第6章
【第六章】
迎えた成都城攻略。巴蜀州を統べる大城である。いかに須哩といえども、油断はできぬ。
中央では綿密な計画が検討された。
まず、駐城部隊の排除。無闇に攻めかかっても返り討ちにあう。そこで、戦闘力を高め切った部隊をまず突入させる。結果如何を問わず、半刻後にその他の殲滅部隊を突入させる。そして、駐城部隊排除を確認した後に、攻城兵器部隊を投入する。
「殲滅部隊用に成都近隣に幕舎を築かせましょう。どのような猛者も傷つきます。それを回復させる幕舎は必要不可欠です。」
「事前に、この三段階の攻撃手法を周知しておくが良かろうかと。儂の方で各部隊へ書状を送ります。」
「うん、その辺の段取りは両指揮官に任せた。」
惹州公が承認・指示する。
一時、静寂が流れる。そして昇が口を開く。
「殿、今回、全力を尽くしても失敗するかもしれません。諸将にもそれぞれの都合があるでしょう。どれほどの部隊を動員できるか。」
「250も集まってくれたら、なんとかなりそうだね。」
「上様。皆を信じましょう。焦りを捨て、二日、自強の時を設けました。彼らならその力を発揮したくてウズウスしていると思いますよ。」
「そうだね。」
櫓の上から、渾身の力を持って昇が時を刻む大太鼓を鳴らす。巴蜀全土へ響かんばかりの大音声である。
成都周辺には、膨大な数の部隊が集結していた。
「どれほどいるか数えようとしましたが、肉眼では数えきれませなんだ。」
と、櫂が言う。
「大丈夫、須哩だよ。みんな笑顔で集まるよ。」
ついに時が来た。
「精鋭殲滅部隊、突撃ぃ!」
昇が叫びながら軍配を振る。駐城部隊がジリジリとその数を減らしていく。
「半刻です。」
昇の従者が告げる。
「殲滅部隊、突撃!諦めるな!傷付いたら無理せず幕舎へ引き、回復に努めよ!あきらめてならぬ。諦めてはならぬぞぉ!」
昇が叫ぶ。
ややして殲滅部隊が壊滅した。
「早い!」
諸将が驚く。これほど早く駐城部隊が消えるとは。
「よし、時じゃ。攻城兵器部隊。進軍。手を緩めるな。攻め立てよ!」
「申し上げます。物見の報告によれば、参加部隊は、その数300を越えました!」
中央幕舎に「おおっ」と歓声が満ちる。
失敗するどころではない。予定時間の半分も使わずに成都城は陥落した。
「おおおおおおお。やったぞぉー」
「さすがじゃ、皆、さすがじゃぁ」
須哩一同に感動と笑顔が広がる。
「みんな凄いや。自強の二日。みんな頑張ったんだね。更にこの参加数。みんな、須哩が好きなんだ。私はそんなみんなが大好きだぁ。」
惹州侯が目に涙を溜めながらも笑顔で叫ぶ。
【章末】