表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界最強リサイクル ~追い出された英雄達は新世界で『普通の暮らし』を目指したい~  作者: おおいぬ喜翠
第三部 ダンジョン編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

235/673

235 紙作り

 トイレの紙に関しては、急を要するので最初に着手した。

 ひとまず海上都市から在庫を少し貰って対応しつつ、実際の紙作りの方も見せて貰う。都市を支える製紙工場となると、規模が大きくそのまま真似は出来なかったが――手作りでも作れるというとの事でやり方を聞いて来た。


「そういえば、ベルさんの屋敷でも紙の生産ってしてないのかな?」

「そう思って最初に聞いたんだけどよ、作れない事は無いけどこれまで基本は外注で、紙の在庫は倉庫に何百年分眠ってるから今は生産体制整えてないんだってよ」

「成る程、だから海上都市だったんだねえ」


 使う道具と薬品なども分けて貰い、しっかりと作り方もメモした。毎回ベルや海上都市から物資を分けて貰えば良い事ではあるのだが、此処に居住しないのと同じで生活を頼り切るのは何かが違うのだ。


 ケンとジラフは下水や浄化槽タンクをどうするかの参考に、そちらの職人に話を聞きにいっている。メイは女子寮に設置する小物や家具を作成しており、カイとタツは牧場や畑の世話に出ていた。ベルは女子寮と魔女の屋敷のトイレを魔法で繋げる作業をしてくれている。という事で紙はリョウとガンが担当だ。


「この見本に借りた道具で紙が一枚作れるらしい。結構細かい作りだから、これは小人に量産して貰おう」

「うんうん。原材料はサトウキビの搾りかすで良いんだよね? 燃料にする用に取り置きしてあるから沢山あるよ!」

「そうだ。で、薬品は苛性ソーダと次亜塩素酸ソーダ液を使うんだが、今回の分は貰って来た。次回からは材料用意して、カーチャンに頼もう」


 耳慣れない薬品の名前にリョウが首を捻る。


「え、ソーダ? なんて?」

「苛性ソーダと次亜塩素酸ソーダ液だ。苛性ソーダは石鹸にも使える。これまでは炭酸カリウムと水酸化カルシウムで作ってたけどな」

「僕でも分かるように説明欲しいですねえ」

「リョウでも分かるように言うと塩水に電気を流して分解した成分だ。電気分解はこの世界じゃ無えだろと思ってたが、カーチャンの研究室や海上都市だと雷魔法を使った生成技術があるみたいでさ」


 リョウでも分かるように説明して貰ったので、成る程と頷きながら村に戻る。


「じゃあまずはふるいと、鍋とサトウキビだね」

「あ、村のトイレに紙置いて来るついでに小人に道具頼んで来るよ」

「あ、お願いします……! 僕その間に準備しておく!」


 これでもう葉っぱとはお別れだなと思いつつ、リョウが準備を進めた。燃料用に貯め込んであったサトウキビの搾りかすをごっそり出してきて、ふるいと鍋やタライ、搾り布等を用意し厨房で火を起こす。そうこうしている内にガンが戻って来て二人で作業を開始した。


「まずは搾りかすを篩に掛けまあす」

「おう」


 二人で大きなタライの上で搾りかすをふるった。続けて篩に掛けて残った大きい方を鍋で煮て柔らかくしていく。


「30分くらい煮て、水洗いしてまた絞って、だね」

「おう。この時に不純物も取るッつってたな」


 煮える鍋を覗き込みながら、二人で箸でゴミやら黒い不純物を取っていく。30分煮たら絞り布の上に開けて、水洗いをして絞り、また煮込む。


「これすごい茶色だし煮汁も凄い色なんだけど、海上都市の紙とほんとに同じになるのかなあ? 心配になってきたな……」

「今日の仕込みが終わった後、漂白剤入れて一日放置するらしいから白くなるんじゃねえかな……? 材料は一緒なんだろ?」

「あ、うん。海上都市は何種類かの原料があるんだけど、この紙なら土に埋まっても自然分解されるからって事でお勧めされたやつ」


 今の村トイレは土埋め方式なので、自然分解されないと困るのである。今は茶色の搾りかすと煮汁を不安そうに眺めながら、二度目の水洗いと絞りを済ませて鍋に戻す。其処に貰って来た苛性ソーダを入れて更に30分煮込んでいく。


「弱火な、弱火」

「はあい」


 火加減も気を付けつつ、じっくりと煮る。最後にまた水切りをして、綺麗に水洗いをした。それをまたきっちり絞ると今日の仕込みは完成だ。


「あ、金属だと腐食するからガラスのボウルにしよう」

「あ、そうなの!?」


 散々煮込んで水洗いした滓をガラスのボウルへ移し、漂白する為の次亜塩素酸ソーダ液に漬け込む。これで一晩置くらしい。


「いやあ、僕の世界じゃ紙は高級品だったけど――これだけ手間が掛かるんじゃ納得だよ。今回はサトウキビだったけど、他の材料は木の伐採からだもんね」

「おれの世界ほとんど紙無かったなァ」

「え、トイレの時どうしてたの!? 葉っぱ!?」

「葉っぱがそもそも無えよ。というかトイレや鼻をかむ紙はある。木製じゃない化学繊維製だけどな。それ以外の、紙の本とかそういう系の紙製品は殆ど無かった」


 ガンの世界はデジタルな発達を遂げたのでトイレットペーパー以外の紙製品はほとんど目にした事が無いのだ。


「つかおまえの世界こそ、紙が貴重なら尻はどうやって拭いてたんだよ。葉っぱ?」

「水洗から汲み取り式までのトイレを使ってる人達は紙だね。ただ王侯貴族でもない限り、硬くて粗悪な紙を使っている筈だよ。田舎の方の土埋めの人達は葉っぱと水だね。海上都市みたいなのじゃなくて、水桶と柄杓が置いてある感じ」

「おお、世界ごとのトイレ事情……」


 普段滅多にしないが、必需品であるトイレの話は中々楽しい。そのまま今日はサトウキビの搾りかすから作ったパルプを寝かせ、続きの作業は明日に行う事とした。


 

 * * *



 そして翌日。漂白したパルプはすっかり白くなっていた。


「おお、これが紙の元か」

「ほんとに白くなってる! すごいや!」


 漂白剤を洗い流して絞ると、白くなったパルプがお目見えした。確かにこれを加工したら海上都市の紙と同じになる、と言われれば頷ける。


「これを砕くんだよな」

「海上都市だと石臼を使ってたよね」


 石臼は以前に作った物があったので、それを使って早速細かくした。ドロッとした状態の紙の元をタライに入れ、そこに水を入れる。


「で、混ぜて……ついに本番だねガンさん……!」

「ああ、小人に道具を量産して貰った!」


 木枠に細いすだれを張ったような専用の道具で、水と混ぜた紙の元を均等に掬う。この工程を紙漉きというらしい。均等に掬うのが意外と難しく、二人は何度かやり直しながら全ての木枠に紙を梳いていった。


「――で、これが自然乾燥したら紙の完成です!」

「うおおお……! ついに……!」

「手間が掛かった分何か達成感あるなあ……!」


 沢山の木枠に囲まれ、二人は達成感で一杯になった。


「……何か、便利に暮らすって色んな仕事が多いけど楽しいなァ」

「そうだねえ。大変なのは間違いないけど僕も楽しいや。こう、ひとつひとつ出来る事が増えていくのが滅茶苦茶嬉しい」

「ああ。だけど、前の世界の有難みもちょッとは分かったなァ」

「そりゃね。僕らこの少人数で普通ならもっと大勢でする仕事をしてるんだからさ」


 それでも海上都市や魔女の館の小人達が居るお陰で、凄く便利になった。などと噛み締めていると、ふと二人とも何とも無しに顔を見合わせる。


「そういやここ最近、無いね」

「あァ、来ねえな」

「前に三人も一度に来たからかな? けど結構経ってるよね……?」

「まあ定期的に来るッてもんじゃねえんだろうが……」


 来ないという事は、世界を追い出されるような力や事情を持った英雄が他の世界で生まれていないという事になる。それはそれで平和で良いのだが――何だか不思議な気もした。


「今度カピ神達に聞いてみるか」

「あ、いいね! そうしよう!」


 頷き合い、二人は他の仕事へと向かった。

お読み頂きありがとうございます!

明日は一日お休み頂いて、次話は明後日更新となりますよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ