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世界最強リサイクル ~追い出された英雄達は新世界で『普通の暮らし』を目指したい~  作者: おおいぬ喜翠
第三部 ダンジョン編

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234 トイレ協議

 急遽女子寮のリビングに皆で座り込み、トイレ改善の為の協議が行われた。


「現状のトイレは換気や定期的に場所を移動するタイプなので、女子寮の中に設置出来んのだ。家の中に設置かつ、匂いが気にならないようなトイレを作りたいと思う」

「汲み取り式で外に浄化槽を作れば一応……なんだけど結構臭うわよね?」


 ジラフの言葉にケンが大きく頷いた。

 

「うむ。となると水洗式――となるが、村に下水を作った所で汚水をどう処理する? となる訳でな。今の人数位なら川に流した所で良いだろうが、この先人数が増えていく事を考えると環境的に気になる……!」

「そうよネ……!」 

「なあ、おまえら何でそんなにトイレと下水に詳しいんだ?」


 ガンが不思議そうにすると、ケンとジラフが当たり前の顔をした。


「王として治水に公衆衛生は重要事項である。当然詳しい!」

「そうよッ! 大人数ともなるとトイレや汚水問題は馬鹿に出来ないんだから!」

「な、成る程……!」


 王はトイレに詳しくないとならないのだろうか、と相変わらず不思議は消えないまま。今度はカイとタツにも視線が行った。彼らもまた、元王だからだ。


「儂の世界も水洗が主流じゃったかな。田舎の方は汲み取り式多かったけども!」

「私は魔界の王だったので、トイレは転移獄炎式がメジャーでしたかねえ」

「転移獄炎式ってなに!?」

「トイレの底に転送陣が敷かれてましてね、排せつ物は地獄に転移して一瞬で焼かれて消えるのです。問題点は肥料などに転用できない事と、たまに間違って落ちて死亡する者が出る位ですか」


 魔界のトイレやばいなという顔を全員がした。


「他の者の世界のトイレはどうだったのだ? 一応参考に聞かせて貰おう」

「僕の世界もタツさんと同じかな。大きな国は下水道が整備されてて水洗式が多かったけど、小さい国や田舎の方は汲み取りか、今使ってるような移動式のやつ」

「おらの世界もタツどんやリョウどんと同じ感じかなぁ」

「おれの世界も水は流れてたかな……資源が乏しいから、何か細かいリサイクルの仕組みあッたっぽいけどよく分からん」


 ふむふむと皆の世界のトイレ事情を聞き、最後にベルへと視線が集まった。


「わたくしの世界――というか、魔女の屋敷のトイレがそうよ」

「あ、そうか! おれも使わせて貰ッた事あるわ!」

「ハッ、アタシも出産デスマーチの時に使わせて貰ったわ!」

「そういえばおらも……!」

「あれ、思い返すと水洗だった気がするな……?」


 いちいち普段トイレの仕組みに注意を払わないので気付かなかったが、魔女の屋敷のトイレは海上都市と同じく『へえ水洗なんだ』と思った記憶が薄っすらある。


「海上都市ほど大きい設備ではないけれど――屋敷内はまかなえる規模で、全ての汚水を浄化して再利用する仕組みが作られているの。トイレ以外にも、厨房や職人達の方で排水は沢山出るから」

「成る程な。その仕組みを村にも転用は出来るのか?」

「ううん、どうかしら……」


 ベルが少し難しい顔をする。


「あの家って、外からは小さく見えるでしょうけど内部は前の世界の屋敷をそのままわたくしの“工房”として持ってきているのよ。師匠から引き継いだ屋敷だし、前の世界ではどの屋敷よりも大きい筈だわ」

「ほう、我が薔薇の魔女の建築であったか」

「ええ、だから海上都市ほど大きくは無いといっても、村にしては再現が難しい程大きい設備なの。後は、他の魔女の家でもそうなのだけど――建設段階から深く地中に穴を掘る必要があって……」


 なのでそのまま転用は難しい、とベルが肩を竦めた。


「それに新規で作る位なら、女子寮のトイレを空間操作でわたくしの屋敷のトイレに繋いだ方が早くってよ」

「それは確かに……!」

「村のトイレも繋いでしまえば解決か!? とも思うが、今後各地に拠点が広がる事を思うと頼り切る訳にはいかんな。やはり新規のトイレ建築法が必要だ」


 女子寮だけは一時的に繋いでしまえば良いが、今後どうしたものかと全員が難しい顔をした所で――ガンがハッとして『ちょい待ち』をして一度外に出て行った。


「……? ガンさんどうした?」

「何か思いついたみたいだけど……」


 一分も経たず、ガンがロボ太郎を捕まえて戻って来た。


「成る程! ロボ太郎の世界のトイレはまだ未知じゃったの~!」

「そう、こいつにも聞こうかと思ってさ」

『トイレ! トイレの話でスか! この環境に合ったトイレを検索しまスね!』

「ブラスチックとか電気はこの世界に無えから、そういうの使わない方向で頼む」

『はイ! ガガッピ―……!』

 

 状況を説明すると、すぐにロボ太郎が検索を始めた。


『水洗式のバイオトイレはどうでスか? 攪拌用の機械部分と、浄化タンクの素材の代用が出来れバ、一番エコで使いやスいかと思いまス! データ送信しまスね!』

「おお……!」


 データを送られたガンが、ふむふむ吟味し皆に向き直る。


「これいけるかもしんねえな。えーと、ちょっと図で説明するわ」


 トイレ予定地から板きれを一枚。皆に見えるように木炭で図を描き始めた。


「トイレがまずこういう感じで、水を流す用のタンクが付いてんだ。レバーで流せるし、海上都市にあるようなウォシュレット――尻を洗う水を出せるポンプ式のホースも付けりゃより衛生的だな」

「わああ、あれ最高だよね! 水で洗うやつ!」

「まあトイレ自体の仕組みは置いといて、絶対に発生する排水の方な。これがでかいタンクをみっつ使う」


 トイレの図の隣に、がりがりと大きな浄化槽らしきタンクを描いていく。


「第一タンクは、発生した排水を溜め込む場所だ。トイレだけじゃなくて他の生活排水を纏めてもいい。これを攪拌する事で、微生物の働きで分解を開始する」

「攪拌――混ぜるんですね。臭いが気になりませんか?」

『最初は少し臭うかモしれまセんが、微生物がちゃんと増えれば臭いまセンよ!』


 ふむふむと全員で板切れを覗き込んだ。


「で、一定時間攪拌をやめている時に“上澄み”を第二タンクへ移動する。此処で更に分解を進め、最後に第三タンクへ移行。この辺りではもう水は透明になッてる。第三タンクで太陽光と藻を入れて仕上げをするんだそうだ」

「浄化システムの自然版かつ縮小版という感じだな」

「ああ、そうだ。で、第三タンクで処理された水は農業とかに使える。今のトイレは土が肥料になるだろ? それの水版みたいな感じだ」


 確かに、攪拌部分とタンクを何とか出来れば全然村でも使えそうだった。何より全ての生活排水を流せるという所が良い。


「ふむ。これならば大掛かりな下水工事ではなく、小規模な下水か水路工事で出来そうだな。後は攪拌とタンクだが――」

「攪拌は魔法やゴーレムでも良いですが、この先誰にでもと考えると水車を作って水力で行ってはどうでしょう?」

「おお、水車か! 今後粉ひきなどでも使えるだろうし試作としても良いな!」


 光明が見えて、皆がワクワクとし始める。

 

「今の世界でこの大きさのタンクとなると――やっぱり金属か木製かしらね。腐食しないように加工が必要だけれど」

「そうねェ、海上都市の職人さんに相談してみようかしら」

「そうしましょう。魔法加工が出来ないかわたくしも調べてみるわ」


 てきぱきと決まっていく中、デリケートな話題の為か中々参戦出来なかったメイがおずおずと手を挙げる。


「どうしたメイさん?」

「あのぉ……この際なんで……おら我儘言っても良いだろうか……?」

「よいよい! 何でも言うてみるもんじゃよ!」

「トイレそのものじゃなくて、関連なんだけども。あのぅ……海上都市やベルどんの屋敷みてえに、村にも尻を拭く紙を導入出来たらなと……!」


「すまん! すまん……! 原始的な生活の頃に作ったトイレだったばかりに!」

「ウワアアア! ごめんねぇ! これまで気付かなくてごめんねぇ……! 葉っぱ嫌だったよねぇ……!」

「そりゃ葉っぱより紙のが良いよな気付かんですまん……!」

「や、いやいやいやぁ……! おらの世界も田舎の方は葉っぱだったもんで! 慣れてはおるんだけどもぉ……!」


 メイの控えめだが切実な提案に、初期にトイレを作った三人が大変申し訳ない顔で謝り倒した。メイも慌てて恐縮した。


「で、では紙も含めてこの形のトイレで女子寮と村のトイレを作っていこうと思う……! 基本建設班で作業は行うが、村を挙げての大仕事であるので皆協力するように……!」

「はい……!」

「おう……!」


 こうして全員で新たなトイレを作る為の計画が始まった。

お読み頂きありがとうございます!

次話は明日アップ予定です!

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