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第十四話 出会い

「ただいま。」


俺は和弘の件と、殺人事件の関与について兄貴に詳しい話を聞きたかったのもあって、急いで家に戻った。


「あら、おかえり修二。早かったのね。」

「母さん、祐兄いる?」

「それが・・・昨日の晩から全然帰ってこないのよ・・・。」


何?


「え・・・ど、どういう事?祐兄は今朝からずっといないっての!?」

「そうなのよ・・・さっきも静香ちゃんが訪ねてきて、祐二の事聞いて行ったの。」


兄貴・・・おいおいどうしちまったんだよ・・・。


「母さん、昨晩からって・・・昨日の夜、俺祐兄と話ししたぜ?」

「うん、その後よ。夜中にね、忘れ物したからって言ってどこか出かけちゃって・・・そのまま帰らずなのよ。」

「まじかよ・・・どこいっちゃったんだ・・・俺、ちょっと探してくる!」

「あ、修二。」

「何?」

「もし祐二見つけたら、静香ちゃんに連絡するよう言ってあげてね。あの子もだいぶ心配してたから。」


橘さん・・・そりゃ心配だろう・・・。


「・・・わかったよ。行って来ます!」


俺はそそくさと玄関を出た。





それにしても兄貴・・・なんかやばい事にでも巻き込まれてんじゃねぇのか。

黒っぽいどろどろしたものがどんどん体の中を広がって行く感覚を覚えた。


俺は特に心当りがあったわけじゃないがひとまず街中を走り回った。


兄貴・・・・どこだ。










いってぇ!

俺は思わずしりもちをついた。

前を見ずに走ってたら人にぶつかっちまったようだ。


「ったたた・・・す、すいません」


相手もだいぶよろめいたようだが倒れはしなかったようだ。


「びっくりした・・。大丈夫かい、君?」

「はい・・・すみません。」


よかった・・・・いい人っぽい。


「急いでいるようだけど・・・・どうかしたのかい?」

「いえ、ちょっと人を探してて、すみません。」

「そうだったのか。ちょうど僕も人を探しているんだけど、今日はよく人探しをする人が多い日だな。」


年は俺よりも少し上で兄貴と近い年齢くらいのメガネをかけた優しそうな人だった。

その人はそう言うとクスリと笑ってメガネのずれを直す仕草をする。


「そうなんですか・・・。」


俺は意味もわからず相槌を打った。


「はは、君には関係のない事だったね。すまない。では僕は行くよ。」

「はい、いきなりぶつかっちゃってすみませんでした。」


俺はそういい残してそこを去ろうとした。


「・・・ふぅ。渡辺のやつどこにいるんだか。」









わた・・なべ?


奇妙な連帯感が俺を襲った。

いつもならこの全く知らない人の独り言など聞く耳も持たなかっただろう。

だが今は色々な状況が折り重なっていたのもあって、体が敏感になっていたんだろう。


「あの・・・。」

「ん?どうしたの?」


俺は思わず聞かずにはいられなかった。


「渡辺って・・・もしかして渡辺 和弘・・・の事だったりしますか?」


ダメ元で聞いてみた。


が、反応は悪くなかった。

その人は一瞬驚いたような顔をし、すぐ切り替えしてきた。


「君、渡辺を知ってるんだ。そうだよ、渡辺 和弘。僕の会社の後輩なんだ。」

そうだったのか・・・。和弘が勤めてた会社の先輩だったんだな。


「彼とこの辺りで待ち合わせをしていてね。もう時間をだいぶ過ぎてるんだがまだこないんだ・・・。場所は間違っていないハズなんだが。」


ど、どういう事だ!?

渡辺は昨日死んだって・・・なのに今待ち合わせ?


「あの・・・それ、どういう事ですか?」

質問がめちゃくちゃ直情的だったが、俺はそのまま声に出した。


「どういう事って言われても、そのままの意味だよ。彼からメールが来ててね。とても重要な話しがしたいからここで会えないか?ってね。」


わからない。意味がわからない。意味はわかるが俺にとっては全くわからない。

和弘は昨日死んだ。

死んだ人間がメールを出すことなど不可能だ。

普通に考えて、他の人間がなんらかの悪意があってこの人をここに呼び出したとしか思えない。


「それ・・・おかしいですよ。」


メガネをかけた好青年風の人はきょとんした目でこちらを見ている。


「おかしいってそれこそどういう事だい?」


俺は迷った。

この人に和弘が死んだ事をここで伝えていいのか悪いのかがわからなかったからだ。

しかし会社の同僚であるならいずれ話しはいくはず。

相談相手もほしかったところだ。ここは全て話しておいた方がいいだろう。


「和弘は・・和弘は昨日死にました。」

「ぇえ?」


驚いていた。当然といえば当然か。ストレートすぎたな。


「俺も・・・正直知ったばかりで驚いてるんですが、今日警察の人から聞かされて・・・。和弘、昨日の夜中に首を吊って死んだそうです。」

「そ、そんなばかな・・・。」

「俺も自殺なんかするやつじゃないと思ってるし、あいつとは古い付き合いだった・・・。悲しくてたまらないです・・・。」


メガネの人は少し考えこんだと思ったらやや間を空けて切り出してきた。


「・・・ふむ、ただ事じゃなさそうだね。それにしても渡辺君が死ぬなんて・・。」

「・・・。」


俺は少し黙り込んだ。


「ああ、紹介が遅れた。僕は長谷川 秀一。26歳。××会社の社員だ。渡辺君とは結構仲良くやってた・・・。いい後輩だった。」

「あ・・・すみません。俺、服部 修二って言います。年は19っす。××大学二年です。和弘とは昔からの付き合いで・・・。」

「そうか・・・古い付き合いじゃさぞがっかりしただろう。気をしっかりな。」

「は、はい・・・。」


よかった。本当にいい人そうだ。


「そういえば君も誰か探していたんだろう?大丈夫なのか?」

「あ、ああそうでした。」

「誰を探していたんだい?」

「俺の・・・・兄貴です。」

「お兄さん?」

「はい・・・。この際だし、なんかの縁だと思って長谷川さんには全て話しておきます。」


俺は兄貴が9/5に起こった殺人事件に関与している可能性があること、昨日の晩から帰ってきていない事などを話した。


「ふむ・・・その殺人事件といい、今回の渡辺君の件といい、なにかありそうだな。」

「や、やっぱりなにか関係してるんでしょうか。」

「わからないけどね。殺人なんてそう簡単に、ましてや身内に連続して起こる事なんてありえないだろ?そこに君のお兄さんの失踪も絡むとね・・・。全て無関係とは思えないな。」


この人は・・・見た目通りというか、頭の回転はかなり速い方だと思った。

俺たちは一連の事件についてもっと調べる必要が有りと判断し、二人で協力して探っていく事を約束した。

ただ今日はもう遅いという事で、明日から一緒に俺の兄貴を探す事にしようと話し今日のところは引き上げた。

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