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世界最強リサイクル ~追い出された英雄達は新世界で『普通の暮らし』を目指したい~  作者: おおいぬ喜翠
第五部 ファナティック編

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362 祝福交換

「小人達の結婚式も一緒に?」

「うん、良ければなんだけどどうかな? メイさんと二人で話したんだよ」


 メイとの相談を終えたリョウが、まずケンに新居の事を報告に行き、それから魔女の屋敷を訪れ今はベルにドレスと式の報告兼相談をしている。


「小人カップルが続々成立した辺りで確かケンさんが『盛大に結婚式をしてやらねばな!』って言ってたじゃない? けどまだしてないよね? 僕もメイさんも、小人さん達を差し置いてお式をするのはどうかなと思ってさ……」

「成る程、それで良かったら一緒になのね」


 魔女の屋敷の応接室、ベルが納得して頷いた。


「確かに村の行事としての結婚式は行っていないわ。四十軒もの新居の建設が優先だったし、全て終わる頃にはもう妊娠が発覚していたし」

「だよねえ」

「けれど結婚はもうしているのよ。わたくしが全てのカップルの婚姻を認め、祝福を与えたから。村を挙げての式や宴会をしていないだけで、小人だけの内々のお祝いはしている筈だし――村からもお祝いで金のどんぐりを贈ったでしょう?」

「あ、そうなの? いや、どんぐりの件は知ってるけど」


 色々リョウの知らない所で事は進んでいたらしい。


「気にするといけないから説明しておくわね。小人と人間では風習が違うのよ。彼らは主人に承認と祝福を貰い、仲間内でお祝いをし、親愛なる友『人間』から贈り物を貰った。それでもう人間でいう結婚式は終えて満足くらいの認識だわ」

「成る程、ケンさんは当時それを知らなかったからああ言ったのか……!」

「ええ、けれどケン様もあなたも、気持ちは有難いわね」


 ベルが感謝するよう微笑んだ。


「いや、風習が違うなら仕方ないよ。少し残念だけど。勿論言葉でお祝いは伝えてあるんだけど、もっと盛大に祝える機会があると思ってたからさ……」

「そうよね。もっと早くに説明しておけば良かった。悪い事をしたわ」

「いやいや、幸せならいいんだよ。それどころじゃない事も沢山あったし、基本小人さん達とは仲間だけど全ての生活が一緒な訳じゃないしねえ」

「ええ、そうね。けれど――リョウ、少し待って貰える?」

「うん……?」


 ベルが少し思案し、鈴を鳴らして長老を呼び寄せた。これまでの経緯をベルが説明すると、長老が何とも嬉しそうにリョウの手を取ってぶんぶん振り始める。


「モイモ! モモイモイモモモモイモー! モッモッ! モモモー!」

「えーっ、なんて!?」

「素敵なお気遣いをありがとう、この喜びは皆に伝えますと言っているわ」

「モモモイ、モモー! モイモモ、モモーイ! モモモイ!」

「結婚という素敵な行事を、風習に従い小人だけで済ませてしまい申し訳なかったと言っているわ」

「いやいや……!」


 長老がまだリョウの手をぶんぶん振りながら、つぶらな目を輝かせている。


「モモモ! モイモモイ、モモーイモ! モイモモモモイモイ?」

「あら、それは良いわね。わたくしも賛同してよ」

「モイー! モモイモイ! モッモッモイ~モッ!」

「なになに……!?」

「うふふ! 代わりという訳ではないけれど、リョウとメイの結婚式には小人全員で参列させて貰えないかと」

「それは勿論! 嬉しいよ!」


 元より招待するつもりだったし、長老からの申し出は願っても無い事だ。リョウが頷くと、ベルが悪戯っぽく笑った。


「それだけじゃないわ。自分達はもう結婚式まで終えているから、主役はメイとリョウであって欲しい。だけれど、改めて祝福の交換をさせて欲しいのですって」

「えーと、それは具体的にはどういう……?」

「小人と人間の新郎新婦同士で祝福のお花を交換したいそうよ」

「わ、それいいかも……!」


 とても素敵な提案で、リョウも長老の手をぶんぶん揺らし始めた。

 

「モイモイモイ!」

「うん、凄くいい! そうしよう長老! 僕もそうしたい……!」

「モイ~!」


 最早通訳が無くとも通じ合えた感じで、満面で存分に手を揺らし終えるとベルへ向き直った。


「メイさんも絶対喜ぶし嫌とは言わないと思う。その感じで進めていいかな?」

「ええ、よくってよ。小人達には長老から伝えて貰うし、次はメイを寄越しなさい。ドレスの相談や採寸があるから。式の詳細はケン様とカイに相談するのよ」

「はぁい! そっか、カイさん魔界で沢山結婚式出てるもんな……」

「そうなのよ。きっと司会進行はお手の物だわ」

 

 カイの結婚式の余興で磨いた数々の技を思う。話は纏まり、これで報告と相談は終わりだ。感謝しつつリョウは魔女の屋敷を後にした。どの道先の話なので、今から準備や計画を初める事になる。が、さしあたってはそれらの準備より優先する事があった。新入りさんの到着は明日に迫っている。



 * * *



 皆がそれぞれ準備をした翌日。トルトゥーガも神から連絡を受けて駆け付け、全員で新入りさんを迎える事になった。今日はウルズスも習い事には行かず、出迎えの為に待機している。


「よし、皆揃ったな! 出迎え準備の進捗報告をせよ!」

「昼食はもう完成済、好き嫌いが分からないので豪華さより多彩さを大事にした品数ランチとなっております!」

「女子寮にもお部屋さ用意して、日常に必要なあれそれも準備済みですっ!」

「家具やベッドも予備で作っておいたものを配置済ヨッ!」

「既存品のお直しでも新規の仕立てでも、対応出来るよう準備してあるわ。今夜からでも着替えは困らなくってよよ」

「よろしい! 御苦労!」


 ケンが満足そうに頷く。


「儂は美女が来るっていうから昨日パックして髪もトリートメントした!」

「うむ、俺もきちんと髭を剃ったぞ!」

「おれはいつも通りにしかしてねえ」

「私もです」

『ぼくとリエラとジスカールはメイが作ってくれたかわいいやつ付けた!』

「……今日はピンクの花柄となっております」

『やあ……似合っているよ……ジスカール……』

 

 こぐまは大変可愛いお帽子とバンダナでばっちり決めているし、リエラも同じ柄のバンダナをして抱っこ紐もとても可愛い。バンダナを付き合わされたジスカールだけがやや恥ずかしそうにしていた。


 ともあれ準備は万端で、少し待っている内に村の入り口に人影が見える。


「おお、来たぞ!」

『みなさん! ちょくせつおあいするのはおひさしぶりです! あたらしいかたをおつれしましたよ!』

「うひょお! 遠目で見てもありゃ相当の美女じゃぞ……!」

「タッちゃんお行儀良くしなきゃダメよッ! セクハラも禁止ッ!」


 遠目からしてざわつくタツをジラフが宥める内、カピモット神と新入りである女性が皆の目の前に来た。緊張からか非常に強張った表情をしているが、確かに前評判通りの若くて美人で可愛い巨乳の女性だった。


『皆さん、ご紹介します。此方が新しく来られた方で、村への移住を希望されています。よろしくお願いしますね』

「うむ、歓迎しよう!」

『自己紹介は出来ますか? 皆さん良い方ですので緊張しなくて大丈夫ですよ』


 カピバラの神が促すと、強張りきった表情のまま女性が頷いて一歩前に出る。ギギギ……と全員を見渡すと、震える声で自己紹介を始めた。


「せ、拙者……カグヤと申しまして……っ! け、決して怪しい者ではござらんのでどうか……! 何卒なにとぞよろしくお願いしたく……っ!」

「ウヒョォ! ござる女子! ござる女子であるぞケン殿ぉ~っ!」

「うむ、いでたちも東方を思わせるものであるな!」


 カグヤと名乗った女性はケンの言う通り、飾り気の無い剣道着のような和装で腰には大小刀を佩いていた。歳はメイより少し若い位だろうか。ガンより少し小さい位の身長と抜群のスタイル。艶やかな黒髪の姫カットで、顔だちは何というか――美しさと愛らしさを備えた絶世の美女であった。ベルとて女神のように美しいが、タイプの違った最高峰という感じだ。


「やった、おれより小せえ!」

『よかったね! ガンナー!』


 無邪気に喜ぶガンナーとこぐま達以外、全員が驚くほど彼女は美しかった。その気配を感じ取ってか、何とも居心地悪そうに視線を彷徨わせるカグヤに気付き、マーモットの神が助け船を出す。


『さ、みなさんもじこしょうかいをしてください!』

「ああ、そうだったな! では俺から始めよう!」


 促しにケンから元気に口を開いた。

お読み頂きありがとうございます!

次話は明日更新予定です!

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