は・・・何か心当たる事とか・・・ないよね。」

「・・・何がです。」


舌足らずのような橘さんの文章の意味がどういうものなのか、今の俺にはよくわかるのにそれに対する反応は皮肉じみたものになる。


「・・・祐二の事。」


当然のように当然の答えが返ってくる。


「・・・全然。」


俺は一呼吸置いて答える。

橘さんは祐兄の事、どこまで知っているのだろうか。

失踪した事はすでに知っているだろうが、祐兄が殺人事件に関与している可能性がある事、俺の友人が死んだ事など知っているのだろうか。

知らないとすれば俺は教えた方がいいのだろうか。

だが知ればきっと橘さんはますます気が気でなくなるだろう。

俺はそのまま黙ってうつむく。


「・・・どこ行っちゃったんだろうね。君のお兄さんは。・・・私の事なんてどうでもよくなっちゃったのかな。」


俺はせつなさと悔しさの合い混じったような感情にのまれそうになる。

普段なら冷静で大人な橘さん。

今回の場合も祐兄が橘さんの彼氏でなかったならきっとこうだ。


大丈夫だよ。修二君をおいてどこにも行かないって。


しかし今さっき出た橘さんの言葉はこれだ。

一見軽い笑いを込めた皮肉じみているが、あきらかにそうとう参ってる証拠だ。

俺の心情を汲み取れないのがいい証拠だ。


・・・まぁ俺も似たようなものか。


「・・・大丈夫。祐兄は繊細に見えてしぶといからね。昔からそう。俺と喧嘩した時もしつこくてしぶといんだ。絶対どっかで元気にしてるって。」


心にもないことが言葉になるとは今まさにこの事だと思った。


「そう・・だよね。」


・・・辛い。

俺が彼女に対してただの兄の彼女という感情しか抱いていなかったのなら、もっと違う感情を持てたのだろう。


祐兄・・・何してんだよ。ばかやろう。


「もう遅いし・・・修二君おうちに帰った方がいいよ。私も・・・そろそろ帰らないとおじいちゃん心配するだろうし帰るね。」

「あ・・・。」


どうする。何も言わずにこのまま帰してしまっていいのだろうか。

いくらきつい事とはいえ何も知らないまま橘さんを帰すのはしのびない。


「・・・何?」

「あ・・・あの。」


どうする・・・言うべきか!?


「・・・?」


橘さんは俺の口火を待っている。

どうする・・・どうする!


「あ・・・祐兄は・・・きっと帰ってきますって。」

「・・・だね。ひょっこり戻ってくるよね。」


・・・くそ。


「じゃあ・・・また。」


俺は力なく橘さんの背を見送ると自分にイラつきながら家の戸をあけた。

コオロギの鳴き声がやたらと耳障りだった。

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