第十五話 井沢 忠彦
井沢 忠彦(44)男
××年井沢家の長男として生まれる。
父は井沢が生まれる以前に死亡している。
以後、生を受けてからは母との二人暮らし。
××年××小学校入学。
××年卒業。
××年××中学校入学。
××年卒業。
××年××高等学校入学。
××年、構内にて乱闘事件を起こし、中退。
その後バイトを転々し、××年、××会社に就職。
数年後職場で結婚。二人の子供に恵まれる。
その直後、妻が他界。
子供を父親の一人手で育てる。
さらにその数年後、次男が不運の事故で他界。
それからしばらく荒れていた井沢は子供を育てる意欲を失い、ギャンブル等に走ってしまう。
また子供に対するやつあたりがひどくなる。
それを見た周囲の人々が児童相談所に連絡。
連絡が入った児童相談所はしばらくの見解の後、緊急保護としてその子供は相談所に預けられる。
井沢は厳重注意を受ける。
その後、家の支払いもままならない為、競売にかけられ浮浪者となる。
「ふむぅ、なかなか壮絶な人生を歩んでいらっしゃいますな。」
「ですね。これを見る限りダメ男の典型みたいなやつですね。」
「だなぁ。ま、この程度の情報じゃ井沢殺しの解決にゃーならんがな。」
「ですねー・・。それに渡辺 和弘の自殺、服部 祐二の自殺の件もありますしね。」
「だなー・・連続殺人の可能性もなくはねぇーしな。」
「じゃあやっぱり佐藤さんは二人は自殺じゃないと?」
「さーてな、わからんことだらけだかんなぁ・・・まぁのんびり行こうや。」
「ああ、そういやこの井沢の息子は今どこにいんだか調べたんか?」
「いえ、まだ捜索中です。なにぶん孤児院を出た後の行方が記録になくて。」
「そうかぁ・・・。」
俺はそういうとタバコに火をつけて外を見た。
もう日も暮れ始めていて、秋だと感じさせるコオロギの鳴き声がリリッリリッと鳴いていた。
窓を開けて風を入れた。
すぅーっと涼しい風が署内に吹き込む。
「ふぅー・・・。」
俺はため息交じりのタバコの煙を外に吹き出した。
「わっけわかんねぇや。やっぱ後日オヤジさんに会って詳しい話しと協力要請すっかな。それに・・・。」
それに今回の一連の事件はオヤジさん・・・事、橘 雄三氏がまるきり無関係じゃないしな。
服部修二にももう少し詳しく話しを聞いてみる事にしよう。
それと橘 静香。こいつも少し臭い。祐二死後の行動に気になる点がいくつかある。
後は、渡辺の同僚、服部祐二の同僚にももっと捜査のメスを深く入れて・・・。
あー、報告書の整理もしなくちゃなんねーな。
それと指輪とロープの件。
そういやぁ遺書の筆跡鑑定はどうなったんだっけか。
やること、多いなぁ。