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第十一話 友の死

「あー・・・お宅、服部さん?」

「は、はぁ・・・・そうですけど、どなたですか?」


俺は不意に名前を呼ばれた。

どこかで見たことのある中年男性だった。


「これはこれは、自己紹介が遅れました。私、こういうものです。」


そいつは名詞を出すのだろうと踏んでいたが、出したのは警察手帳だった。


「け、刑事さん?」

「はい。佐藤 和夫って言います。以後よろしく。」

「はぁ、刑事さんが俺に何か用事っすか?」







昨日忘れていた墓参りの事もあって、今日は講義をさぼって父の墓参りに来ていた。

墓前に向かう途中、この男に声を掛けられていた。


「えっとねぇ、渡辺和弘さん、ご存知ですよね。」

「はぁ・・・友人ですけど・・それが?」

「んー・・大変お気の毒なんですが、昨晩渡辺さんがお亡くなりになりました。」


は・・・・?和弘が?


「え、ちょっと意味がよく・・。」

「突然の事で驚かれたでしょうが、昨晩の午前0時前後、自宅の部屋の中で首を吊られています。」


午前0時って・・・俺があいつを送って帰った数時間後じゃないか。


「そ、そんな!だって昨日まで・・・!」

「ええ、それで詳しいお話を聞かせてもらいたいんですけど・・・今日お時間あります?」

「・・・はい。」


俺は刑事に言われるがまま、パトカーに乗り警察署に連れて行かれた。







「あ、コーヒーでも飲みます?」

「・・・いえ。」

「んじゃあ、紅茶でもだしましょ。まぁのんびりしてください。」


和弘が死んだってのにのんびりできる状態になれるわけがない。


「さて、服部さん。いくつか質問させていただきますねぇ。」

「はい・・・。」

「昨日は渡辺さんとどこに行かれてました?」


この刑事・・・俺が昨日和弘と遊んでいた事はすでに知ってる。

俺に事情聴取する以前に一之瀬か三沢さんか・・・大学仲間から聞いてるな。


「和・・渡辺を含む友人3人でカラオケ屋と飲み屋に行ってました。」

「ふむふむ、それは何時頃まで?」

「えっと・・大体ですけど多分10時くらいだったと・・・」

「なるほどー。・・・んー?お宅まだ未成年ですよねぇ?」

「あ・・・俺、酒は飲んでないです。」


やば・・・俺早生まれだからなぁ・・まだ19なんだよな。


「だはは。まぁそーゆー事にしときましょ。今度は気をつけたほうがいいですよぅ。」


この刑事が些細な点にうるさくなくて助かった・・・。


「んで、10時まで遊んでそれからはどうしました?」

「そのまま・・・渡辺を家の近くまで送って帰りました。」

「ふむふむ、渡辺さんはだいぶ飲んでいらっしゃいました?」

「いや・・・普通だったと・・・あまりよく覚えてないです。」

「ほうほう。」


何かメモを取りながら俺の言葉に相槌を打っている。


「渡辺はなんで死んだんですか!?」

「さてねぇ・・・こちらもそれが知りたいですねぇ。」


それはそうだ。出なければ俺に事情聴取などしない。


「渡辺は・・・殺されたんですか?」

「さぁー・・まだわかりません。」

「でも首を吊るような・・・自殺するようなやつじゃないです!」

「ぇえ、ぇえそうですよね。また詳しい事がわかりましたらこちらから連絡しますよ。」


警察ってのは自分の持ってる情報はあまり晒さないもんだ。

そのくせこちらの事ばかり聞いてくる。


「なるほどねぇ。じゃあちょっと質問を変えます。」


まだ他にもあるのか。


「服部 祐二さん、お兄さんですよね?」

「え・・そ、そうですが。」


兄貴・・・?兄貴が何か関与してんのか!?


「祐二さんは昨日どこで何をしていたかご存知ですか?」

「い、いや。知らないですけど・・・多分仕事だったと。それより兄貴がどうして出てくるんですか!?」

「いやー・・ここだけの話ですよ?お兄さんにも内緒でお願いします。」

「わかったから、兄貴がどうしたってんです!」

「つい先日、9/5の朝、ある殺人事件が起きてましてね、その殺された被害者のお知り合いが祐二さんだったんで、私何度かお話させてもらってるんですよ。」

「さ、さつじんー!?」

「ええ。その時、服部さん・・・あ、お兄さんです。だいぶ参ってらした様なのでちょいと気がかりになりましてね。」

「はぁ・・それが昨日の兄貴の行動と何か関係があるんですか?」

「うーん、特にたいした意味はないんですよ。ちょっと気になっただけです。」

「そう・・・ですか。」



その後もいくつか些細な質問を繰り返されて、俺が開放されたのは外も夕闇に包まれ始めた頃だった。



「では、修二さん、あまり気を落とさないように。お気をつけて。」

「はい。では・・・。」


なんなんだ・・・どうして渡辺が・・・・

それに殺人事件に兄貴が関与しているっぽい・・どういう事なんだろう。


そりゃ刑事も俺たち兄弟を疑うわけだ・・・。

殺された被害者達が少なからず俺たち兄弟に関係のある人間なんだしな。


・・・・・・・・・。








そういえば、まだ墓参り・・・してなかった。

途中であの刑事に連れていかれたからな・・・。


今から行こう・・・。



和弘・・・・・・。

俺は少し悲観的になったせいか、うっすら涙目になっているのを隠しながら父の墓へと急いだ。









兄貴が昨日妙な事を言っていたが、別に墓石におかしな物はない。

あるのは色とりどりの花とお供え物くらいだ。


いや・・・これは。

俺は墓石の少し外れた砂利に落ちていた物に目を向けた。

吸殻?

火は付けた痕跡がないが・・・・・・。

風に吹かれて落ちたのだろうか。


その横に楕円形の金属片のようなものを見つける。

なんだろう・・・。


兄貴が添えたんだろうか?

よくわからないがお供え物の上に戻して置くことにした。






帰ったら兄貴にちょっと話を聞いてみよう。なんか嫌な予感がする。

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