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世界最強リサイクル ~追い出された英雄達は新世界で『普通の暮らし』を目指したい~  作者: おおいぬ喜翠
第四部 前人類世界編

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315/616

315 襲撃

「夜の内に監視カメラはセッティングした。他にもシステム上の異常があればロボ太郎が気付く筈だ。人工衛星サテライトで上空からも監視させてる」

『ガガ! 現在こちらのシステムはワタシが常時モニタリングしておりまス!』

「そう、ありがとう。わたくしとカイで探知結界も周囲に張ったから、これでひとまず侵入感知は出来そうね」


 朝早くからベルが訪れ、色々と手配や確認をしている。


「これは通信用の魔道具よ。親機を村と此処に置いて、子機を皆にひとつずつ持って貰います。子機は受信しか出来ないけれど、親機同士なら通話が出来るわ」

「おっ、無線みたいなもんか。つかこんな便利なもんあッたんだな!?」

「これは存在をすっかり忘れていた骨董品なの。前の世界で昔、魔女と人間が戦争をした時に使っていたもの。これなら魔力が無いあなた達でも扱えるから」


 ベルがシンプルなイヤーカフのような子機を配り、親機を設置する。親機はアンティークな蓄音機のような形で、可愛らしいラッパが生えていた。そこから音が聞こえたり話したり出来るらしい。使い方の説明を終えると、ジスカールへ向き直る。


「さて、ムッシュー。まだガブリエラの気配は感じるかしら?」

「あ、ああ……お陰で遠くはなったけれど、昨日から途切れずずっと……」

「まあしつこい。ずっとあなたを注視しているのね。もてる男は辛いこと」

「ぞっとしないな……」


 困ったように眉を下げるジスカールに、ころりとベルが笑って長方形のケースを差し出した。


「壁越しにずっと猛獣の気配を感じているようなものでしょう? そんなあなたにプレゼントよ。昨日長老に測定させて、急いで作らせたの」

「これは……?」

「能力抑制効果を持たせた魔法の眼鏡。昨日掛けた術と併せたら、更に気配が遮断出来る筈よ。壊れないように強化魔法も掛けてあるわ」


 眼鏡と聞こえた瞬間、交代で仮眠を取っていた筈のジラフが跳ね起きた。


「ジラフ?」

「いいから、続けて」

「うふふ、掛けてみて頂戴。術を掛けたままだと記憶視が使えないでしょう? ガブリエラの脅威が無くなったら昨日の術は解くけれど――それだと能力が拡張された分、日常で視え過ぎてしまうと思って。今後の為にも作ったのよ」

「ああ、マダム。ありがとう、助かるよ……!」


 ジスカールが感激し、ケースを開くと早速眼鏡を取り出し掛けてみる。その瞬間、分厚い壁越しずっと此方の様子を窺う“猛獣”の気配がかき消えた。同時にジラフが目をカッ開き、瞬きもせず眼鏡の推しを焼き付ける。


「ベルちゃん感謝しますッ! 推しの眼鏡姿を見せてくれてありがとう……ッ!」

「オホホ! 心得ていてよ!」

「……すごい、完全にガブリエラの気配が消えたよ。あっちも今わたしを見失ったんじゃないかな……!」


 矢張りストレスだったのだろう、気配が消えてジスカールが嬉しそうにする。その隣でこぐまが物珍しそうに眼鏡姿を見上げた。こぐまはジスカールが狙われていると聞いて、ずっと離れず傍にくっ付いているのだ。


「つか囮なのに完全に気配消しちまって良いのか?」

「その懸念はあるけれど、ケン様の指示よ。気配が消えた事で逆に動きがあるかもしれないし、何も無ければガブリエラが見失ったまま安全にムッシューを避難させる事が出来るから」

「安全優先は大事ネッ!」

「すぐ駆け付けられるよう、後でカイが此処に村直通のゲートも張りに来るわ。ああ、後は――髪を少し頂ける?」


 思いがけない言葉にジスカールがきょとんとする。


「髪というのは古来より、霊力や魔力が宿るとされているの。万が一に備えてあなたの身代わり、ダミーを作ろうと思って」

「ああ、そういう事なら是非……!」


 魔法の事はよく分からないが、ベルになら任せて大丈夫だろうと、髪を少し切って持って行って貰う。ダミー作りには少し時間が掛かるとの事で、ベルは一度村へと戻っていった。


「これで何かありゃ、すぐ駆け付けられるし守れるだろ。メイも一度戻っていいぜ。ガブリエラがいつ来るか分かんねえし、長期戦になるかもしれん。交代で休憩したり、村の仕事もしねえとな」

「へぇ、じゃあおらは一度……何かあったらすぐ駆け付けるからな!」


 メイが頷き戻ってゆく。食堂にはガンとジスカール、ジラフとウルズス、それにロボ太郎が残された。


「アタシはこっちに常駐しようと思うんだけど良いかしら?」

「ケンもそのつもりだと思うし、良いと思うぜ。 おれらが交代で通うから、仮眠と休憩は確り取れよ」

「ええ、勿論。ありがとう……!」


 身代わりが完成し避難完了するまで、ジラフとウルズスとロボ太郎が常駐。他は交代で常に一人詰める形。周囲はカメラと魔法で監視しているし、外敵を察知すれば皆もすぐに駆け付ける。これで一応万全の筈だ。一応というのは、敵が未知数だからである。


「後はジスカール、銃は扱えるか?」

「この世界の物は触った事がないが、前の世界でならある程度」

「確か武器庫があったわネ。狭い場所なら銃器の方が便利だし、アタシも多分使えるワ。運び込んで武装しておきましょうか」

「んだな、物色しよう」



 * * *



 カイがゲートを繋ぐためにシェルターの食堂を訪れると、昨日来た時とは様子が違っていた。机や椅子でバリケードが築かれ、銃架に支えられた銃器が設置され、先日映画で観たような『エイリアンと戦う為に色々準備しました』状態になっている。


「これは……中々頑張りましたね……!」

「お、カイ! いいだろこれェ! アナログ武器だがめちゃテンション上がる!」

『ジラフかっこいー! すっごくにあう!』

「ウフッ! ありがとーッ! 我ながら何だか馴染むわァ~ッ!」


 マガジンポーチの沢山付いたタクティカルベストを装着し、両手にマシンガンを構えたジラフがあまりにも様になっていた。一人で基地を壊滅させられそうなレベルで似合い過ぎている。

 

「ジスカールも意外と様になッてんな」

「危険な遺物を回収し始めてからは、人に習った事もあったし軍の装備を“追い剥ぎ”して生きていたからね。前の世界とあまり変わらないようで良かったよ」

『ぼくも手りゅう弾なげるのとくいだよ!』

「おお、ウルズスも知識あんなら補給係だな」


 思いのほかジスカールが慣れた仕草で使える銃器を確認し、ひとまずハンドガンをガンホルダーに収めている。こぐまもジスカールと行動していた為、ある程度知識はあるようだった。もし銃撃戦になった時手伝いが出来るよう、この銃にはこの弾倉――とガンが教えてやる事にする。


「……そういえば、ガブリエラは遠くに居るのですよね? 此方に向かっているとしてどの位で到着するものでしょう?」

「接続されていた時は、海を跨ぐ位の距離感は感じたな。だが取り込んだ生物によっては案外早いかもしれない。例えばオオソリハシシギという鳥は、休まずに13,000kmも飛ぶことが出来る」

「地球一周の四分の一じゃねえか……!」

「とはいえ時速は約45キロ程度だから10日以上は――」


 その時唐突に、警戒音のような『ビーッ!』という音が鳴り響いた。


「ああ!?」

「えっ!?」

『ガガッ! シェルター付近に何者かが居ます!』


 警戒音を上げたのはロボ太郎で、同時に反応したのはガンとカイだった。


「嘘だろ!? 何処に隠れてた!? いきなり出て来たぞ……!?」

「シェルターの入り口方面と、軍事基地の穴を開けた方からです! 複数の気配が……!」

「複数ですって!? というか早過ぎない!?」

『映像出シまス!』


 ガンは人工衛星サテライトの方の監視で、カイは探知結界の反応でそれぞれ驚愕している。ロボ太郎が監視カメラ映像をホログラムのように空中に映し出した。それは通常とは形が違って確かに異形と呼べるが――元の生物が分かるような外見をしており、どう見てもゴリラとオランウータンだ。それが群れでシェルターの入り口洞窟方面と、先日掘り進めた軍事基地の穴の方から雪崩れ込んできている。


「ガブリエラのガキか! 随分子沢山じゃねえかッ! おれは穴の方へ行くッ!」

『ガガ、ピ……! ゴリラが洞窟側の入り口を開けようとシていまス!』

「私は入り口の方へ……!」

「アタシは残って警戒するわヨッ! ダクトからも小型が来るかもしれないッ!」


 手分けしガンとカイが慌てて出て行った。ジラフは設置されたばかりの魔道具で、村の皆へと連絡を取る。

 

「ロボ太郎ちゃん! ダクトや通風孔の監視もお願いねッ!」

『かシこまりでス!』

「ジスカールちゃんとウルズスちゃんも構えておくのよッ!」

「あ、ああ……!」

『うん!』


 急に全てが慌ただしくなる。耳を澄ますと、すぐに遠方でカイとガンが戦うような激しい物音と獣の吠え声が聞こえ始めた。

お読み頂きありがとうございます!

次は明日アップ予定です!

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