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世界最強リサイクル ~追い出された英雄達は新世界で『普通の暮らし』を目指したい~  作者: おおいぬ喜翠
第六部 天界編

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596 周年祭②

「今回の振り返り映像は私とジスカール、後はガンナーとロボ太郎に協力して貰いましたよ」

「えーなんか前回より更に凝ってない!?」

「ヴィクトル支給のノートパソコンに動画編集ソフトが入っていたからね。カイの魔道具と併せて編集しているんだ」


 去年の完成式で披露された村の歴史ムービーは、カイが自身の記憶から映像を抽出し魔道具で編集・出力した物だった。今回はロボ太郎に全てのデータを入れたようで、暗幕の必要も無く広場に大画面が投影されている。


 まずはダイジェストで最初の村完成までの軌跡。ナレーションも引き続きカイだ。以前と違うのは、台詞内に“新世界暦”の日付が入っている事だった。


「やっぱり年月が入ると歴史って感じがするわネッ!」

「去年の映像観たけども、今年は儂らも入っとるんじゃろ! 楽しみ~!」


 画面には去年の完成式のダンスシーンと夜空を彩る花火。この辺りは既に“新規映像”だ。ロマンチックなBGMと共に更けて行く祭の夜に、メイやリエラがうっとりした。直後、急にBGMが切り替わる。


『――村の完成式翌日、新たな危機が訪れました』


 不穏なBGMと共に画面を埋めるのはテーブル上で野菜をシャクシャクやっているカピバラの神の姿だった。


「うわっ、懐かしい! そうそう、最初カピバラだったよね~!」

「この辺はおれの記憶データから抽出してる」

「おら達は人型の神どん達しか知らねかったけど、これが……! 村のカピモット人形の元祖だな……!?」


 カピバラの神の来訪からの“凶兆”達が来るという知らせ。天界の神達を相手取っての交渉、“戦場”の構築、そして“凶兆”達との対面――と、当時居たガンとカイの記憶から抽出した映像を使って物事は進んでいく。


「去年より編集技術増しとるの! ナレーション付きの無声映画みたいになっとる……!」

「でしょう、そうでしょう! 私の記憶映像と違ってガンナーの記憶データは細かく編集出来る状態だったので、映画のような演出にしてみました!」

「悪そう! “凶兆”達マジで悪そうでござる~!」


 ガンの記憶データは精密で鮮明だった為、凶兆全員の引き画から各自の寄り画まで映画風に編集されている。台詞は無いものの、立ち居振る舞いだけで明らかに悪そうでカグヤが目を丸くした。


「カーチャンの戦い以外は画面越しに観戦してたからデータ提供したぞ」

「わたくしが戦っている時は、あなた死にかけていたものねえ」

「つまり俺の格好良い雄姿が記録されているという事だな!?」

「ダイジェストですが、ちゃんと格好良く編集しましたよ」


 画面内では皆がばらばらにされ、個別に戦い始める。最初はガンとレックス、シェルヴィンとの戦いだった。予告通りダイジェスト記録だが、苦戦し窮地に陥った所へ小人達が駆けつけてくれたシーンは確りと入っている。それを見て小人達が一斉に歓声を上げた。


 弱くとも勇気を出して戦った小人代表団達を、子供小人達が英雄を見るような目で見上げる。大人の小人達も讃える顔で拍手を惜しまない。ノックノックやオッチョオッチョら小人代表団の面々が、はにかみながら一礼した。その間にも映像は進み、画面内ではレックスとシェルヴィンが倒された所だ。


「ガンさん視点だから遠いのは仕方ないが何が何やらだな!」

「あー、簡単に説明すると遠くから狙撃しまくって、最終的にブラックホールに吸わせて二度と蘇生出来ねえよう永遠に磨り潰した感じだ」

「説明されてもあんま分からん上にえぐいんじゃわ……!」

「こ、小人達の勇気がガンさんにイヤボーン現象を起こさせたっていう尊い回だよね! ね……っ!」


 リョウが必死でフォローをする間に、映像が無いベルの戦いがナレーションで説明された。戦い自体は圧勝であった事と――モニコが異世界転生者であり、アクウェル達を唆した黒幕であった背景なども語られる。


「ガンさん、ベル嬢、ときたら次は俺か! 俺だな!」

「その前にマモ神なんだよなァ~!」

「はっ! ベル氏! 戦闘映像が無かったベル氏ではござらんか!」


 音声は無いので何を言っているかは分からないが、ベルが神の欠片を握ってギチギチ言わせている映像が映った。台詞は無いが、明らかに慌てているカピバラの姿も映っているので皆大体察する。その内、ブラックホールに飛ばされた欠片が戻り、マモ神がマーモットの形になって床へと降り立った。


「わあ懐かしい! 最初本当にマーモットだったよね……!」

「マモ神どんお可愛らしい……!」

「俺の! 出番は! まだか!」

「ほらケン! 今からケンの出番ですよ!」


 ガンや小人の治療シーンは割愛されて、画面内ではケンとグランガルムの激しい戦いが流れ始めた。皆感心して眺めるが、どうしても気になる事がある。


「あの……グランガルムにモザイクすっごい掛かってるんだけど何これ……?」

「ほら、子供が見る可能性もあるっていうか現在進行形で見ているじゃないですか……ケンが多彩な方法でグランガルムを殺めていたので、流石に刺激が強過ぎると思いまして……」

「あ、ああ……!」


 ケンがグランガルムを殺す度にモザイクが掛かった。ウルズスは兎も角、子供小人もリエラも見ているし、今後村の他の子供が見る可能性だってあるのだ。当人は物足りなさそうにしているが、大事な配慮であった。


「後半は殺し飽きてシンプルに殺していただろうが……!」

「シンプルだろうが駄目ですよ! 赤ちゃんだって見てるでしょう……! ほら、ケンの格好良いシーン始まりますから!」

「むう……!」


 ベル提案の『救済』が始まり、グランガルム世界の滅びた魂達が二人を囲んだ。どんなやり取りがあったかは聞こえない。だが魂達は全てケンへと吸収され――剣を振るわれたグランガルムは、二度と立ち上がらず粒子になり還っていった。


「さ、最後までグランガルムにモザイクが掛かっていた……!」

「おれの記憶によると、グランガルムはケンを見て死ぬほど吐いてたし、最期は首を斬られてたからモザイクだッたんだろうな……」

「悪鬼が余程恐ろしかったんじゃろなあ……気の毒に……!」

「俺は吐かれて地味に傷ついたのに……!」


 過去の傷が再燃しつつも、映像は進んだ。全ての神の一部を取り戻したカピバラの神がゴールデン化した一幕を挟み、カイと魔王イモルヴァスの戦いが流れる。これまた劣勢からのイヤボーン現象による第二段階への変身。ベルがうっとりした。


「ああ、カイ……! とっても素敵よ! この時はわたくしの為に怒ってくれたのだったわねっ!」

「え、ええ……はい……まさかあの姿を貴女に見られているとは思わず……!」

「わたくしが嫌う筈ないでしょう! 寧ろ凄く恰好良いわ!」

「嗚呼、ベル……!」

「イチャつきよる……!」


 盛大にイチャつかれながら、イモルヴァスも撃破。映像は最後の勇者同士の戦いへと移る。画面ではアクウェルがマモ神世界の魂達を人質に取り、リョウを苦しめている所だった。


「リョウどんに何て事を……! 人質までとって! 許せねえ!」

「悪いッ! シンプルに悪ゥいッ! ちょっと顔が良いからって許せることではないでござるゥ~!」

「……? これもうケンちゃん戦い終わってるわよネ? カイちゃんの時もだったけど――助けに行かなかったの?」

「ちょ……ジラフさん古傷を……!」

「ジラフそれは禁句です……!」


 アクウェルの所業にメイとカグヤが怒り狂う横、ジラフが怪訝そうにケンを見た。同時にリョウとカイが胸を押さえる。


「わはは! 男子おのことして更なる覚醒を促す為! 敢えて放置した!」

「そう……男子塾なんで……」

「ええ……そういう感じでして……」

「歯切れが悪い! 言い切れ!」

「増援なんか不要でしたァ! 僕は覚醒し男子としてやり遂げてきたんですッ!」

「私も同じく覚醒し男子としてやり遂げて参りましたっ! 増援は不要でしたっ!」

「うぅわぁ、恐怖政治マジでヒくんじゃわ……!」


 男子おのこ塾の過酷さに皆が一瞬視線を反らしたが、画面内ではリョウの反撃が始まっており――メイを皮切りに小人達から大歓声が上がった。

お読み頂きありがとうございます!

次は火曜日更新です!

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