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第二幕 「腹黒メイドは本当に怖い」

 私は腹黒メイドであるリルカに、

廊下で正座させられていた。

 文句を言いたかったけれど、

あまりに彼女の目が怖かったので

言うことができなかった。

 目覚めた瞬間、「正座してください、

分かってますね」そう言った彼女の顔は

夜叉にもまして怖く見えた。

 だから私は従うしかなかった。

一瞬だけ、私が主であることさえ

忘れていたほどだった。

 すぐに気付いたけど、睨まれたので口を

出すことはやめた。

 あれ? 何でだろう。目から汗が出る(泣)。


 長々としたお説教がやっと終わり、

解放された私はベッドに倒れ込んだ。

 足が痛い。びりびりとしびれて痛む。

文句を言ったらきっと腹黒い発言を

させるので私は黙っていた。

 ちなみにお説教の内容は、昨日

新しく着た従者に正体がバレたことだった。

 実はあまりに長すぎて右から左に

聞き流していたことはリルカには内緒だ。

 知られたらこんどこそ部屋の内装を

変えられてしまうだろう、本当に彼女は恐ろしい。

 私は心の中を見られる前に、きちんとした

伯爵の服装に着替えて外に出た。

 私の(ていうか伯爵の)執務室には

すでに昨日の従者……あれ?

 名前なんだったか忘れたけど彼がいた。

「おはよう」

「アルカ=レアンだ」

 まず初めにあいさつ返せよと私は

思ったけど言うことはできなかった。

 名前を忘れていたことを見抜かれていたようだ。

私は相当に分かりやすいのかもしれない。

「俺のことを忘れていたとはな」

「ひゃっ!? な、何!?

 お、降ろせよ!!」

 ひょいっ、と私はまるで仔猫のように

首根っこを掴まれてしまった。

 言うことを聞いてくれない腹黒メイド

だってそんなことはしなかった。

 慌てた私は羞恥と怒りで真っ赤になる。

その様子をアルカは楽しげに見つめていた。

 嫌な奴だ。嫌な奴決定!!

リルカよりひどすぎる!!

 リルカが聞いたら憤慨するかもしれないけど、

今彼女はここにはいないからその心配はない。

 私は横目で彼を睨みつけていた。

と、ここで私がさらに慌てるような行動

を彼が取った。その腕に私を抱えたのである!!

 前にも言ったかもしれないけど、私は

深層の令嬢の教育を受けてきた。

 まあ、実際にそんな令嬢にはまったく

なってないけど。なので、男性と触れあったことも

ないしましてや抱きあげられるなんてもってのほかだ。

 顔が熱くなるのを感じて私は彼をさらに鋭い目で睨みつけた。

「な、何すんだよ降ろせよ!!」

「随分軽いな」

「い、一応女だからな!!」

 顔が近く、今にも口と口が近づきそうな

距離に私は慌てていた。

 相手がちっとも顔色を変えないので、

理不尽とは思いながらも腹が立つ。

 彼は女性と触れあったことがあるのだろうか。

「女、ねえ」

 スッと彼の指が動いた。

な、なんと、私の胸をなぞったのである。

「大したことないな」

「ど、どこ触ってんだこのセクハラ野郎があああああっ!!」

 私は彼を蹴りあげると彼の腕から脱出した。

彼が顔色を変えたけどそんなことかまっていられなかった。

 胸を(さらし巻いてあるとはいえ)触られるなんて!!

私はこの男に殺意を抱いた。

 凶器を持っていなくて本当によかった。

持っていたら今すぐにでも犯行に及んでいただろう。

「とても女には見えない言動だな」

「い、今は男装してるからな!!

 それに、あんた相手に淑女ぶってもしょうがないだろ!!」

「ははは、違いないな」

 笑われた。さらに私の殺気が高まっていくのが

自分でもわかる。本当にどこかに凶器ないかな?

 多分よけられるとは思うけど投げつけるか

叩きつけてやりたい。

 ……羽根ペンって凶器になるかな?

そんな私が犯行に及ぶのを阻止するかのタイミングで、

にっこりと一見天使の笑顔を浮かべたリルカがやってきた。

「お茶とお菓子をお持ちしました。

休憩になさってはどうですか?」

 私はちょっとホッとしていた。

リルカはノックをしなかったのだが、

いつものことなので気にも留めない。

 彼には、リルカは非常に愛くるしい

少女に見えているのだろう。

 でも、私には分かる。

リルカは怒っていた。

 彼女は幼いころから何故か

私に執着しているのだ。

 誰かと私が仲良くしていたり、

誰かが私をいじることを嫌い、

そのたびに邪魔をする。

 自分はいじくり倒す癖に。

ひょっとしたらずっと部屋の外で

聞き耳を立てていたのかもしれない。

 恐ろしい娘だ。

「どうもリルカさん、でも、そんなことは

私がやりましたのに」

「いいえ、フィア様のお世話は私のお仕事ですから」

 外面がいい同士二人は気が合わないようだ。

同族嫌悪とかいうやつだろう。

 バチバチと火花のようなものが

二人の間にいきかっていた。

 あ、やばい仕事しないと。

私は二人を無視して仕事に戻ることにした。

 正直お菓子には魅かれるけど仕事を

ためて後で困るのはごめんだ。

 カリカリという羽根ペンの音だけが響く。

リルカとアルカはとりあえず黙ってくれたみたいだ。

 無言で睨みあっているけれど、声は発していない。

腹黒メイドは本当に怖い、意地悪従者もだけど。

 私はそんなことを想いながら黙って

仕事に没頭するのだったーー。



腹黒メイドと意地悪従者が火花を散らします。

お互い邪魔だと思っていますから。

さらに困ったことに陥るフィア。

彼女の運命は!?

 次回は腹黒メイドが本性を

あらわにします。

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