【序:まどろみ】
夢、そうこれは夢、広い、と思う、天も地も曖昧ではあるが広いと感じる。
前の方の空間が白く波立ち、影から色が入り、水になる。
知ってる、スワのお水だ。
水が丘のように膨れ上がり黒い塊が出てくる。あれはナマズ、スワの主様がお水から現れた。
スワの主が釣り上げられたようにするすると上空に舞い上がる。
スワのお水が、樹々が、空が、雲が主を追いかけるように色彩が現れた。
主様が世界を描くように舞い上がっていく。
空高く上空に行く主を見ていると涙がとめどもなく溢れてきた。
これは良くない夢ではないだろうか。
主を止めなくては。
スワの水守を任ずる社の巫女、水弥の寝覚めはあまり良いものではなかった。
夢の記憶は失われる、水弥は手近な紙に夢の事を書いた
「主様を釣り上げる」
・・・・あれ、そうだっけ?
腑に落ちない気分で顔を洗い、朝の身支度を整えているときに
社の者にこの話をしたら
「主様を釣り上げた?そりゃ景気がいいなぁ、縁起良いじゃないか。」と笑顔
いやいや、縁起というか雰囲気は良くない夢だった
・・・筈
・・・と思う
朝餉をいただく頃にはもう完全に自信はなくなっていたけれども、何かよくない夢を見たという感覚は残っていた。
社から向かうスワのお水は今日も雄大で、山の緑に囲まれている。
山の向こうには夏の雲が白くそびえ、蝉の声と共に空の青を支えていた。
**** 余談 ****
諏訪湖
長野県岡谷市、諏訪市、諏訪郡下諏訪町にまたがる湖。
河川法では、天竜川水系の一部として扱われる。
**** 余談 ****




