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世界最強リサイクル ~追い出された英雄達は新世界で『普通の暮らし』を目指したい~  作者: おおいぬ喜翠
第五部 ファナティック編

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436 多対一

 翌朝も早起きし、ジラフを陣頭にケンとガンと小人達で大量の朝食を作った。


「リョウさんはこれを毎度三食やっているのか! 偉いではないか!」

「此処までの量は流石に毎回作って無えだろ……!」

「ほらそこッ! 喋ってないで手を動かすッ!」

「うむ!」

「おー」


 何があったかは知らないが、今朝のジラフはやたら元気である。活力というかエネルギーが有り余っている感じで動きまくっている。


「ジラフさん今日は特に元気だな! 何か良い事でもあったか!?」

「イヤン漢女おとめの秘密なんだから聞かないで~ッ! ジスカールちゃんと手繋ぎで同衾した位よおッ!」

「全然秘密にしてねえ……!」

「成る程な! 普段より肌艶が良い訳だ……!」

「ウフーッ! 恋が女を綺麗にするってホントねェ~ッ!」


 機嫌良さげにジラフが大量のチキンスープが入った激重の大鍋をヒョイと持ち上げる。確かに御肌も艶々のぷるぷるであった。今朝のメニューは昨晩よりは凝っていないが、それでもたっぷりの主食副菜を揃え、全ての栄養素とカロリーを取れるようにしてある。元気な者には豪快に焼いた肉や魚、まだ弱っている者にはお粥を用意するなどの配慮もあった。


「あ、あと今日ケンと狩り行くから弁当欲しい」

「そうだったわネッ! 出かけるまでに作ってあげるッ」

「肉だ! 弁当は肉がいいぞジラフさん!」


 賑やかにしていると、リョウとカイ、メイとカグヤの完全回復ではないが比較的動ける組が起きて来る。朝の挨拶を交わし、席に着いて貰った。


「ジラフさん達、僕の仕事なのに任せちゃってほんとごめんね……! もう少し回復したら手伝うから……!」

「いいのよォ! いつも作って貰ってるんだから、しっかり休んで頂戴ッ」

「おらも、座って皮剥きだとかなら手伝えるので……!」

「農場と牧場の様子も気になりますし、早く回復しないとですね……!」

「拙者も洗濯が溜まるのではないかと心配で……!」

 

 口々に村の仕事を心配する様子に思わず笑ってしまった。


「安心せよ! 小人達も手伝ってくれておるし、俺達だけで何とかなる! まずは完全に回復する事だな! ちなみに牧場は今タツさんとトルトゥーガさんが見にいってくれておるぞ!」

「そうだよ。最悪手ェ足んなかッたらファナティックに手伝わせりゃいいだろ。どうせ暇だろうし」

「あの人畑仕事出来るの?」


 泥に塗れて畑仕事をするファナティックはちょっと想像出来ない。


「畑仕事位できますけどォっ!? ですがするとは言ってませんのでェっ! 後吾輩わがはい決して暇人ではなァいっ! 結構忙しいんですからねェっ!」

「うわっ出た!」

「おはよう! ファナティックさん!」

「おはようございますっ! 生憎畑仕事は手伝いませんがァっ! 試練後の皆さんの得たスキルや能力の確認などはアフターケアでさせて頂こうとは思っておりますよォっ! という事を伝えに来たので!」

「ついでだからファナティックさんも朝飯を食ってゆけ!」


 ケンにガッシと掴まれ着席させられた。『エーッ! 仕方ないですねェ!』等と言いつつまんざらでもない顔をしている。それを見越してこの時間に来たんだろうがという顔をジラフが滅茶苦茶した。


「確かに! 拙者も新技を色々覚えましたので効果の詳細など確認しておきたいでござるっ!」

「ンンッ、そうですねェっ! アナタの新技はちょっと面白の癖に取り扱い注意なのできちんと用法を教えておきませんとォ……!」

「面白技だと!? 俺も見たい!」

「はいッ! 我が現人神ケン氏の御立派にインスパイアされた必殺剣を拙者編み出しましてっ!」

「ケンのイチモツにインスパイアされた必殺剣ってなんだよ!」


 明らかに響きだけで酷いのでガンが目を剥いた。


「ガンナー氏申し訳ない……っ! ガンナー氏の腹筋を絡めた必殺は生憎! ですが氏の腹筋は辛い時に何度も思い返して拙者を慰めてくれたでござるよ……っ!」

「おれの腹筋技は編み出さんでいい……っ!」

「わはは! 流石俺の御立派である! 苦しゅうない!」


 しょうもない話をしていると、ベルと車椅子のジスカール、それを押す人型(着衣)ウルズスとリエラも合流した。


「皆おはよう。今日は試練組で元気で動けるっていう人は順番にファナティックと面談して頂戴。試練で得た能力の確認と不安点の解消よ」

「今丁度その話をしておりましたよっ!」

「あら、それは良かった。食後にわたくしも皆の体調を確認するからその後でね」

「はあい」

「はーい」


 皆良いお返事で、その後牧場を見に行っていたタツとトルトゥーガも合流して朝食が始まった。


「結局ファナティックさんっていつまで居るの?」

「皆が回復し、アフターケアが万全となるまでは滞在を許したぞっ!」

「よくってよケン様。居る内に搾り取れるだけ搾り取らなくてはね」

「言い方ァっ! ……まあ、愛しの英雄達との触れ合い代と思って、許される範囲でしたらね……っ」

「ふふ、君は頼られたり甘えられると弱いものなあ」

「教授は余計な事を言わなくてよろしいっ!」


 皆試練では結構酷い目に遭っているのだが、得た力はあまりに大きく納得というか――若干ファナティックに対する態度が軟化していた。良い言い方をすれば『むかつくけど結構いい事してくれたな。思ったより悪い奴じゃなかったな』で、悪い言い方をすれば『むかつくけどこいつ便利だな。居る内に搾れるだけ搾る』である。


「ジスカールさんはまだ車椅子か! 体調はどうだ?」

「昨日に比べたら大分良いよ。立ったり歩いたり出来ない訳じゃないんだが、凄くゆっくりだしふらついてしまう。もう少し回復したら、杖で散歩のリハビリから始めようかと思っているよ」

「そうか、ゆっくり回復するが良い!」

「ありがとう。暫くは碌に動けないが、その分勉強しておくからね」


 そこで思い至って、ジスカールが試練で得た自身の“神の眼”の説明をする。この眼はエーテルや魔力、霊だとかそういう物を飛び越えて直接『ことわり』を見る事が出来る、簡単に言えば超鑑定が出来る代物だという事。だが制御しきれていないので、普段は抑制し暫くの間は制御を課題にする事など。


「おお、じゃあもうどんな言語も読めるんだな」

「女風呂覗いたり出来るかの!?」

「覗けたとしても覗かないよ……!」

「神の眼は教授の元より持ち合わせている超感覚的知覚と相性が良く、また知覚の方も強化されてますからねっ! 完成すれば非常に役に立つと思いますよっ!」

「うむ、解析支援系が増えるのはとても宜しい!」


 主人公たる英雄達が揃っているから仕方ないのだが、多くは戦闘特化で解析や支援系の頭数は少なかったから戦力増強としても良かった。


「にしても、こんなに皆レベルアップしてしまって……拙者達は一体何と戦わされるのでござろうなあ……」

「だよなァ。それに関してはこいつ一切ヒントすらくれねえけど」

「教えてくれてもいいのにねえ」

「おらもそう思います」

「クソァ! これみよがしィっ! それだけは言えませんからァっ!」


 全員の視線を受け、ファナティックが噴きそうになったが堪える。


「そう、それだ! この際何が来るかはどうでも良い! 時期が知りたいのだファナティックさんよ!」

「時期も言えませんけど!?」

「いいか! もうすぐ――年内にはこの二人の結婚式があるのだ! そこに被るかどうかだけは聞いておかねば色々と支障が生じる! その位は良いだろうが!」

「エーッ! おめでとうございます!?」


 結婚式はおめでたい事なのでひとまず賛辞は述べたものの。ファナティックが物凄く難しい顔で悩み始めた。


「や、いや、エーですねェっ、そうか、結婚式……いや……」

「農作物の刈り入れとかにも影響してきますし! 時期は大事ですよ!」

「そうだよ! 戦いになるなら食料だって貯蔵しておかないといけないし!」

「神視点のあれそれに日常ごと捻じ込むのやめて貰っていいですかねェっ!?」

「何言ッてんだ、おれらは日常を生きてんだよ。最重要事項だろうが!」


 皆に詰め寄られ、ああううとファナティックが首を捻りまくった。


「分かりましたっ! そこは、そこは一応上に確認しておきますっ! おきますので今日の所は保留にさせてくださいィっ!」


 皆で詰め寄るの、結構効果があるなとこの時全員が思った。ひとまず『問い合わせ』を引き出せただけ良しとしよう。

お読み頂きありがとうございます!明日は一日お休み頂き、次回は明後日更新となります!

また今後、リアル都合により週に一度はお休みを頂く事になると思いますよろしくお願いします!

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