302 ほけんたいいく
「ガンナー結婚しよう……!」
「許さんぞ!?」
「許さないわヨッ!?」
「ついにこいつ能力目当てで結婚まで……ッッ!」
咄嗟に結婚を申し込んでしまう程、ジスカールは感激していた。
「君は、ああ、君はなんて……ッ! 全部の祝祭が一度に訪れたみたいだ……! 最高だ! 素晴らし過ぎる! 抱き締めてキスの雨を降らせたいよ……ッ!」
「許さんぞッッッ!」
「ジスカールちゃん代わりにアタシを抱き締めていいから! ガンナーちゃんに手を出したら死ぬわよアナタッ!」
「要らんから全部ジラフにしてやッてくれ……!」
ケンが許さないしガンがジラフにしろというので、本当にジスカールが隣のジラフを抱き締めてキスの雨を降らせた。ジラフがまた野太い雄叫びをあげると、今度は反対隣のウルズスを抱き締めてキスの雨を降らせる。それ程に嬉しいのだ。
「ウォオオオオァアアゥウオオオオオォ――――ッッッ!」
『もー! ジスカールちゅっちゅしないで! ぼく今りんごたべてるの!』
「まーたジラフさんが壊れた! 最早魔性の域だぞジスカールさん……!」
「分かッたよ! 嬉しいのは分かったよ! そりゃ自力だけでやったら死ぬほど面倒だもんな!? 分かるよ! 解析はしてやるから落ち着け!」
「やったああああ……!」
ウルズスに嫌がられたので渋々解放し、だがガンが確約してくれたので嬉しそうに食事を再開する。その隣でジラフはずっと吠え続けたまま、朝食が終わるまで壊れていた。
* * *
朝食を終え、ケンとガンは今日の目的である物資漁りに出かけた。周囲ではこぐまがシェルター探検で入手したスケボーに乗って遊んでいる。楽しそうに二人の後を追いかけたり追い越したり、中々上手である。
「ウルズス、ジラフが折角来たのに遊ばなくて良いのか?」
『うん! ジラフはみっかにいちどきてくれるし! ケンとガンナーのほうがあんまりあえないもん!』
「わはは! 確かにそうだな!」
あまり会えない自分達を優先してくれるのは嬉しかったので、可愛い道連れと共に今日の仕事をする事にした。
『それにジラフとジスカールがいちゃいちゃするじかんをあげたいんだぁ』
「!?」
「!?」
『あ、ここだよー! いっぱいものがあるそうこ!』
問題発言に二人とも目を剥いてこぐまを二度見する。が、こぐまは楽しそうにスケボーを走らせ、目的の倉庫へと入って行く。
「ウルズス、いちゃいちゃとは……?」
慌てて後を追いながら、何をどう聞いて良いのか迷った挙句にそっと聞いてみる。こぐまは倉庫の入り口近くで二人を待っていたが、質問に首を傾げた。
『えっちな感じでぎゅーしたり、ちゅっちゅすることだよ! ぼくしってる!』
「!?」
「!?」
『ジスカールがウィンクして、メロメロになっちゃったおんなのひとはぜったいしたがるんだぁ~! ジラフもメロメロでしょ~!』
こぐまが『えっち』を理解している事にまず驚愕したが、確かに先日ウィンク選手権でリョウとカイが挑戦した後に『なんかえっちだった!』と発言している。
「ジラフは兎も角やべえ、こいつおれよりエッチな感じを理解してるよ……!」
「保護者がジスカールさんなせいでおませなこぐまになっているではないか!」
「その、何だ……! おまえはジスカールがエッチな感じでも平気なのか……?」
教育的にどうなのかとか、ジスカールが他といちゃいちゃする事でこぐまが嫉妬したりしないのかとか、色々な事が気になってしまう。
『んー……まえのせかいは人間ぜんぶきらいだったから、やだったけどー! おってをごまかすのに仕方ないんだってジスカールがいってたからー!』
「あ、ああ……そもそも女どうのじゃなくて人間が嫌いだったもんな……!」
「今はどうなのだ……?」
こぐまがまた首を傾げる。
『こっちの人間はすきだからいいよ! ぼくジラフだいすきだもん!』
「い、いいのか……!?」
『えー? だってジスカールが誰とえっちな感じになっても、ぼくとずっと一緒にいてくれるのはかわらないもん! いいよー!』
「そ、そうか……」
こぐまがえへんとした。ケンは分からん顔をしたが、ガンはハッと何かに気付いた顔をする。
「これはおれで言うカーチャンとカイみたいな感じでは……?」
「ハッ、そう言われると納得できん事も無いな……!?」
『ベルとカイもいちゃいちゃしてるよね! リョウとメイも! 皆つがいなの?』
「つがっ」
「つがいときたか!」
新たなパワーワードに目を瞠る。賢いこぐまは色んな事を知っているのだ。
『ジスカールがいってたよ。いちゃいちゃして、りょうおもいになると『つがい』になるんだって! でね、でね! おとことおんな、オスとメスだと、子供ができるんだって! ふたりともしってた!?』
「あいつどこまで教育してるんだ!? 何処まで答えていいんだケン……!?」
「分からん! これは分からん……!」
人間達は慌てた結果――下手に地雷を踏んでもいけないので、こぐま自身に語らせる事にした。
「うむ……俺は中々詳しいが、ガンさんはあまり詳しくないのだ。ちょっとウルズスの方から、その辺り教えてやってくれぬか……?」
「お、おう……多分おまえの方が詳しいぜウルズス……」
『そうなんだ! いいよー!』
先生役は珍しいので、こぐまが気を良くして頷いた。わざわざちょっと高い所に登って、先生ぽくエアメガネをクイッしてみせる。
『まず子供はね! おとなのオスとメスがこうびするとできるんだよ!』
「こっ」
「交尾……!」
『でね、はつじょうきっていうのがあって! はつじょうきになると、動物はこうびがしたくなるの! 人間いがいの動物は、子供をつくるためにこうびするんだけど、人間はえっちだから、ずうっっっとはつじょうきなんだって!』
交尾、発情期と激しくパワーワードが出て来る。追っ手を躱す為だろうが、色んな女といちゃついた時に言い訳でジスカールがこの説明をしたんだろうなと思った。
『それで、いちゃいちゃして仲良くなって、りょうおもいだとつがいになるの! あとはね! 人間だと、つがいにもしゅるいがある!』
「つがいに種類が……!?」
『そう! せふれと、こいびとと、ふうふ! せふれとこいびとはね、別れちゃうこともあるんだけど、ふうふはずっと一緒にいるものって教えてもらった!』
「なんでセフレまで教えたんだよジスカール……ッ!」
「夫婦とて別れる事もあるだろう! というか身をもって知っているだろうバツサン……ッ!」
つっこみどころは多いが、まあまあ噛み砕いた普通の性教育をこぐまは受けているようである。
『ベルとカイと、リョウとメイはなんのつがい?』
「うむ……あれらは今は恋人である。その内夫婦になるかもしれんが……」
『そうなんだ! じゃあこうびしてるんだね!』
「ンン、多分してると思うが本人達に言うのはやめてやッてくれ……!」
『わかった! いわない! けどやっぱり人間ってえっちなんだね! 子供もつくらないのにこうびするんだもん!』
「クソッ! 無駄に刺さる……ッ!」
人間が万年発情期なのも子供も作らないのに交尾するのも事実なのだが、愛らしいこぐまに言われると中々刺さる。ケンが辛そうに胸を押さえた。
「良いか、ウルズス……! 人間が交尾をするのはエッチだからという理由ばかりではない……! 交尾とは愛を確かめ合う行為でもあるのだ……!」
『あ、それもしってる! こいびととふうふは愛をたしかめあうってきいたよ! けどせふれはえっちだからするんだって!』
「ぐうの音も出ぬわ! なんという教育をしておるのだあの男は……!」
「あいつほんと……!」
まあ事実ではあるのだが――ケンが撃沈し、ガンも沈痛な顔をした。
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