第8章
【第八章】
「中央から伝達。明後日、最優秀勢力を確定するとのこと。」
須哩の重鎮が集まり、会議をしている席に、伝令が知らせを持ち込んだ。
当時、須哩の評価は資源州に進出していないにもかかわらず、第一位であった。
「久しぶりの皇帝からの褒美の機会ですかな。」
「このぶんなら、大丈夫でしょう。」
談笑する者たちの中で、瓊が口を開く。
「現在、私たちへの評価の大きな対象となる、城の制圧については、州内のほとんどを終えているので、これ以上の大きな評価は難しいかと。一方で、第二位、第三位の評価を得ている荊楚の勢力は、資源州・江漢や関中、さらには司隷にも手を伸ばしております。複数の勢力が奪い合っているとはいえ、まだまだ功績を上げる機会が残っております。」
諸将は手を止めた。
「先ほどの知らせ、全土の各勢力に届いておりましょう。ここから一気に追い越しを目指すかと。」
瓊の予想は当たった。荊楚の二大勢力、虎王と千梅。この二つが第二位・第三位を占めていたが、虎王が一気に資源州での攻城を果たしていった。ジリジリと評判をあげ、ついには追い越して引き離しにかかった。
「我らは専守防衛。巴蜀から打って出るつもりは、今のところはありませんが、資源州への入り口、漢昌と宣漢を、防衛の建前に手中に収めましょう。」
「それでなんとかなるか。」
「我らの団結は、我ら自身がよく知っておろう。檄文を回そう。練兵、軍事屯田、放棄地の獲得整備。できることを我ら全てが実施すれば、わずかずつとはいえ、評価はあがろうぞ。」
昇にそのように言われて、なるほどと得心しながらも、さてそれが、順位を覆す程までになるか。その不安を胸中から拭うことは難しかった。
そこへ、客が訪れる。巴蜀で須哩と思いを併せながら軍勢を率いていた、悟公である。
「惹州公殿、ご機嫌麗しゅう。さて、本日は、我ら常滑一同が、軍勢を解き、全員で須哩に合流したく、その許しを得に参った。いかがか。」
とてつもない朗報。いや、吉兆と言ってもよかった。常滑が治めていた三つの城、そして構成員の治める領地、これらが須哩の下に集うのである。断る理由など微塵もなかった。
「なんとも嬉しいお申し出。我ら一同、皆様を心から歓迎いたします。」と惹州公。
ただ、問題が一つ。軍勢を解く際、支配していた城は一度解放され、改めて武によって抑えねばならない。しかし、その動きを荊楚に悟られれば、資源州での城取得は加速するであろう。
「では、暁に三つ同時に落としましょう。中央が評価をくだす、その直前に、同時に三つ。」
「いけるか?」
「今の我らなら、周到に準備さえすれば。」
「よしやろう。兵の移動は深夜。夜明けと共に、三城を一気に落とす。合わせて、常滑のご一同の加入もその時刻に一斉に。たとえ、それでも第一位に届かずとも、我らなりにできることをやり尽くそう。それでこそ、須哩だ。」
こうして「暁の大攻勢」は行われることとなった。部屋の隅で、青年剣士・羅宗が、嬉しそうに剣を研いでいた。
【章末】