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世界最強リサイクル ~追い出された英雄達は新世界で『普通の暮らし』を目指したい~  作者: おおいぬ喜翠
第一部 村完成編

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46 バカ風呂ツアー

「どうしよう脱衣所でもうバカ風呂の匂いがするぞ」

「だろ」


 薄絹を潜った先はまず脱衣所だった。此処にも暖炉が設置されており、暖かさの他に光源として豪華な室内を照らしている。


 足元には見慣れない石板が敷かれていた。着替え用だろう棚やスツールも置かれている。のだが、まず棚やスツールのプレート部分が大理石だ。支柱部分の木も今まで見た事が無い。恐らく黒檀だ。

 一角には倉庫から出したらしい猫脚のテーブルと椅子、鏡や小物が置かれておりドレッサー風に仕立てられていた。キャンドルも複数置かれてめちゃくちゃお洒落空間になってしまっている。


「この床は溶岩石だ。多孔質構造により優れた吸水性・速乾性を持っている」

「わあ、脱衣所の床にぴったりだね!」

「うむ、俺が注文してガンさんに探させたのだぞ!」

 

「この白い石は大理石だ。黒い木は黒檀だ。ケンの指定だ」

「大理石のホワイトマーブルと黒檀のコントラストがとても美しいです。作りといい、ケンのこだわりを感じますねえ……!」

「そうだろうそうだろう、俺がガンさんに探させたのだぞ!」

 

「つうか指定素材は毎度全部おれが探して来てんだよ」

「解析能力があるばかりに使われちゃって……」

「温泉探索の時もそうでしたからね……」

「カイさんもか……」

「採掘加工運搬は俺が行っているのだから良いだろうが……!」


 ひとまず適材適所という事になった。


「で、あとは内壁とか色々やりたいらしいんだが、そこはまだ途中だ。風呂入るからとりあえず此処で脱いどけ」

「これ以上何をするつもりなんだよこの人――あ、はい」

「本当にこれ以上何を……あっはい」


 素直に脱ぐ。ケンとガンも脱いだ。全員で入るらしい。

 そして棚に置いてあった、木を刳り貫いた桶が各自支給される。


「風呂セットの支給であるぞ! 各自後で桶に名前を彫っておくように!」

「マイ桶あるんだ……! 嬉しい……!」

「リョウ、中にへちまスポンジも入ってますよ……! 嬉しいです……!」

「あとこれ、ほら」


「ウワーッ! 石鹸だ……! 完成したんだ……!」

「石鹸……! というか石鹸皿ソープディッシュまで大理石じゃないですかぁ……!」

「嘘でしょ豪華過ぎる……!」

「それはなんか切った余りで作ったらしい」


 無駄に豪華な石鹸皿と出来たて石鹸まで貰い、先程までまだ仕事に後ろ髪を引かれていた二人は完全に飲み込まれた。ちゃんとした室内風呂は此方の世界に来てから初なのだ。しかも石鹸で全身が洗えるのだ。この先どんなバカ風呂が待っていたとしても、それに勝る喜びがあるだろうか。

 

「ふはは、良き感じに調子が上がって来たな! では行くぞ!」


 大浴場に面する引き戸をケンが勢いよく開ける。

 先には――――バカ風呂が広がっていた。


「ウワーッッ! バカ風呂だ! バカ過ぎる!」

「だろ?」


 リョウが大浴場を見て放った第一声。ガンが深い同意を示す。


「何故だ!?」

「いや、凄いんだ! 凄いんだよコレ! 何がバカって今の暮らしと環境でコレを作っちゃった所がバカ過ぎる! 見てほらカイさんなんか絶句してるほら!」


 一言で表すと、予告通りの“総大理石で獅子の口から湯が出る広い風呂”だった。確かに天井壁床柱、浴槽に至るまでちゃんと総大理石だ。

 そこまではまだいい。別に良くないがいい。どうせ採石地からケンがパワーに物を言わせて切り取って来たのだろう、なのでそれは置いておく。


 問題は“こしらえ”だった。

 豪華なローマ風呂を想像すると近いかもしれない。古代の神殿が如き太い柱にも壁にも天井にも緻密で美麗な彫刻が施されている。

 踏み入った正面に円形の大きな湯舟があり、予告通り大理石の獅子の口から湯が吐かれている。大きな湯舟の左右にもそれぞれ小さな湯舟があり、そちらにも女神像やら天使像やらが湯を注いでいる。

 浴場内にも外と同じ――否、明らかに飾り彫りされた石の篝火台が複数設置されており、ケンが火を灯していく毎にバカ風呂の全容が露わになっていく。


「獅子はいいよ、聞いてたよ。そこらじゅうの彫刻と彫像なに?」

「む、俺が彫ったが」

「竹籠も編めないのに!?」

「そこか! 俺は手がでかくて指が太いだろう! だから編むような細かい作業は苦手なのだが、刃物で切ったり削ったりという事なら無敵であるからな!」

「これ剣術の範疇なの……!?」

 

 彫像を三度見位する。どこに出しても恥ずかしくない立派な獅子や天使や女神像達だ。今の生活基準で絶対要らない。バカ過ぎる。


「じゃあ、えーと、あのー……ああもういいや……」

「全部ツッコむのやめとけリョウ。疲れッから」

「はい……」

「………………………………ッえっっっすっごいですね……!」

「カイさん今なの!?」

「はい、あまりの凄さに絶句しておりましたよ……」


 ひとしきり初見のバカを二人に堪能して貰ったので、後は手短にガンが解説をしてしまう事にする。


「今の所はどの浴槽も同じ湯が入ってるんだが、将来的に左右の小せえのは薬草入れたりとか変わり湯にしたいらしい。後そこらで火が燃えてるが、換気はちゃんと出来てる、安心しろ」

「ふむふむ、外から湯を引き込んでいるのですね」

「そそ、かけ流しだからいつでも新鮮な湯だよ。排水は川に戻っちまうから、あんま変なもん流さないように」

「はあい」

「で……、……」


 説明を続ける傍ら、ケンが何かやっているのを一瞬見咎めたが、無視して説明を続ける事にする。


「洗い場此処な。この湯が出てる所はシャワー代わりっつうか、打たせ湯? にしてもいいッてケンが言ってた」

「あっ、ミニ獅子居るう……」

「可愛いですねえ……!」

 

 浴場の一角――壁に生えたミニ獅子から打たせ湯のように湯が零れているのと、桶でも掬いやすいよう小さめの湯溜まりが作られた場所。石鹸などが置けるよう段差も作られており、木製の風呂椅子まで置かれていた。

 此処はすごく良い。ミニ獅子以外はすごく良い。


「で、あの……ガンナー……」

「えっ、カイさん触れちゃう……?」

「触れんの?」

「触れないのも怖くないですか……?」

「ま、まあそうだね……」

「いいぜ」


 おずおずとカイがケンの方を指差す。だが言葉を発さないので、渋々リョウが口にする。


「あの、ガンさん……」

「なに?」

「あちらの地獄の祭壇で待ち構えてる悪鬼みたいなのは何なんですかね……?」

「ああ、あれな……」


 ガンも視線を遣る。また別の一角、大理石のベッドのようなものが置かれており、ケンが傍らで温度を確認したり布を敷いたり謎の小瓶を取り出したり何やらしていた。否、準備が整ったようで笑顔で手招きしてくる。


「あれは……マッサージ台らしい」

「マッサージ台!?」

「マッサージですって……?」

「その通り! マッサージ台だ!」

「うわっ気付かれた!」

「ずっと同じ空間に居ただろうが! いいから来い!」


 いいから来いされたので仕方なく寄っていく。


「ケンさん、セラピストが居ないからどうのって言ってなかった……?」

「うむ、居ないなら仕方あるまい俺がやるか、という意味だが?」

「えっ」

「ええっ」

 

「これはな、試作品でな。岩盤浴の方に流用する予定なのだが、中に源泉を通しているから寝転んでも暖かいのだ。さ、寝てみろ」

「えっ……いや……」

「寝たらマッサージされません? 大丈夫ですか……?」

「……? するが……?」

「ええ……いや……」

「ですよね……その…………」


 ケンが何故渋られているのかまったく分からない顔をする。ガンは何とも言えない顔をする。


「あの、すみません……ちょっと握り潰されそうで怖いんでマッサージ師さんチェンジして貰っていいですか……?」

「何故だ、俺は上手いぞ? 妻や愛人達にも好評であったが……?」

「いえ、それはそれで何かこう、ケンさんに気持ち良くされちゃうと僕の中で何か不名誉になっちゃうんで、ほんとすみません、チェンジで……」

「ふぅむ……複雑な男心なのだな? 分かった、良いだろう。ガンさん」

「えっおれ!?」


 いきなり抜擢されてガンが吃驚する。吃驚したが一応ケンと立ち位置を変わる。

 

「……おれ人生で一度も人間なんか揉んだ事ねえけどいい?」

「逆に何なら揉んだ事あるの? すみません、チェンジで……出来れば若くて巨乳で可愛い腕の良いマッサージ師さん居ませんかね……?」

「居る訳ねえだろ、バカか」

「若さと可愛いを取るならガンさん、巨乳と腕なら俺になるが」

「おい可愛いと巨乳部分。それは巨乳じゃなくて胸筋だ。バカたれ」

 

「なあ、というかこの物言い! リョウさん行っていないと言いつつ絶対行っていただろう、夜の店!」

「いいい行ってません! 自主的には行ってませんって……! 接待だって言ったでしょう!?」

「それは行ってるという事だろうが!」

「なあ」

「どうしたガンさん!」

「…………さっきからカイが気配消してタゲられんよう姑息にしてんだけど、それはいいのか?」


 一斉にカイを見る。

 気配を無くしモブに徹していたカイが悲鳴をあげた。


「やめてくださいガンナー……! 潜んでいたのに……!」

「カイさん!?」

「なんだと!?」

「もうジジイがジジイを揉めば良くね? 解決じゃね?」

「あっ、僕はそれで全然……」

「リョウ……!?」


 リョウとカイは互いに味方をすると誓い合った筈だが、こういう時は互いを売るという事が立証された。


「ふむ、ではカイさん横に……」

「待ってください……! 此処は間を取ってガンナーでどうでしょう!?」

「何の間取ったんだよ」

「ほう」

「そそそ、そうだね! ケンさんガンさん大好きだし良いんじゃない!?」

「それ何か関係あんのか」

「あるよ! 僕やカイさんは危険なんだよ! うっかり握り潰されても笑って済まされちゃうんだから僕らは……!」

「そうですよ……! 日頃の扱いが違うんですよ……!」


 リョウとカイはこういう時、互いを売る事もあるが、他に生贄がいる場合は結託するという事も立証された。

 

「わはは……! それはある!」

「あんのかよ」

「ガンさんお願いします……!」

「ガンナー……! 何卒なにとぞ……!」

「ハーッ、しゃーねーな……」


 結局ガンが台の上に転がった。


「おい、おまえらがおれを売った事忘れねえからな。覚えとけよ」

「はい……」

「はいぃ……」


 二人ともガンにめちゃくちゃ睨まれながら、マッサージ見学をする事となった。

あけましておめでとうございます!

皆様よき一年をお過ごしくださいませ!

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