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第五幕 「とうとう来てしまった……!!」

 私フィアは困っていた。今日は、じゃなくて

今日も困っていた。っていうか困っている……。

 現実逃避したいくらい困っていた。

その知らせを持ってきた腹黒メイドことリルカは、ニコニコと

小悪魔のごとき満面の笑みを浮かべたままだ。

「……リルカ?」

「はい」

「何の冗談?」

「残念ながら真剣な話ですフィア様」

 リルカが持ってきたのは私の社交界デビューの知らせだった。

いつかは来るとは思っていたが、まさか今日とは。

 私はダンスの授業を受けたことはあるのだが、その時はリード

するのは男性だったので『男としての』リードの仕方は分からない。

 女性がリードしてくれるハズはないので、踊るときは私がリード

しなくてはならないのである。

「……絶望的だあ」

「それだけではありませんよ。服も仕立てなくてはならないですし」

 さらにアルカが私にとどめをさしてくれた。そう、社交界に出るならば

新しい上等な服を来てお披露目しなくてはならない。

 お披露目の式は貴族になったばかりなので以前自分が着ていたものでも

よかったのだが(正確には弟が着ていたものだけど)、貴族になってから

しばらくたってからの社交界ではそうもいかない。

 リルカとアルカが睨みあうのをスルーし、私は頭を抱えていた。

服を仕立てるなら、当然仕立て屋に来てもらわなくてはならない。

 しかも、相手が男にしろ女にしろ、私の正体は確実にバレる。

人の口に戸は建てられない、もし大金を渡して口止めしたとしても、

信用が置けない者なら口が滑るということもあるのだ。

「さらに絶望的だああああああああっ!!」

 ニコニコ(ニタニタか?)笑っている後ろの二人が憎い!!

私は思わずリルカとアルカを睨みつけたが二人の笑みはさらに

深くなるばかりで私のストレスが倍増した。

 まだ若い私の髪が白髪になったり抜けたりしたら

確実にこいつらのせいである。幸い、まだ兆候はないけど。

「大丈夫大丈夫私が寸法を測りますから」

「いやそれはどうかと……」

 名乗りを上げたのはアルカである。公式には私は男となっている

しメイド達も私が男だと思っているから周りの目は気にしなくても

いいのだが、実際には私は女だし非常に困る。

「ふざけるな!! お前なんかにフィアの裸を拝ませるか!!」

 リルカが私の前に立ちふさがった。白い頬を怒りで真っ赤に

染めながらの怒鳴り声である。私はリルカをちょっと見直した。

「私が採寸します!!」

「うん、それなら問題ないな」

 勝ち誇ったようにアルカを見つめるリルカ。その笑みはとろけそうで

大概の男を魅了しそうだったが、どうやらアルカは大概の男の中には入って

いないようで舌打ちしていた。

 しかし、私はあることを思い出す。

「そうだ、公爵家の仕立て屋を使えばいいじゃないか!!」

「「チッ……!!」」

 同時に舌打ちする腹黒コンビ。私はリルカの見直したことを後悔した。

前言撤回である。

「最悪だよあんたら……」

 ボソリと呟いた声にも二人が反応したので、私は慌てて自室へと引き返して

手紙を書きはじめたのだった――。


 二日後、リルカが私の部屋に手紙を持ってやってきた。

手紙の主は、もちろん私の親と祖父である。

 了解した、すぐに仕立て屋を向かわせるとのことだった。

これで服の問題は解決した。残りは、ダンスのリードだ。

 これはアルカに助けを求めることで解決した。

リルカは歯噛みしていたが、リルカも男性のリードの仕方は

知らなかったのだから仕方がない。

 一度踊ってもらったら、アルカはダンスやリードがとても

上手くつい私は彼に見惚れてしまった。

 終わった後で後悔したのは余談ということで。

普通にしていればこんなにかっこいいのに。

 私は彼に嫌われているのだろうか。

「いい加減フィアから離れろ!!」

 リルカがぎゃんぎゃん喚く。それをあおるようにアルカがさらに

私を引き寄せるものだからさらに彼女の怒りに火が注がれる。

 いい加減仲良くしてほしいものだ。

こんなに四六時中ケンカをしてよく飽きないものだと感心する。

 いや感心している場合じゃないか。

「ちょっと、くっつきすぎなんだけど」

 肩をつついて見るが、アルカは一切動じなかった。

「いずれは俺の花嫁になるんだからいいじゃないか」

「ならないから!! ってか勝手に決めるなよ!!」

「だからフィアから離れろって!!」

 私の社交界デビューはちゃんとできるのだろうか。

早くも心配な私だった――。


 「フィア社交界デビュー」なお話です。

今回もケンカしまくるリルカとアルカ。

 困るフィア。彼女の社交界デビューは

無事に終わるのか!? 次回もよろしく

お願いします。

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