第十八話 遺書
今回の件は本当に申し訳ない。
しかしもう後には戻れない。
俺は全てに決着をつけて最後、自分で自分に幕をおろそうと思う。
静香、本当にすまなかった。
「これだけ・・か?」
私は遺書らしきものに目を通し和夫に問いかける。
「ええ、それだけ。遺書のような感じでしょ。遺書はずいぶん前に書かれた物っぽいからこの文面からするとなんらかの理由で井沢を殺し、その後この遺書を書き渡辺を殺し、自殺した・・・って感じに取れなくもないですよね?」
確かに和夫の言うとおりだ。
「で、渡辺知事は今、大事な時期らしいんですね。これ以上もめごとを起こしたくないんでしょう。この遺書で全てを終わりにしてくれって圧力をかけてきたそうです。」
「自分の息子が殺されたってのにずいぶんあっさりしてるな。」
「ですねぇあーゆー方々はみんなあんな感じなんでしょうかねぇ。まぁその辺も調べちゃいますが今の所別に不審な点はないですしねぇ。」
私は遺書らしきものに違和感を覚えたが、それを言葉に発する程強く確信の持てるものではなかったのでこの場は黙りこんだ。
「・・・そういやぁオヤジさん。あれから静香さん、大丈夫です?」
「ああ・・・今は多少落ち着いてる。当時は錯乱ぎみだったが・・・。」
「・・・そりゃあ・・・仕方ないでしょうなぁ。本当にお気の毒です。」
あの後の静香は見てられなかった。
いつも淡々とし、なんでもこなす静香があれほど乱れたのは、私でさえ初めて見る光景だった。
「和夫はどう考えてる?」
「んー・・・なんともいえません。こんな遺書が出ちゃってかつ事件を沈静化する動きが出てますしね。一介の刑事程度じゃどうにもならんですよ。」
「それは一介の刑事として、だろう。」
「ははは、そうでした。そうですねぇ・・・なーんか理由がまだ曖昧ですからねぇ。もっと俺たちの知らない何かがありそうな気はしますねぇ。」
「ふむ。」
私もそう思う。
そもそもこの遺書だけでは、何に決着を付けるだの、何故井沢、渡辺とやらを殺さなきゃいけないのかもさっぱりだ。
「まぁ、またなんかわかりましたら俺の方からもオヤジさんに一報入れますよ。」
「ああ、頼むよ。」
9/5から全てが変わってしまった。
私には因縁深い9/5という日にまた。
この日には何かあるのだろうか。