第十三話 黒い夢
「やめろよぉおお!!」
俺は腹から精一杯の声を出す。
相手はその声に驚いたのか、動きを一瞬止める。
「うるせぇ、黙れクソガキ!」
乱暴な言葉が俺に向けられた。
「ったくギャーギャー騒ぎやがって、ちっと頭ひっぱたいたくらいで大げさすぎなんだよ!」
それは俺たちに向けられた言葉なんだろう。
そのひっぱたかれた女の子は泣きながらビクビクと怯えていた。
「ったく、ノロマのクソガキ共が。なんで俺がこいつらの面倒みなくちゃなんねんだかなぁ!」
「うるさいねぇ、私だって嫌だわよ。この子らの両親が死んじまったのが悪いんだよ。」
「ちったぁ金でも残しておいてくれてるならこんなクソガキだって多少はかわいく見えたかもしんねぇけどなぁ。」
「まったくだね。はぁー・・・一応飯も食わせなきゃだし、ロクなもん置いてかないよあんたんちの弟は。」
そういうと叔父夫婦は部屋を出て行った。
「ぅぇ・・・ぇ・・・・」
女の子はまだ泣いている。
「もう泣くなよ・・・。」
俺だって泣きたい・・・。
あんな叔父叔母、何度殺してやろうかと思ったか。
でも身体的にもとても無理があった。
俺はまだ6歳、妹に至ってはまだ4つだ。
変に逆らって手痛い暴力を反撃されるのがオチだろう。
「ほら・・・もう大丈夫だよ。」
「ぅ・・・ぅ・・・。」
「静香、もう泣かないで・・・。」
「おにいちゃん・・・私もういやだよぅ・・・。」
「大丈夫、大丈夫だ。きっとすぐ楽しい日が来る、幸せな日が来るから。」
「・・・パパ、ママ。どうして死んじゃったの・・・ぅ・・・ぅえ。」
静香はまた泣き出してしまった。
俺も泣き喚きたい。
でも俺がそれをすれば静香はもっと不安になるだろう。
俺は強くないと・・・俺は強くないと。
こんな日々、絶対終わらせる・・・・。